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矯正相談で「顎が小さい」といわれた
口呼吸と顎の発達
はじめに
矯正相談に行って、「顎が小さいですね」と指摘されたお子様も多いのではないでしょうか?
その言葉通り受け取りますと、率直に顎の骨のサイズの問題と思われますね。しかし当院では「骨の発達の問題で、顎が小さく見えてしまうことが多いんです」とお伝えしています。
歯を並べるスペースが足りないとの意味では「小さい」の表現は間違ったものではありませんが、単なる大きさの問題であることはそれほど多くはありません。
ランパセラピーでは、歯並びが悪くなる主な原因は、中顔面の発達不良としています。中顔面とはどこを指すのか?をご理解いただきますと、イメージがしやすいかもしれません。
このことは呼吸機能(鼻腔や気道)へも大きな影響を及ぼします。

多くは口呼吸に端を発し、中顔面の下方成長を経て、顎骨の歪み(中顔面の発達不良)へと繋がっていきます。
「顎が小さい」とはその見え方といった方が近いかもしれません。
RAMPA(ランパ)セラピーとは、歯並びが悪くなる原因の根本的な解消を目指す治療です。
顎が小さいとは?
ここからお伝えすることは、イメージを優先しています。治療の例えではないことはご了承ください。

空き缶があります。青矢印は「中顔面の下方成長」ですが、ここでは無視してください。空き缶は、外側からの力(緑矢印)と内側からの力が釣り合って、円柱形を保っています。ではこの力のバランスが崩れたらどうなるか?イメージしてみてください。
例えば、海中に沈めることで、外側からの力(水圧)が優位になるイメージです。
さて少しつぶれましたでしょうか?
では次に真ん中あたり(緑矢印)で輪切りにしてみましょう。切った後の断面はデコボコに歪んで(青線)います。
本来ならば、キレイな缶の縁にピッタリ収まるはずの決まった数の歯を、歪んだ缶の縁に並べてみます。ガタガタの歯並びができましたでしょうか?これが叢生(そうせい)という状態、「いわゆる歯並びが悪い」です。そして顎骨の歪みのイメージにもなります。
改めて、この断面、元々のまん丸より小さく感じられませんでしょうか?でも実際、小さくはなっていません。
「歪んでいることにより、小さく見えてしまうんですね。」
さて青いデコボコの線は、実際にはある程度の厚みを持った歯の土台です。悪影響のない範囲でとなりますが、土台に多少歪みがあっても、この厚みの範囲内で歯を動かし整えれば、歯が並ぶとして行われるのが一般的な矯正治療です。
可能な限り歯列を拡げてもスペースが足りず、歯が並ばないと予測されると、抜歯の検討が必要になってきます。
これらの治療では、土台自体は自然成長分以上そうは拡がりません。骨に関わることです。歪んでしまったものも自然には戻らないのです。

今一度冒頭の空き缶の写真に戻ります。外側からの力によって、空き缶は少しつぶれました。
便宜上、輪切りにしましたが、実際に歪んでしまうのは、輪切りにした緑矢印の部分だけではありません。歪みは缶全体へとわたります。
この缶を中顔面と見立てますと、歪み方によっては歯並びだけではなく、他のことにも影響がありそうとのイメージはそう難しくないと思います。ランパセラピーでお伝えしている呼吸に関する問題がここにあたります。
一方で歯並び自体はそう悪くなくても、歪み自体があるならば、呼吸の問題がないとは言い切れません。


缶をいくつか同じようにつぶしても、おそらく全く同じ歪みにはならないですよね。歯並びに関しては、後述の中顔面の下方成長という要素も作用してきます。ことは複雑です。不正咬合が十人十色なわけです。
ならば何とかしてこの歪んでしまった空き缶を、「元々のきれいな円柱形へと戻せないかな?」これがRAMPAによる治療に近いイメージになります。
ではなぜ内外の力のバランスが崩れてしまったのか?イラストは舌が正しい位置にある上顎です。
実は空き缶の例であった緑矢印(頬圧・唇圧)に対抗する力が「舌」なんですね。舌が正しい位置にない、つまり、バランスが崩れた原因は口呼吸となります。
本来であれば「舌」は、外側からの圧力とのバランスをとることで、お口まわりの形成に要ともいえる役割を担っています。
口呼吸となり、要の力がなくなったお口は、歯並びでいえばその土台を歪ませてしまいます。
歯が悪いわけではないんです。せっかくきちんと生えようと、生まれたときから待機していたのに、「あれ?いざ生えてみたらなんだか窮屈…」ということなんですね。土台がきちんとできていないから、歯はそう生えるしかなかったんです。
中顔面の下方成長について
さて、口呼吸で困ることはまだあります。舌が上顎につき、支えとなることで、中顔面(上顎骨を中心とする骨の複合体)は、本来の上前方へ成長します。
口呼吸はこの中顔面の成長方向を下方へと向かわせてしまいます。これに連動して、下顎も下がることから、鼻腔や気道の問題へと繋がります。もちろんこのことも歯並びの形成に大きな影響があります。
基本的にこの下方成長の要因は、自然界の力である「重力」ですので、対抗する力がないと常に力は加わり続けます。
こうなると、たかが口呼吸とはならないですね。どうにかしなくてはいけません。
しかし、舌が上顎につけば、物理的に口呼吸はできません。絶対的に必要になるのが「鼻呼吸」であることもご理解いただけますでしょうか。
「舌が上顎につくようにしてあげる」
このことが矯正治療の大前提になります。すでに鼻の通りが悪い、もしくは物理的に舌を正しい位置に置けないなどは、大前提以前の話になります。
歯並びを整えることと口呼吸を正すことは、それほど大きくリンクしません。後戻りもしてしまうわけです。
舌とRAMPA


①舌が上顎につく正しい位置にない(口呼吸)ことによって青矢印の力が弱くなります。これによって黄矢印②③の力が優位になってしまいます。
その結果、
②中顔面の成長が下方に向かう
- 上顎骨に歪みが生じ、鼻腔を狭くさせる⇒慢性的な鼻炎や副鼻腔炎・アレルギーなど
③外側から内側に向かう力が優位になる
- ②の力と合わせて歯が生える土台を歪ませる⇒歯並びの悪化など
④舌が下がる
- 舌が落ちることによって、気道を狭くさせる⇒いびき・無呼吸・喘息・姿勢の悪化など
となります。赤矢印のような正しい成長方向に誘導する力はどこにもありません。
この青矢印①の力を、一旦代わりに担うのがRAMPAのシステムです。RAMPAによってお口の環境が整ったら、その仕事はきちんと上顎につくようになった舌にバトンタッチです。
舌がきちんとつくようになれば、RAMPAの代わりを舌が担ってくれます。その後は身体自身が、よい方向へ導いてくれます。RAMPAが終わった後でもよりよい変化は続きます。
まとめ
必ずしも「顎が小さい」=「顎が小さく見えてしまう」ではありません。複合的な場合もあります。しかし、一括りに「顎が小さい」では「適切な治療にたどり着けない」となりかねません。
そもそも、歯が生える土台(顎)の歪みを改善し、拡げてあげることは可能なことです。特に、骨にまだ柔軟性のあるお子様に対しては「しょうがないですね」とは言い切れません。
ただしご留意ください。床矯正等のRAMPA以外の矯正治療で、RAMPAと同じことはできません。
歯科医師にも得手不得手があり、すべての治療にスペシャリストともまいりせん。正直に申せば、当院は難易度の高い抜歯など、口腔外科領域に関する治療は不得手です。信頼のできる他院の先生に処置をお願いし、患者様に少なからずご不便をかけることもあります。
一方で顎顔面口腔育成治療(ランパセラピー・バイオブロックセラピー)に関しては、専門医院として取り組んでおります。他の矯正治療を取り扱うことは、今までもこれからもございません。

こどもの矯正とRAMPA(ランパ)セラピーの5つのポイント
- 1 舌が正しい位置に付かなくなるのは、乳幼児期からの様々な生活習慣の積み重ね。
- 2 お口の発達においての最重要ポイントは「きちんとした鼻呼吸ができること」
- 3 ある程度の年齢に達したこどもの口呼吸は、骨格的なアプローチが必要な段階にある場合も多い。
- 4 呼吸と歯並びには密接な関係があることの理解が必要。歯列矯正のみでは骨格へのアプローチは難しい。
- 5 矯正治療の目的は「歯並びを整える」でよいのか?「根本からの改善」を目指すのか?
当院では必要のない治療をおすすめすることはありません。
どの治療、どのクリニックを選ばれるかは矯正治療の入り口であり、最も大切なことです。ご選択にあたり、そのご負担は大きいところと存じますが、お子様の将来に関わることとして、今ひと時のリサーチをお願いいたします。ぜひ複数のクリニックでお話しを伺ってください。ご家庭で話し合われてください。その結果による「矯正治療に対するご判断」がご家庭ごとの最適解と当院は思います。当院から精一杯お伝えさせていただくならば、「ランパセラピーが必要」と感じられるお子様は少なくございません。
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この記事を監修した人
こどもと女性の歯科クリニック
院長 岡井有子
看護師として京都市内の産婦人科勤務を経て、大阪歯科大学に入学。同大学大学院歯学研究科で小児歯科学を学ぶ。2017年、港区に「こどもと女性の歯科クリニック」開院。プライベートでは2児の母として忙しい毎日を送っている。

こどもと女性の歯科クリニック
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