コラム
ホーム » 小児矯正「RAMPA(ランパ)セラピー」って何だろう?
小児矯正「RAMPA(ランパ)セラピー」って何だろう?
はじめに
当コラムではランパセラピーの概要についてお伝えいたしますが、具体的に治療をご検討されるならば、他コラムもご覧いただき、ぜひこの治療についての理解を深めてみてください。この治療と他の矯正治療では目的や手段が異なります。当院では「口腔育成」の言葉通り、お口を育てることから歯列矯正を考えます。
ランパセラピーの主目的は骨格の改善です。その過程と結果で歯並びの改善も目指しますが、審美的な歯並びを主目的とした治療ではありません。これらのご理解は非常に大切になります。
当院がこの矯正治療を通じて親御様にお伝えしたいこと。
それは、「歯並びの悪さ」とはお子様の将来の健康に影響を及ぼす可能性がある骨格的な問題のサインであるかもしれない。そしてそれは乳児期からの成長の過程においてどのご家庭でも起こり得ることかもしれないということになります。
決して見た目を軽視するものではありません。大切なことです。しかし、その多くを見た目のデメリットに焦点をあてている「矯正治療=歯並び」とのご理解には、今一度立ち止まってみてください。ランパセラピーで目指すこと、これは歯並びよりももっと大切なことであるかもしれません。
どうかこの矯正治療を通じて、お子様のこの先の未来に想いを馳せていただけますでしょうか。
ランパセラピーとは?
写真がランパセラピーで、使用される装置になります。少々驚かれましたでしょうか?なぜこのような装置になっているのかには理由があります。
ランパセラピーでは歯並びが悪くなってしまった根本的な原因である骨格にアプローチをします。この歯並びが悪くなる原因は、いくつかの呼吸に関わる問題の原因と共通しています。
治療の対象となるのは、この骨格の問題を原因とした諸症状、具体的に言えば不正咬合をはじめ、慢性的な副鼻腔炎や喘息・いびき・睡眠時無呼吸症候群、不良姿勢などでお悩みの方となります。しかしこれは当院がお伝えしたいことの半分になります。
それ以前にも大切なことがあります。もしも、これらの症状がランパセラピーでいう「骨格の問題」に起因するものであれば、症状が顕在化している段階で、この骨格の問題はすでに深刻な状態になっているのかもしれないということです。
「症状がでたら治療に行く。」「今は大丈夫そうだから様子を見る。」では少々危ういことと存じます。健全な成長であれ、問題をはらんだ成長であれ、成長は続きます。たまたま歯並びが悪くなるわけではありません。必ず原因があります。
お子様の歯並びが悪くなった原因は?
中顔面(ちゅうがんめん)という言葉をご記憶ください。この中顔面とは、大まかに目から前歯のあたりの顔の中心部分を指します。本来、中顔面は上前方、分かりやすくお伝えするならば顔が立体的になる方向へと成長するのが健全な形です。
結論からお話しします。
歯並びが悪くなる主な原因は「中顔面の発達不良」とランパセラピーでは捉えています。
しかし「うちは顎が小さいって言われたから、この治療ではないな。」や「うちは遺伝って言われたから違うな。」などのご判断は少しお待ちください。「中顔面の発達不良」はこれら広くいわれている歯並びが悪くなる原因の一歩先にあるものかもしれません。
- 中顔面の発達に問題があるから、顎が小さいと言われたのかもしれない
- 遺伝や生まれつきだからといっても、それは中顔面の発達の問題かもしれない
そのように一旦ご理解ください。
この骨格の問題の要因は、主に口呼吸によるものとなります。そして日常化された口呼吸の要因の多くは、様々な生活習慣によります。しかもそれらは、特に悪習慣と認知されているものばかりではありません。
矯正治療をリサーチされてきた親御様には、今持たれている知識の中で、なおさら大げさに聞こえるかもしれませんが、「中顔面の発達不良」とはどのお子様にも起こりえることであり、「顎が小さい」や「遺伝・生まれつき」の裏にあるものかもしれないのです。
口呼吸では、舌が上顎につく位置にないため、青矢印①の力は弱くなりますね。そうなると黄矢印②の力が優位になり、中顔面は健全とはいえない成長を続けます。
中顔面の健全な成長方向(赤矢印)を導く力はここにはありません。
口呼吸を誘引する様々な生活習慣は、口呼吸の日常化へと繋がります。
口呼吸、つまり舌が上顎につかないことによって、本来上前方へ向かうはずだった中顔面の成長方向は下方へと向かい、中顔面の発達不良に繋がります。この骨格的な発達不良は、顎骨の歪みという形で、歯並びの問題をはじめ、鼻腔や気道の問題の原因ともなります。
ランパセラピーにこのような装置が必要である理由
さてそれでは、この中顔面の発達不良(下方成長)に対し、どのような対処の仕方がよいでしょうか。
歪みのある骨格が症状の原因なのであれば、治療の目標は「本来あるべき骨格の形」がベストですよね。当院はそう考えます。ランパセラピーの治療目標がその「本来あるべき骨格の形に可能な限り近づける」になります。
となりますと口呼吸により、舌の支えがなくなったことによって起こった中顔面の下方成長には、「正しい成長方向は下じゃなくて、上前方だよ。」と導いてあげる力が必要です。
そもそもお口のトレーニングや習癖の改善によって、舌が本来の役割を取り戻せたならば、解決に向かう場合もあります。しかしこれらは成長途上にある骨格のお話しです。
すでに「鼻の通りが悪くて舌が上顎につくと呼吸ができない」や「舌が上顎につくスペースが足りない」となると、まず取り組まねばならないのは「骨格の改善」となります。そのためには「本来は上顎についていた舌」の代わりに中顔面を上前方へと誘導する力が必要です。
その力をどうしたら再現できるのか?から考案されたのがRAMPAの形状とそのお約束となります。
改めてのお伝えになりますが、歯並びが悪くなるのには原因があります。またこの中顔面の問題が原因のすべてでもありません。
一方でこの中顔面の問題は、骨格の問題になります。時間の経過とともに自然に戻ることはまずありませんし、多くは成長と共に深刻化していきます。治療の是非はともかく、まずは早めの検査が大切です。
ランパセラピーでは、歯並びが悪くなった原因、その根本からの改善を目指し、歯がきれいに生えてくるお口へと整え直していきます。鼻腔や気道などの問題に改善が見込めることも、根本の原因は同じとの理由によります。
具体的な矯正治療のご検討の段階であれば、これらの可能性も視野に入れられてください。
不安を煽る意図はありませんが、2021年アメリカで、睡眠障害(いびきや睡眠時無呼吸)と学習障害や衝動的行動との、脳医学的な関連性に関する論文(概要記事リンク)が発表されています。
また「メディア掲載 ビジネスクロニクル」の本文中では、近年は過蓋咬合のお子様が増えている傾向から、将来的に睡眠時無呼吸のお子様が増えていくのでは?とのお話しにも触れています。
現段階ではあくまで個人的な推測と可能性とさせていただきますが、これらのことはRAMPAでお伝えしていることやRAMPAの存在価値にも大きく関わることと考えています。
将来的に、口呼吸であることのデメリットは、もっとクローズアップされてくるかもしれません。現段階でも当サイト内でお伝えしている通りです。鼻腔に問題がある限り、口呼吸は改善することができません。その前段階、
「鼻はつまっていないようだけど、こどもがなぜか口呼吸をしている。」
ご家庭にとっては、ここの「気付き」が大切です。この気付きの大きなポイントの一つが、度々お伝えしています「首や肩周りの筋緊張」。それらを招く「姿勢の悪さ」となります。
ランパセラピーのメリット・デメリット
治療のメリット
- 歯列の改善とともに、鼻腔や気道が拡がることで健康面での効果も見込める
- 矯正治療のための抜歯の必要性がほぼない
- 治療自体の痛みが少ない
- 後戻りの可能性が大幅に減る
治療のデメリット
- 痛みや違和感を伴うことがある
- 装置の装着時間を守る必要がある
- 頻回の通院が必要になることがある
- 他の矯正に比べ、費用負担が増える
- 治療が長期にわたることがある
便宜上メリット・デメリットとして記載をいたしましたが、これらは治療に関わることです。何にメリット・デメリットを感じられるかも、おそらくご家庭ごとに異なるものと思います。
治療には必ず目的があります。また治療にその過程は避けて通れません。特にデメリットは、未来への価値観を持ってご理解ください。
「大変そうだけど、先々が変わっていくね!」そのようにお考えいただけますと嬉しいです。
当院にはRAMPA仲間がいっぱいいます。皆さん同じ方向を向かれている親御様、お子様たちです。機会があればお話しもされてみてください。
当院も精一杯のサポートをさせていただきます。
ランパセラピーの費用は?
顎顔面口腔育成療法(ランパセラピー・バイオブロックセラピー)は自由診療(保険適用外)となります。
※表示は税込み
- 矯正相談 無料
- 治療前検査(資料取り) 33000円
- ランパセラピー 143万円
- バイオブロックセラピー 99万円
- 調整費 5500円/月 ※装置の取付・取外しを伴う場合などは別途費用およそ16500円~33000円程度が発生いたします。
それ以外に
- 追加装置費 ※治療の進捗によります(11万円程度)
- 装置の紛失・破損 ※装置の種類によります(11000円~55000円程度)
などの費用が発生する場合がございます。追加の装置費がかかる事例は、治療開始前のお子様の状態やご家庭のご事情などによります。また矯正費用(143万円もしくは99万円)は一律の価格ですが、それ以外の費用に関してはお子様ごとに異なる場合がございます。ご了承ください。
TOPIX
2024年4月現在、現行のRAMPAフレームを改良し、治療をより効果的・効率的にする「ヘルメットタイプ」のRAMPAを試験的に運用しております。お子様の骨格を3Dスキャナーでデータ化し、よりお子様に合わせた次世代のRAMPAとなっています。
ご希望のご家庭には提供を始めておりますが、まだ装置の製作数も限られ、追加費用のご負担(+16.5万円程度)もお願いすることになります。この装置は開発者である三谷医師の吉祥寺こども診療室他、全国でも数院のみでの取り扱いになります。
ランパセラピーの期間は?
当院の基準では5才~12才を適齢期、なかでも5才~7才を最適齢期としています。
適齢期に治療を始められ、かつ当院とのお約束を守れ、順調に経過した場合ですとトータルの治療期間は約2年~3年となりますが、年齢によっては永久歯が生えてくるまで待つ期間が発生する場合もあります。このような理由から治療期間が長期になる場合もあります。
また条件は同じであっても、お口の状態などはお子様ごとに異なります。あくまで目安とお考えください。
こどもの矯正とRAMPA(ランパ)セラピーの5つのポイント
- 1 舌が正しい位置に付かなくなってくるのは、主に赤ちゃん時代からの様々な生活習慣の積み重ね。特に近年は赤ちゃんの首周りの筋緊張による影響が大きい。
- 2 歯並びの問題も含め、最重要ポイントになるのが「舌が正しい位置(上顎につく位置)にあること」、もしくは「きちんとした鼻呼吸が出来ること」
- 3 ある程度の年齢に達し日常化したこどもの口呼吸を鼻呼吸に変えるには、すでに骨格的なアプローチが必要な段階になっている場合が多い。
- 4 呼吸と歯並びの問題は密接な関係にあることの理解が必要。ランパセラピーの視点から見れば歯列の矯正だけで完結する問題は決して多くはない。
- 5 矯正治療でまず考えるべき目的は「歯並びを整える」なのか?「歯がきれいに生え揃うお口に整える」なのか?
当院では必要のない治療をおすすめすることはありません。
当院・他院に限らず、ホームページ等で記載がされている、「〇〇の原因」や「〇〇を改善するためには?」などは最終的に一つの答えに収束するものではありません。クリニックごとの考えの優先度・重要度などにより記載が異なってまいります。実際には患者様それぞれに答えはいくつもございます。
どの治療、どのクリニックを選ばれるかは矯正治療の入り口であり、最も大切なことです。ご選択にあたり、ご家庭の負担は大きいところと存じますが、お子様の将来に関わることとして今ひと時のリサーチをお願いいたします。その結果による「矯正治療に対するご判断」がご家庭ごとの答えと存じます。当院から精一杯お伝えさせていただくならば「ランパセラピーが必要」と感じられるお子様は少なくございません。
カテゴリー:
SNSでシェアする
この記事を監修した人
こどもと女性の歯科クリニック
院長 岡井有子
看護師として京都市内の産婦人科勤務を経て、大阪歯科大学に入学。同大学大学院歯学研究科で小児歯科学を学ぶ。2017年、港区に「こどもと女性の歯科クリニック」開院。プライベートでは2児の母として忙しい毎日を送っている。
こどもと女性の歯科クリニック
AM8:30〜13:00 PM14:00~18:00(最終受付 17:30)
休診日:金曜・日曜日
新着コラム