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こどもの口呼吸はなぜ起こるのか?その原因と歯並びと鼻づまりの関係
はじめに
口呼吸はよくないっていわれますね。しかし「どれほどよくないことなのか?」ですと、いかがでしょうか?
これ…非常によくないことです。
もしお子様の口呼吸が習慣づいていましたら、なるべく早くのご相談をおすすめいたします。とはいえ、ご相談をされたからといって、薬を飲んで治るような類のものでもありません。何かしらのアクション・行動が必要になってきます。
早ければ早いほど対処の仕方があるかもしれません。こどもの単なる悪癖とのご理解をされている親御様もいらっしゃるでしょうが、そればかりではありません。お子様なりに口呼吸を正すことが出来ない理由がある場合も多いのです。いずれにしても、そのまま放置しておけば、口呼吸の弊害はいずれ顕在化してきます。
口呼吸を鼻呼吸に変えられるかどうかは、こどもの将来の生活の質に大きく関わってきます。
口呼吸
日常的な口呼吸(舌が上顎についていない)から起こる様々な弊害の中でも、特にお伝えしておきたいのが呼吸機能の問題と歯列の乱れの問題です。そもそも小さな頃から舌がきちんと正しい位置にある生活(鼻呼吸)ができていれば、これらの問題はかなりの割合で無くなるか、その大きさは軽減されます。
では本来そうあってほしいのに、なぜ口呼吸となってしまうのでしょうか?
「鼻の通りが悪い」などは真っ先に想像できますね。
一旦、別の視点からその理由を探ってみます。身体の中で唯一、他の骨と接していない舌骨(ぜっこつ)といわれる骨があります。舌骨は様々な筋肉と繋がることでその位置を保っています。
「舌骨の位置」これがここでのキーワードになります。
まずは漠然としたお伝えになってしまいますが、口呼吸の多くは「小さな頃からの生活習慣の積み重ねの結果」と考えています。これらは「悪習慣」と決めつけられるものばかりではありません。ですので、ある程度は仕方がないという側面があります。
広くいわれていることの一つに食文化の変化による咀嚼の問題がありますね。お口まわりの筋力不足は口呼吸の原因の一つです。こちらでのお話しは割愛いたしますが、RAMPAを知っていただくことで、これらとは別の側面が見えてくるかもしれません。
冒頭で「鼻の通りが悪ければ、口呼吸の想像は難しくないですね。」とお伝えはしましたが、実は多くのこどもたちに当てはまるのは順番が逆になります。
口呼吸が原因で「鼻がつまる」。そして「歯並びが悪くなる」なんですね。
大きくは気にしていなかった赤ちゃん期の口呼吸の習慣の結果、こどもが大きくなり習慣的な口呼吸が気になってきた時には「すでに骨格の成長に問題が生じ、鼻がつまりやすい状況になっていた。」ということになります。
お願い
医療側からしたら、口呼吸はよくないから「これに注意、あれにも注意」とお伝えしてしまうことが多いと思います。しかし「全部が全部」はなかなかできるものでもありません。
それがストレスとなっては、ご家庭として本末転倒なお話しになってしまいます。当院も様々なお話しはいたしますが、その趣旨は「知っておいてほしい」だとご理解ください。あらかじめ知っておくことで、その先の行動の選択肢を増やすことができます。
当院としてこれだけは注意してほしい。お子様のために一つお願いをさせていただくならば、ぜひ定期的に健診を受けられ、お子様の成長の経過をかかりつけ医と共有する習慣を築かれてください。
なぜ口呼吸となるのでしょうか?
理解しやすいシチュエーションですので、当サイト内でも度々ご紹介していますが、抱っこ紐での姿勢です。
写真の赤ちゃんは、頸が後ろに倒れ、ちょうどママを見上げるような姿勢になっています。
この姿勢、抱っこ紐の違いこそあれ、日常的によく見かけます。写真のように、このまま寝ちゃっている赤ちゃんも多いですよね。
ここで赤ちゃんになにが起こっているのか?です。
この姿勢は赤ちゃんの首周りに大きな負担がかかっています。筋肉の凝り・緊張という状態です。
大人の方は長時間パソコンに向かっていると「首が痛い」「肩が痛い」となりますよね。赤ちゃんも同じです。でも「疲れたぁ!」と自分でもんだり、首をまわしたりは、赤ちゃんにはできません。どうしても赤ちゃんには、日常的にそのような生活習慣が多くなります。
この首周りの筋緊張から続くフローが以下になります。
まず大前提としてご理解いただきたいのがイラストの青矢印の力です。これはお口の成長において重要な役割を果たす「舌が上顎についている=鼻呼吸ができている」際に発揮できる力です。
イラストで舌骨と肩甲舌骨筋(黄線①)という筋肉がつながっているのが分かりますでしょうか?先述の首周りの筋緊張が、舌骨の位置に影響を及ぼすことが口呼吸へと繋がります。
- 首周りの筋緊張(特に黄線①肩甲舌骨筋の緊張)は舌骨の位置を下方へ(黄矢印②)引っ張ります。
- 下げられた舌骨は、別の筋肉を通じて、下顎と舌を下方へ(黄矢印③)引っ張ります。
- その結果、口呼吸になります。
- 舌が正しい位置(上顎につく位置)にあることで発揮されるのが青矢印の力ですが、口呼吸となることでこの力はなくなります。
- 中顔面の下方成長の力(黄矢印④)と唇側からの筋肉の力(黄矢印⑤)が優位になり、上顎骨に歪みが生じ始め、中顔面の発達不良に繋がります。
- ここに中顔面の正しい成長方向(赤矢印)を導く力はどこにもありません。これは本来上顎についた舌の役割となります。
こどもの骨格の約8割が1歳までに完成するともいわれています。これらの積み重ねの結果から出来てしまった骨格に対して、一旦、その導く力(青矢印)の代わりを担い、骨格の問題の解消を目指すのがRAMPAのシステム(矯正治療)となります。
そして「こうならないようにしよう!」が赤ちゃん歯科になります。
- 口呼吸⇒下がった舌が気道を狭くさせ、喘息やいびき、姿勢の悪化などに繋がります。
- 中顔面の発達不良⇒慢性的な鼻炎や副鼻腔炎、口呼吸の深刻化、歯並びの悪化などに繋がります。
RAMPAによる矯正治療の適齢期は主に5歳以上となりますが、1歳までの過ごし方が将来的な矯正治療の必要性に大きく関わってきます。
別のイラストで補足いたします。
本来ならば頸の骨の3番から4番の間にはあってほしい舌骨が、肩甲舌骨筋の筋緊張により5番・6番の間くらいまで引っ張られてしまう場合もあります。
舌骨はすべて筋肉によって支えられていると冒頭でお伝えをいたしました。下へ引っ張られた舌骨は、別の筋肉を通じて、下顎と舌も下へと引っ張ります。
「舌骨の位置」をキーワードとした「口呼吸の原因」のイメージはできましたでしょうか?
一方で口呼吸(舌が上顎につかないこと)が原因となって、中顔面の下方成長に対抗する力が弱くなり、上顎骨に歪みが生じ、鼻腔の狭小化や歯並びの悪化へと繋がります。
今一度お伝えいたします。
多くの場合、口呼吸が原因で「鼻がつまる」、そして「歯並びが悪くなる」なんですね。
そうはいっても抱っこ紐を使っている時間は、「そんなに多くないよ…」という方もいらっしゃると思います。
仮に1日30分といえど、赤ちゃんにとってその時間は習慣というには十分な時間といえます。もう一点、抱っこ紐はあくまで一例ですので、例えば他にも抱っこの仕方や寝かせ方、ハイハイの仕方・授乳の仕方・離乳食等々、現代生活において口呼吸の一因となる要素は多々あります。
赤ちゃん期からこれだけあるのですから、口呼吸の原因は「生活習慣の積み重ね」との表現になってしまうのですね。
ご参考までに
もしも、このような話を知らなくて、冒頭のような抱っこ紐を使っていた。しかも年の近い兄弟がいる。もう少し分かりやすくするならば双子ちゃんだった。この場合、何が起きるのか?です。
例えば親御様と出かける際、一人は抱っこ紐で一人はベビーカーって多いですよね。何となく上のお子様と下のお子様、どちらかが抱っこ紐でどちらかがベビーカーと決まってしまうものです。ベビーカーなら問題ないわけではありませんが、それでもご兄弟どちらか一方にこのような問題が起きやすくなります。
まとめ
語弊のないように改めてお伝えいたします。抱っこ紐については口呼吸を誘引する一例です。このような生活習慣は様々ありますが、一連の流れはご理解いただけたでしょうか?
重要なワードは「首や肩周りの筋緊張」です。
これらを繰り返し、特別な対処もしなければ、口呼吸も習慣になり日常になります。骨もそれに合わせるように成長をしていきます。中顔面の下方成長も然りです。このことは後々、鼻腔に関わる部分にも影響を及ぼし、物理的に鼻呼吸がしづらい状態へと進行しかねません。
こうなりますと「お口は閉じなさい。」と、こどもに伝えても「できない…」とのお話しになります。
もともとは単なる悪癖かもしれない「お口ポカン」も、原因があるであろう「口呼吸」も、いずれにしてもこのような形に収束していきます。
こうなってしまった口呼吸を鼻呼吸に変えるのは大変です。赤ちゃん期を過ぎた、多くのこどもたちに当てはまる口呼吸はこの段階まできていることが多いです。
「こうならないように、どんなに小さいうちからでも来てください。」と当院の赤ちゃん歯科ではお伝えをしています。お伝えさえできていれば、親御様は場面々々での判断材料にもなります。抱っこ紐なども特にこだわりがなければ「赤ちゃんの首までサポートしているものを選ぼう!」などですね。
当サイトを通じて最も大切なことは「口呼吸にならないようにしなくてはいけない。」もしくは「口呼吸は鼻呼吸に変えなくてはいけない。」となります。
赤ちゃんのことも矯正治療のこともお口の健康のことも、そのほとんどはここに集約されます。矯正治療を選ぶ際には大変重要な要素になりますのでご記憶ください。
患者様としては、せっかく意を決して治療をするのに「うまくいけば治るかもしれない」では困ります。多くの場合、中顔面の発達不良によって鼻腔が狭くなり、歯並びも悪くなります。原因は同じということになります。
「健全な骨格へと整える」、ランパセラピーと当院の存在意義の多くはここにあります。
※ランパセラピーであってもお約束ができるものではありませんのでご留意ください。
RAMPA(ランパ)セラピーとは歯並びが悪くなる原因の根本的な解消を目指し、歯がきれいに生えるような土台に整え直そうという治療になります。
当サイト内では治療に関する記述では「ランパセラピー」、器具・システムに関する記述では「RAMPA」と表記しております。
ランパセラピーについて、まだ知らない方や先に知っておきたい方は下リンクからどうぞ。
こどもの矯正とRAMPA(ランパ)セラピーの5つのポイント
- 1 舌が正しい位置に付かなくなってくるのは、主に赤ちゃん時代からの様々な生活習慣の積み重ね。特に近年は赤ちゃんの首周りの筋緊張による影響が大きい。
- 2 歯並びの問題も含め、最重要ポイントになるのが「舌が正しい位置(上顎につく位置)にあること」、もしくは「きちんとした鼻呼吸が出来ること」
- 3 ある程度の年齢に達し日常化したこどもの口呼吸を鼻呼吸に変えるには、すでに骨格的なアプローチが必要な段階になっている場合が多い。
- 4 呼吸と歯並びの問題は密接な関係にあることの理解が必要。ランパセラピーの視点から見れば歯列の矯正だけで完結する問題は決して多くはない。
- 5 矯正治療でまず考えるべき目的は「歯並びを整える」なのか?「歯がきれいに生え揃うお口に整える」なのか?
当院では必要のない治療をおすすめすることはありません。
当院・他院に限らず、ホームページ等で記載がされている、「〇〇の原因」や「〇〇を改善するためには?」などは最終的に一つの答えに収束するものではありません。クリニックごとの考えの優先度・重要度などにより記載が異なってまいります。実際には患者様それぞれに答えはいくつもございます。
どの治療、どのクリニックを選ばれるかは矯正治療の入り口であり、最も大切なことです。ご選択にあたり、ご家庭の負担は大きいところと存じますが、お子様の将来に関わることとして今ひと時のリサーチをお願いいたします。その結果による「矯正治療に対するご判断」がご家庭ごとの答えと存じます。当院から精一杯お伝えさせていただくならば「ランパセラピーが必要」と感じられるお子様は少なくございません。
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この記事を監修した人
こどもと女性の歯科クリニック
院長 岡井有子
看護師として京都市内の産婦人科勤務を経て、大阪歯科大学に入学。同大学大学院歯学研究科で小児歯科学を学ぶ。2017年、港区に「こどもと女性の歯科クリニック」開院。プライベートでは2児の母として忙しい毎日を送っている。
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