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歯並びが悪くなる原因は舌の位置?
呼吸や生活習慣との関係
はじめに
「舌が上顎につく健全な位置にない」
このことは、最重要キーワードになります。初見の方もぜひご記憶ください。後ほど出てまいります。
「なぜ歯並びは悪くなってしまうのでしょうか?」
こちら、考えたことがないという方が結構いらっしゃいます。とはいえ、歯科医師になる前の私もそうでした。
矯正治療の前に、原因を親御様なりに理解しておかないと、治療へのご理解に齟齬が生じかねません。たまたま運悪く、歯並びが悪くなるわけではないんですね。
歯並びが悪くなる原因
矯正治療では「顎が小さい」や「遺伝」などは、歯並びが悪い原因としてよくいわれていますね。
一旦、分かりづらい表現になってしまいますが、ランパセラピーでは「中顔面の骨格的な発達不良」を歯並びが悪くなる主な原因と捉えています。

しかしこれは「顎が小さい」や「遺伝」とは、別の理由との意味ではありません。
「顎が小さいってどういうこと?」や「生まれつきは分かったけど、どこがよくないの?」に繋がっていくものと、一旦ご理解ください。
ただしこれらは原因、つまり治療対象としての捉え方になります。
RAMPA(ランパ)セラピーとは、歯並びが悪くなる原因の根本的な解消を目指し、歯がきれいに生えるような土台に整え直そうという治療になります。
ランパセラピーについて、まだ知らない方や先に知っておきたい方は、下リンクからどうぞ。
ではこの中顔面の骨格的な発達不良とは、「なぜ起こるのだろう?」を辿っていくと、それは主に口呼吸による、もしくは「舌が上顎につく健全な位置にないことによる」となります。
これをさらに辿ると、日常化された口呼吸の多くは「赤ちゃん期からの様々な生活習慣の積み重ねの結果」と当院では考えています。
漠然として、何をどうしたらよいのか分からないですよね。このようなお伝えになり申し訳ないなとも思います。口呼吸がよくないのは、広くいわれています。しかし、「これを気をつければ口呼吸にならない。」と一括りのお伝えができないんですね。
例えば、お口の筋力不足は口呼吸の原因となります。そのために歯科でのMFT(筋機能療法)などがあります。当院では、特に「舌骨の位置」に焦点を当て、ご注意いただきたいことなどをお伝えしています。
いずれにしても「口呼吸とならないこと」もしくは「口呼吸は鼻呼吸に変えること」。これらが歯並びを考えるうえで非常に重要になります。
では具体的に歯並びが悪くなるのはなぜ?
イラストは健全な上顎(舌が正しい位置にある)を表しています。
歯並びは、お口まわりの筋肉のバランス(舌圧と唇側・頬圧との力のバランス)と土台となる骨格などの複合的な理由で決まります。

舌が正しい位置にないこと(口呼吸であること)は、その筋肉のバランスがすでに乱れている状態といえます。
内側から働く力(舌圧)が弱くなり、外側から働く力(唇圧・頬圧)が優位になってしまっているということです。そのため歯の土台ごと、外から内に、顎を狭小化させる向きに力が加わり続けます。もともと上顎についていない舌が、さらにつきにくくなるお口の環境へも進行をしてしまいます。
もう一点、舌が上顎につかないことによって、中顔面(鼻廻りの部分)の下方成長に対抗する力が弱くなります。下方成長(重力)の力が優位になり、これによって上顎骨に歪みが生じ、不正咬合や鼻腔の狭小化へと繋がります。
これらが歯並びを悪くさせる大きな原因である「中顔面の骨格的な発達不良」です。
これはつまり、中顔面の発達に問題があるから「顎が小さい(小さくみえる)」や、「生まれつき」中顔面の発達に問題の要素があるなどの可能性に繋がります。

青矢印は舌が正しい位置にある場合の力です。
上顎にきちんとついた舌は、黄矢印②の中顔面の下方成長、そして黄矢印③の唇側からかかる力とのバランスを取り、中顔面の正しい成長と歯並びの形成において重要な役割を担っています。
口呼吸はすなわち、この青矢印の力がなくなっているということになります。
本来、舌は上顎につき、唇側からかかる力とのバランスを取り、中顔面の健全な成長方向である「上前方」へのガイド役とならなくてはいけないのですが、それができていない状態が口呼吸なんですね。
「なぜ口呼吸は起こるのか…」は、大変重要なことなのですが、その理由をシンプルにお話しできないことは、先ほどお伝えさせていただいた通りです。
「あれ?歯並びがおかしいな…」とお気付きになるまでの、生活習慣の様々な事柄がその要因となります。遡れば、赤ちゃん時代の抱っこの仕方やハイハイの仕方、授乳の仕方などから関係があるのです。
生まれつき、その傾向があるお子様もいらっしゃいます。ここにはママのお腹にいたときの過ごし方が関係してきます。少しでも赤ちゃんが過ごしやすいような子宮にしてあげることは、お口の発達とも深く関わりがあります。人間ってすごいですね。


本来、ママの子宮はまぁるい形(写真左)が理想です。赤ちゃんは生まれてからの準備をすでにお腹の中にいるときから頑張っています。これがまん丸が崩れたような形(写真右)ですと赤ちゃんも頑張りづらいのです。
コロナ禍の中で
今まで大丈夫だったのに、急に歯並びが乱れてきたとのご話しも伺います。これも、骨格に対して、今まではなかったイレギュラーな筋緊張・筋肉のアンバランスが干渉することによって起こるとの考えになります。舌や唇も筋肉によってできていることを改めてご理解ください。
コロナ禍のマスク生活により口呼吸になりやすくなったことや、巣ごもり生活で運動不足や姿勢が悪くなりやすい生活環境となったことで、歯並びが乱れてきた方が大変増えました。
まとめ
歯並びが悪くなる原因には、舌のクセや指吸などの習癖による場合も確かにあります。
しかし今、「歯並びが悪い」、そのお悩みに対して、その原因を考えた場合、もとは様々な要因があったでしょうが、それらによって出来上がってしまった骨格的な問題。
具体的には舌が上顎につかなくなってしまったことによって導かれた「中顔面の骨格的な発達不良」をその主な原因として私どもは捉えています。
改めてお伝えいたしますが、広くいわれている「顎が小さい」や「遺伝」と、「中顔面の問題」は全く別の話ではない可能性があります。
「矯正相談に行ったけど、中顔面(骨格)云々とはいわれなかったなぁ。顎が小さいのは遺伝らしいよ。」とのお考えには一度立ち止まってみてください。矯正歯科ではそこまで伝えてくれません。アプローチするのは歯列であって、骨格ではないのですから。

先天的なのか、後天的なのかは、さほど大きな問題ではありません。ランパセラピーでは、その原因へとアプローチをします。
健全な骨格へと整え直すことで、健全な筋肉のバランスを取り戻し、歯並びのみならず、呼吸機能なども、本来あるべき姿に近づくように整えていきます。
骨に歪みがあるのです。その影響はおそらく歯並びだけではありません。
こどもの矯正とRAMPA(ランパ)セラピーの5つのポイント
- 1 舌が正しい位置に付かなくなってくるのは、乳幼児期からの様々な生活習慣の積み重ね。特に近年は赤ちゃん期の首周りの筋緊張による影響が大きい。
- 2 歯並びの問題も含め、最重要ポイントになるのが「舌が正しい位置(上顎につく位置)にあること」、もしくは「きちんとした鼻呼吸が出来ること」
- 3 ある程度の年齢に達し日常化したこどもの口呼吸を鼻呼吸に変えるには、すでに骨格的なアプローチが必要な段階になっている場合が多い。
- 4 呼吸と歯並びの問題は密接な関係にあることの理解が必要。ランパセラピーの視点から見れば歯列の矯正だけで完結する問題は決して多くはない。
- 5 矯正治療でまず考えるべき目的は「歯並びを整える」なのか?「歯がきれいに生え揃うお口に整える」なのか?
当院では必要のない治療をおすすめすることはありません。
どの治療、どのクリニックを選ばれるかは矯正治療の入り口であり、最も大切なことです。ご選択にあたり、そのご負担は大きいところと存じますが、お子様の将来に関わることとして、今ひと時のリサーチをお願いいたします。ぜひ複数のクリニックでお話しを伺ってください。ご家庭で話し合われてください。その結果による「矯正治療に対するご判断」がご家庭ごとの最適解と当院は思います。当院から精一杯お伝えさせていただくならば、「ランパセラピーが必要」と感じられるお子様は少なくございません。
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この記事を監修した人
こどもと女性の歯科クリニック
院長 岡井有子
看護師として京都市内の産婦人科勤務を経て、大阪歯科大学に入学。同大学大学院歯学研究科で小児歯科学を学ぶ。2017年、港区に「こどもと女性の歯科クリニック」開院。プライベートでは2児の母として忙しい毎日を送っている。

こどもと女性の歯科クリニック
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