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こどものガミースマイルは矯正治療でいいの?
その原因から治療を考える
はじめに
日本人の20~30歳代の世代では、約10%の方がガミースマイルといわれています。ガミースマイルは骨格が原因となることも多いので、大人になってからの治療は大変です。
「ガミースマイル」とは病名ではありませんので、病気・疾患とはいえませんが「見た目」は少なからず気になりますね。歯並びの悪さと同様に、お子様のコンプレックスへと繋がることが多いです。
これからお話しすることは、ランパセラピーについて知っているとご理解が早いかもしれませんので、まだ知らない方は下のリンクよりご一読ください。一旦、「それって何?」でもまずは構いません。当院で行っている矯正治療とだけご記憶ください。
RAMPA(ランパ)セラピーとは、歯並びが悪くなる原因の根本的な解消を目指し、歯がきれいに生えるような土台に整え直そうという治療になります。
ランパセラピーについて、まだ知らない方や先に知っておきたい方は、下リンクからどうぞ。
ガミースマイルとは?
ガミースマイルは笑ったときに、上側の歯ぐきが過剰に見えてしまう状態をいいます。「歯ぐきが何ミリ見えたら…」などの基準によるガミースマイルの定義はありません。ご自身や周りから見てどうかが、大きな判断基準になります。
ご本人が「特に大きな問題を感じなければ必ずしも治療の必要はありませんが、口を閉じづらいなどがあれば治療の検討が必要かもしれません。」と一般的にはいわれています。
しかしランパセラピーの視点から考えますと、治療の是非はともかく、原因を知るための検査をおすすめいたします。そこで大きな問題がなければ、それでよいことです。
ランパセラピーでお伝えしている歯並びが悪くなる原因と広くいわれているガミースマイルの原因には重なる部分があります。
ガミースマイルの原因
ガミースマイルは、歯並びが悪いとはまた異なりますが、お悩みの方も多いと思います。「…かといって、歯列矯正とも違うし、どうしたら?」と迷われますね。
まずご理解いただきたいのが、舌は上顎につき、スポット(前歯裏の少し上、歯には触れません)といわれる部分に舌先があたるのが正しい位置です。
舌先の位置が前歯を押す位置に下がると、いわゆる「出っ歯」の一因ともなりますが、一旦ここでは置いておきます。「舌は上顎についている」が健全な形です。
小さな頃から舌がきちんとスポットにつき、鼻呼吸での生活ができていますと、きれいなアーチ状のお口に育ってきます。これはお口の成長において、舌が本来の役割を果たしている過程といえます。何らかの原因で、そういかなかった場合は…一目瞭然ですね。


舌が正しい位置にないこと。これには大変大きな意味があります。
ランパセラピーでお伝えしている「中顔面(鼻廻りのあたり)の骨格の下方成長」を導いてしまうのが「舌が正しい位置にないこと」です。中顔面を下から支え、本来の成長方向へと誘導するのが、健全とお話しした「上顎についている舌」の役割なんですね。
これらの違いは、「舌が正しい位置にない=口呼吸」と「舌が正しい位置にある=鼻呼吸」に変換していただいても大きな支障はありません。いくらか身近に感じられるようになったでしょうか?
ここでは口呼吸がはらんでいるリスクについて、お気付きくだされば結構です。
さて、何らかの原因によって上顎に舌がつかない状態が続くと、そのまま下方成長は進み、上顎骨はその影響によって歪みが生じ始め、歯並びが悪くなります。
お顔立ちを考えても、顔が縦に伸びる方向に成長が進みます。

そうですね。これを簡潔に理解しやすいのが「ガミースマイル」です。またこれも簡潔に表現しますと見える形での「下方成長」となります。
だったらこの下方成長はどうにかしたい。そう考えたとき、どのような治療が合っていそうでしょうか?
ガミースマイルを改善
ランパセラピーをご理解いただけている方なら「そうか!」となりますでしょうか。どうしたらガミースマイルが改善できるのかについても、ご推察いただけると思います。
そう、RAMPAのシステムによって中顔面を上前方へと成長させるということが、多くの場合に当てはまります。

RAMPAはガミースマイルのための治療ではありませんが、中顔面の下方成長に対して、その成長方向を変化させることは、その過程でガミースマイルの改善にも繋がります。
ガミースマイルとは、正しいとはいえない成長の結果の一つである場合も多いということですね。
一方で、ガミースマイルは中顔面の問題のサインであるかもしれないともいえます。ということは、今後、呼吸や歯並びにも問題が起こるサインかもしれないことと、ぜひ頭の片隅に置かれてください。冒頭で検査をおすすめさせていただいた理由になります。
下の写真のお子様は、外見上の目立ったガミースマイルはありませんが、上顎が上方(実際は上前方)へ成長変化してるのがお分かりいただけると思います。

ガミースマイルであるかどうかに関わらず、中顔面を健全に成長させるとは、この上前方方向だということを覚えてください。そして本来そのガイド役を担っているのが「上顎についている舌」なんですね。
呼吸の問題しかり、歯並びの問題しかり、舌がちゃんとした仕事をしづらくなった骨格の環境を整えてあげるのが、RAMPAの役割の一つとなります。
これが実は大仕事なんですね。一旦下がってしまった上顎を、改めて上前方に持ち上げる。この過程が大変重要です。
RAMPAの形状と治療過程は「そのために必要であるから」なんですね。
中顔面の下方成長
ご参考までに
下の女の子の比較写真は歯科でよく見かけるとのお話しを伺ったことがあります。この写真、何をお伝えしたいのかというと、元々はランパセラピーでいう中顔面の下方成長についての参考写真なんですね。それぞれ2枚ずつ、女の子の小さい時と成長後を比較しています。この二人は一卵性の双子です。遺伝子は全く同じものを持っています。
何が違うかというと、小さい時の写真を見てください。一方の女の子、口が開いていますよね。お口ぽかん(口呼吸)が日常的になってしまっているかどうかの違いなんです。




鼻の下から唇までの長さを見ると分かりやすいかもしれません。お口ぽかんの女の子は下方成長が進み、顔が伸びる方向に成長しているのがお分かりいただけると思います。
この下方成長に対抗する力が ”口呼吸ではありえない” 上顎についた舌になります。これが舌の本来あるべき正しい位置です。

こどもの矯正とRAMPA(ランパ)セラピーの5つのポイント
- 1 舌が正しい位置に付かなくなってくるのは、乳幼児期からの様々な生活習慣の積み重ね。特に近年は赤ちゃん期の首周りの筋緊張による影響が大きい。
- 2 歯並びの問題も含め、最重要ポイントになるのが「舌が正しい位置(上顎につく位置)にあること」、もしくは「きちんとした鼻呼吸が出来ること」
- 3 ある程度の年齢に達し日常化したこどもの口呼吸を鼻呼吸に変えるには、すでに骨格的なアプローチが必要な段階になっている場合が多い。
- 4 呼吸と歯並びの問題は密接な関係にあることの理解が必要。ランパセラピーの視点から見れば歯列の矯正だけで完結する問題は決して多くはない。
- 5 矯正治療でまず考えるべき目的は「歯並びを整える」なのか?「歯がきれいに生え揃うお口に整える」なのか?
当院では必要のない治療をおすすめすることはありません。
どの治療、どのクリニックを選ばれるかは矯正治療の入り口であり、最も大切なことです。ご選択にあたり、そのご負担は大きいところと存じますが、お子様の将来に関わることとして、今ひと時のリサーチをお願いいたします。ぜひ複数のクリニックでお話しを伺ってください。ご家庭で話し合われてください。その結果による「矯正治療に対するご判断」がご家庭ごとの最適解と当院は思います。当院から精一杯お伝えさせていただくならば、「ランパセラピーが必要」と感じられるお子様は少なくございません。
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この記事を監修した人
こどもと女性の歯科クリニック
院長 岡井有子
看護師として京都市内の産婦人科勤務を経て、大阪歯科大学に入学。同大学大学院歯学研究科で小児歯科学を学ぶ。2017年、港区に「こどもと女性の歯科クリニック」開院。プライベートでは2児の母として忙しい毎日を送っている。

こどもと女性の歯科クリニック
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