コラム

【もっと】小児矯正「RAMPA(ランパ)セラピー」って何だろう?

はじめに

ランパセラピーは開発からおよそ30年、現状、取り扱えるクリニックは非常に少数です。当院のような専門医院となりますと、その数はさらに限られてまいります。

歴史がまだ浅いからこそ、治療自体やそれを行う医師も発展途上であるのは、患者様が知っておくべきこととお伝えをいたします。ただしここに手探り状態や未熟との意味はございません。まだまだランパセラピーには先があるとご理解ください。

特にお子様の呼吸や歯並びにお悩みの親御様は、やっとの思いで辿り着いたランパセラピーです。ぜひ治療をお願いするクリニックまで含めてお考えください。当院とて実際にお越しになられてのご判断をされてください。

目次

    ランパセラピーのポイント

    ランパセラピーは、歯列矯正を目的とする一般的な矯正治療とは、視点やアプローチが異なります。歯並びが悪くなる根本的な原因と考える「中顔面の劣成長」に直接アタックし、歯列が自然ときれいに生えてくる土台へと整え直すことから歯列矯正を考えています。

    さらに中顔面を構成する上顎骨は、鼻にも関わる部分です。よって中顔面の劣成長は鼻副鼻腔にもよくない影響を及ぼします。

    治療目標である「中顔面の骨格の健全な成長を促す」ことにより、歯列の乱れと原因を同じくする、呼吸の問題の改善も目指すことができるのです。

    こどもの矯正とランパセラピー

    ランパセラピーでは、より健全な口腔機能・呼吸機能を治療の目的としています。歯並びの改善はその中の一つです。

    「なんだ、大げさな。歯並びだけで大丈夫。」とのお考えは、ランパセラピーをお知りになった後でも遅くはございません。ランパセラピーに関わることは、お子様の将来に関わる大切なことであると同時に、治療に適しているのは小児の時期でもあります。お子様の歯並びにご心配事がありましたら、この治療を知っておくことは決して無駄にはなりません。

    ランパセラピーでは、骨格へとアプローチするその治療の特質上、当院では5歳から12歳を適齢期としています。適齢期は比較的に治療が順調に経過しやすく、その効果も見込みやすくなります。骨にまだ柔軟性があるうちに正しい形へと導いてあげたいのです。

    具体的には、歯並びの問題とともに、慢性的な鼻炎や副鼻腔炎・喘息・いびきや睡眠時無呼吸など鼻腔や気道に関わるお悩みの多くが、中顔面と呼ばれる領域の骨格的な発達の問題と考えています。この骨格の問題が時間の経過とともに自然と解消することはまずありません。主に生活習慣を原因とするこれらのことは、多くの場合、深刻化へと進みます。

    また現在、ランパセラピーの治療目的は先述の通り、歯並びそして呼吸に関わることとしています。決して副次的な効果のための治療ではありませんが、正しいとはいえない成長をしてしまった骨格を、本来の姿に近づけることで、ヒト本来の機能が少なからず取り戻せることは治療を通し、実感しています。ランパセラピーには「先がある」とは、これらの可能性も含みます。

    今は呼吸機能や口腔機能に限ったとしても、この骨格の問題の解消、または改善はお子様の未来へと繋がってまいります。

    RAMPA(ランパ)とは?

    RAMPA THERAPY(ランパセラピー)って一体何なのでしょうか?

    まずはそもそもRAMPAって?からですね。

    “Right Angle Maxillary Protraction Appliance”の頭文字をとってRAMPA(ランパ)とされています。

    意味としては「正しい方向へ上顎を牽引する装置」となるでしょうか?

    THERAPY(セラピー)は、アロマセラピーなどで使われているように「(薬や手術などによらない)療法」となります。元々はRAMPAという名前は装置を意味しますが、現在では、矯正治療そのものにも広義的にRAMPAという言葉が使われています。

    基本的な装置であるROA (RAMPA用の口腔内装置)とRAMPA本体(口腔外装置)、それらを連結させるActive Bowの3つの組み合わせによってRAMPAによる矯正治療は行われます。ROAは一見、主に一期矯正で使われる床矯正(拡大床)と似ていますが、全く異なるものとの理解で大丈夫です。RAMPA本体は外側のフレームのことです。

    ※実際の治療では、これら以外の矯正装置も使用いたします。

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    ランパ30

    RAMPA(ランパ)を考えるにあたって

    人間が日々活動する中で、「呼吸」は最も基本的で大切な事柄の一つです。もしもその呼吸に関して、身体が何か不具合を感じた場合、人間の身体は何かを代償にしてでも呼吸を確保しようとの本能が働きます。

    呼吸に関する不具合といえば、口呼吸はすでに小さくない問題です。その代償の一例として、受け口や不良姿勢があります。受け口や姿勢の悪さは、呼吸の不具合に対して身体が何とか呼吸を確保しようとした結果である場合も多いのです。

    口呼吸の弊害はよくいわれますが、口からの呼吸自体には何となく問題なさそうなイメージはないでしょうか?おかしな言い方になりますが、きちんと口呼吸をするには舌を下げていなくてはなりません。そうなると次は、舌自体が喉の奥にある気道を狭くしてしまいます。

    自覚があるなしに関わらず、口呼吸をされると身体としては息苦しいんです。身体はそれに対応しようと、受け口や姿勢を悪くしてでも気道を拡げようとするんですね。

    こどもの矯正とランパセラピー

    こちらはマラソンの中継を見ると理解しやすいかもしれません。選手たちは鍛えられたアスリートですので自分のペースならば鼻からの呼吸でレースを走れますが、勝負所などではペースアップをします。

    鼻からの呼吸量では足りず口が開いてきますが、気道手前までの空気量は増えても、口呼吸は気道を狭くしてしまうので、取り入れられる空気量は比例しません。そこで「下顎を前に出して」気道を拡げようとします。「顎が出てきましたね。」という解説を耳にされたことはないでしょうか?

    これらは呼吸の重要性を示す一例ではありますが、身体自身がそういっている通り、まず目を向けるべきは「呼吸」と考えます。呼吸の問題を考えるならば、具体的に喘息や鼻炎、いびき・睡眠時無呼吸などは密接に関連してくる事柄です。

    RAMPAでは歯科的な見地から呼吸にアプローチができるのです。「口呼吸=舌が上顎につかないこと」が歯並びを悪くする大きな原因の一つでもあります。

    歯並びや歯列矯正をお考えになるならば、もはや具体的な疾患の有無に関わらず、「呼吸」は避けては通れない問題なんですね。

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    RAMPA(ランパ)ができること

    例え、お子様に現在、具体的な呼吸疾患と呼べるほどの症状がなくても、この先も大丈夫との保証はありません。「歯並びの悪さ」はきっかけとして、口呼吸はこれから起こりうる問題のサインであるかもしれません。

    万一そうであったならば、ランパセラピーで十分な対応ができる年齢を過ぎてしまうと、外科手術もしくはこの先もそれらの症状と付き合っていくとの選択肢となってしまいます。

    治療の選択権は患者様の権利ではありますが、「大丈夫そうだから。」では少々危ういことと存じます。すぐに生命に関わることではないですが、お子様の将来、QOLには大きく関わることです。安心のためでよいと思います。検査は受けられてください。

    困ったことに、顕在化した呼吸の問題の改善のためには、すでに骨格的なアプローチが必要になっている場合が少なくありません。多くの場合、骨格的に問題のある成長を「すでに」してしまっているのです。

    口呼吸(お口ぽかん)は弊害が多い問題です。少なくないお子様が、口呼吸の影響で鼻腔や気道が狭まり、お口を閉じることができない理由を抱えています。ランパセラピーではそれらの問題に対し、矯正治療を介して、骨格を整え直すことから改善を目指しています。

    その中で目指す具体的な目標の一つが正しい呼吸、つまり「鼻呼吸」です。

    口呼吸、そして中顔面の下方成長によって導かれた鼻腔や気道の狭小化は、何らかの手段で可能な限り本来の形に戻し、鼻での呼吸をできるようにしてあげたいですね。そうでないと口呼吸を根本的に治すことは難しいお話しです。

    さてここでRAMPAが何の頭文字から取ったものか思い返してみてください。

    「正しい方向へ上顎を牽引する装置」でした。

    口呼吸を鼻呼吸に変えるために重要になるのが、「上顎骨の上前方への成長誘導」です。下がってしまった上顎は、本来の位置に上げてあげなくてはなりません。

    これがつまり、中顔面の劣成長を正しい成長方向へと変化させ、狭くなっていた鼻腔や気道、そして歯が生えるスペース(顎)を拡げる(本来そうあったであろう形に近づける)ということになります。

    RAMPAの形状やお約束はそのためのものなんですね。

    歯並びはその後からでも整えることができますが、まず「歯並び」では少々矯正治療の意義が分からなくなってきます。鼻呼吸ができないのに、歯並びだけ整えても、そこにはまだ歯並びが悪くなる原因「口呼吸」が残っていますからね。

    こどもの矯正とランパセラピー
    こどもの矯正とランパセラピー

    外付けのRAMPAと口腔内装置は器具によって連結されています。実際に中顔面を上前方に誘導する力(赤X)は、口腔内装置を通してお口に伝わります。本来、これは舌が行うべき仕事なんですね。

    ですので、いくつかの矯正治療でも目的とされている「舌が上顎につくようにしよう」との考えはその通りになります。大切なのは、すでに鼻腔に問題がある場合、舌は上顎にはつけられないこと(呼吸ができない)なんですね。気道が狭くなることも同様です。

    呼吸に対する効果を記載されている矯正治療もいくつかあります。矯正治療とはいうものの、現状の鼻腔や気道の問題にどれが効果的・効率的なのか?の意識が、適切な矯正治療に辿り着く指針の一つとなります。

    お口の健康、歯並びの維持にも「鼻呼吸」は絶対的に必要と考えてください。

    案外、見落とされがちなことですが、健全な呼吸は睡眠の質にも大きく関わります。

    アスリートの方は「休むこともトレーニング」といわれることがありますね。社会で仕事をする中でも同じようなことをいわれます。質の良い睡眠をとり心身を休めないと、勉強にしろ、スポーツにしろ、よいパフォーマンスは難しいことです。

    2021年には、睡眠障害(いびきや睡眠時無呼吸)と学習障害の脳医学的な関連性に関する論文も発表され、単なる「寝不足」や「睡眠の質が悪い」ではない可能性があります。

    親御様には「食べ物や空気の入り口が健全な機能を果たすこと」を、今一度イメージされてみてください。

    まとめ

    RAMPA(ランパ)セラピーは、そのシステムと人の努力によって、骨格という根本的な原因解消から、健全な呼吸機能を目指す矯正治療です。原因を同じとみることで歯並びも整うとなります。別の視点から見れば、健全に成長した骨格であれば、歯並びでも呼吸でも大きな問題は起こらない可能性が高くなるのです。

    もちろんこれらは、歯並びが悪いすべての方に当てはまる訳でもありません。一方で歯並びがそう悪くない方には当てはまらない訳でもありません。いずれにしても歯並びをきっかけとして、呼吸にたどり着いたことは決して無駄な努力ではありません。ぜひ検査を受けられてください。

    歯並びの悪さは、呼吸の問題が潜在していることのサインかもしれません。もし今、お子様の歯並びがご心配であれば「鼻呼吸の重要性」の理解も必要となってきます。

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    呼吸や歯並び、姿勢などは密接な相関関係にあります。視点を変えることで、ことの順序が変わる場合もありますが、大切な根っこの部分は変わりません。

    重要なのは「正しいとはいえない成長をしてしまった骨格」が、これらの問題の中心にあるかもしれないということです。

    骨格に関わることとはつまり、顎関節症やガミー(スマイル)なども、ランパセラピーでは治療のターゲットに入ってまいります。

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    こどもの矯正とRAMPA(ランパ)セラピーの5つのポイント

    • 1 舌が正しい位置に付かなくなってくるのは、乳幼児期からの様々な生活習慣の積み重ね。特に近年は赤ちゃん期の首周りの筋緊張による影響が大きい。
    • 2 歯並びの問題も含め、最重要ポイントになるのが「舌が正しい位置(上顎につく位置)にあること」、もしくは「きちんとした鼻呼吸が出来ること」
    • 3 ある程度の年齢に達し日常化したこどもの口呼吸を鼻呼吸に変えるには、すでに骨格的なアプローチが必要な段階になっている場合が多い。
    • 4 呼吸と歯並びの問題は密接な関係にあることの理解が必要。ランパセラピーの視点から見れば歯列の矯正だけで完結する問題は決して多くはない。
    • 5 矯正治療でまず考えるべき目的は「歯並びを整える」なのか?「歯がきれいに生え揃うお口に整える」なのか?

    当院では必要のない治療をおすすめすることはありません。

    どの治療、どのクリニックを選ばれるかは矯正治療の入り口であり、最も大切なことです。ご選択にあたり、そのご負担は大きいところと存じますが、お子様の将来に関わることとして、今ひと時のリサーチをお願いいたします。ぜひ複数のクリニックでお話しを伺ってください。ご家庭で話し合われてください。その結果による「矯正治療に対するご判断」がご家庭ごとの最適解と当院は思います。当院から精一杯お伝えさせていただくならば、「ランパセラピーが必要」と感じられるお子様は少なくございません。

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    この記事を監修した人
    こどもと女性の歯科クリニック
    院長 岡井有子

    看護師として京都市内の産婦人科勤務を経て、大阪歯科大学に入学。同大学大学院歯学研究科で小児歯科学を学ぶ。2017年、港区に「こどもと女性の歯科クリニック」開院。プライベートでは2児の母として忙しい毎日を送っている。

    こどもの矯正とRAMPA(ランパ)セラピー

    こどもと女性の歯科クリニック

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