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口呼吸を鼻呼吸に変えるには?
呼吸の違いが導く将来への影響
はじめに
普段、呼吸は無意識下で行われています。鼻がつまっていないことが前提となりますが、一旦、それを意識して試してみましょう。
当たり前といわれればその通りのことですが、改めてご確認ください。矯正治療に関するご理解の入り口になります。
キーワードは舌の位置です。
舌は本来、上顎につく位置にあるのが健全な形です。舌先が前歯には触れず、ちょうど上の歯の内側のスペースに収まる感じになりますね。舌の根本の方まで上顎につくのがベストです。
口呼吸と鼻呼吸
では、試してみましょう。
- まず、舌はあえて上顎につけないで口呼吸…これは普通にできますね。少しの息苦しさを感じられる方もいるでしょうか?
- では次も、舌はあえて上顎につけないで(口は閉じてくださいね)鼻呼吸…一応できますよね。こちらはちょっと息苦しいなと感じられた方も多いのではないでしょうか?口からの呼吸より給気量が少ないうえ、舌の位置が下がって、気道を少し狭くしているからです。これが無意識下ですと、口呼吸か鼻息の荒いような呼吸となります。
- では逆に、舌は上顎につけた形で口呼吸…これはできませんよね。当然です。
- 最後に同じ形で鼻呼吸…普通にできますね。これが呼吸の健全な形です。
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整理をしてみますと、スムーズに鼻呼吸ができるのは、上顎に舌がつく場合のみです。もう一つ大切なのは、口呼吸となるときは必ず舌が下がってしまっているということです。
矯正治療や歯並びなど歯科に関わること、そして鼻腔や気道など呼吸に関わることをご理解いただくうえで、大切なことですので改めてご確認ください。
口呼吸からみえること
「鼻呼吸は健全」で「口呼吸は要注意」と広く指摘されています。これは正しいお話しです。では鼻呼吸と口呼吸では何が変わってくるのでしょうか?
舌が「上顎につく・つかない」の違いは、先ほどお試しいただきましたね。最も大切なポイントです。歯並びが悪くなる原因を考えるうえでも、舌が健全な位置にないことは重要な意味を持っています。
鼻呼吸だと?
顔の中心、中顔面といわれる領域は、本来上前方へと成長するのが健全な形です。
そのガイド役を担っているのが「上顎についている舌」です。またこの舌は唇や頬からの力とのバランスをとり、歯並びの形成においても大切な役割があります。
鼻呼吸がきちんとできていると、中顔面やお口が健全な成長をしやすくなります。
口呼吸になると?
上顎に舌がつかないことによって、本来上前方であった中顔面の成長方向は、下方へと向かいます。口呼吸が改善しないまま、舌が上顎につかない状態が続くと、そのまま下方成長は進み、上顎骨はその影響によって歪みが生じ始め、歯並びが悪くなる大きな要因となります。中顔面が下がることで、下顎も下がり、お顔が縦に伸びる方向に成長は進みます。
同じ理由によって、鼻腔が狭まることで、さらに鼻呼吸がしづらくなり、慢性的な鼻づまり等へ繋がります。
まだあります。同時に口呼吸によって下がった舌は、空気の通り道である気道を狭くさせ、下顎自体が下がることでも物理的に気道を圧迫します。つまり、いびきや睡眠時無呼吸の要因ともなってしまうのです。
気道容積:治療前7.1 cc
気道容積:治療中11.3cc
ということは、口呼吸とは本来人間の活動の中で、想定されていないイレギュラーな出来事なわけです。口呼吸がそう間違ったものでないならば、こんなにトラブルの原因にはならないように人間の設計図はできているはずですからね。
ヒトに限らず、生物は本来の健全な形だったら、その仕組みはほんとによくできています。一方で、一見些細とみえるエラーが大きなことへも繋がります。
呼吸自体はできるんです。口呼吸は「一見些細な問題」と受け取られがちですが、QOLの低下に繋がる大きなトラブルの兆しであることを改めてご理解ください。
ならば口呼吸は正さなくてはなりません。しかしです。お伝えしたように口呼吸は鼻腔を狭くさせます。
「口呼吸はよくないので鼻で呼吸するように頑張りましょう」と、よく見かけられると思います。その通りなのですが、こうなると「頑張るって??」ですよね。
「口を閉じなさい」と、こどもに伝えても、できない理由がすでにある場合も多いのです。
口呼吸から鼻呼吸へ変化させるには?
まだ乳幼児期で骨に柔軟性がある時期ならば、舌が上顎につくように、お口を上手に育てることへの取り組みができます。まだ修正が可能かもしれません。ここには治療とともに、日々の生活習慣の改善がフォーカスされてきます。当院の赤ちゃん歯科でもお手伝いいたします。
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しかし、下方成長が進み、ある程度まで骨が固まってしまった。その場合はすでに骨が歪み、舌を上顎につけられるスペース自体が足りなくなっているかもしれません。歯がきれいに生えないのも頷けますよね。
そしてお伝えしたように、骨格の発達の問題によって、すでに鼻がつまっている、もしくは鼻の通りが悪くて、口呼吸となっている場合です。
これらに対しては鼻腔の問題を解決してあげないと、鼻呼吸は無理なお話しです。この時点で歯並びを整えたって、鼻呼吸は物理的にできません。
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鼻づまりをはじめ、いびきや睡眠時無呼吸などで耳鼻科に通院されているお子様も多いと思います。矯正治療の前に、まず鼻の問題を耳鼻科にご相談くださいなどといわれても、耳鼻科の先生にしたってそう簡単なお話しではないんです。
だから当院は、小児科や耳鼻咽喉科とも連携をとり、歯科的アプローチによる耳鼻疾患改善への可能性を学会報告しているんですね。
口呼吸であることの弊害は様々なところでいわれています。しかし、実際に口呼吸を鼻呼吸に変えることは、そう簡単なことではありません。
鼻腔の問題を解決し、舌は上顎につくようにしてあげなくてはならないんですね。これをクリアしなくては歯並びを整える意義も半減です。
ランパセラピーでは、下がってしまった上顎を正しい成長方向(上前方)へ変化させるという、骨格への直接的なアプローチを通して、鼻腔の問題の改善を明確な目的として捉えています。
また本来あるべき成長方向、「上前方」も大切なキーワードです。RAMPAのシステムによって、上前方へ成長させられるからこそ、より健全な形を目指すことができるのです。
口呼吸が鼻呼吸に変えられれば、骨格自体にはよい変化が起きています。あと少しの努力できれいな歯並びも見えてきます。元から正しています。後戻りの可能性も大幅に低くなります。
ほとんどの不正咬合の原因は「上下顎の劣成長」
この劣成長は、呼吸機能の低下から、脳や体の酸素不足を招きます。今までの矯正治療では難しかった骨格の劣成長に直接アプローチするのがランパセラピーという矯正治療です。
こどもの矯正とRAMPA(ランパ)セラピーの5つのポイント
- 1 舌が正しい位置に付かなくなるのは、乳幼児期からの様々な生活習慣の積み重ね。
- 2 お口の発達においての最重要ポイントは「きちんとした鼻呼吸ができること」
- 3 ある程度の年齢に達したこどもの口呼吸は、骨格的なアプローチが必要な段階にある場合も多い。
- 4 呼吸と歯並びには密接な関係があることの理解が必要。歯列矯正のみでは骨格へのアプローチは難しい。
- 5 矯正治療の目的は「歯並びを整える」でよいのか?「根本からの改善」を目指すのか?
当院では必要のない治療をおすすめすることはありません。
どの治療、どのクリニックを選ばれるかは矯正治療の入り口であり、最も大切なことです。ご選択にあたり、そのご負担は大きいところと存じますが、お子様の将来に関わることとして、今ひと時のリサーチをお願いいたします。ぜひ複数のクリニックでお話しを伺ってください。ご家庭で話し合われてください。その結果による「矯正治療に対するご判断」がご家庭ごとの最適解と当院は思います。当院から精一杯お伝えさせていただくならば、「ランパセラピーが必要」と感じられるお子様は少なくございません。
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この記事を監修した人
こどもと女性の歯科クリニック
院長 岡井有子
看護師として京都市内の産婦人科勤務を経て、大阪歯科大学に入学。同大学大学院歯学研究科で小児歯科学を学ぶ。2017年、港区に「こどもと女性の歯科クリニック」開院。プライベートでは2児の母として忙しい毎日を送っている。
こどもと女性の歯科クリニック
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