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お口を育てる赤ちゃんの抱っこの仕方
歯科医が考えるCカーブ
はじめに
「Cカーブ」という言葉をご存じでしょうか?赤ちゃんは背中を丸めて包み込まれるように抱っこをされると、ママのお腹にいたときのような安心感が得られるといわれています。Cカーブはママのお腹にいたときと近い体勢なんですね。
赤ちゃんを寝かしつけると、両手をあげて「W」、両足で「M」の姿になっていることがあります。これ、赤ちゃんが自分でCカーブを作るようにがんばっている姿ともいわれています。
それだけ成長に必要なことと、ちっちゃいなりに分かっているんですよね。赤ちゃんには成長する力が備わっています。すごい!
歯医者でなぜCカーブを?
”Cカーブを意識した抱っこの仕方”

「なぜ、Cカーブ?」について、歯科の視点からお話しいたします。
現在、下記イラスト右のような歪んだ三角形のようなお口に成長してしまっている症例が大変多くなっています。この三角形のお口は、歯科のみならず、耳鼻科的な問題まで顕在化してくるであろう兆しの一つです。
当院では、「むし歯予防」や「矯正治療」の前に、イラスト左のようなまぁるい健康的なお口に育ててあげたいと考えています。
健康的なまぁるいお口を育てる上で、赤ちゃんの成長期におけるCカーブは大切なことと覚えてください。

ここでの重要ワードが口呼吸です。ポイントをお伝えします。
赤ちゃんにとって「いい抱っこ」や「いい抱っこ紐の使い方」「いい授乳の仕方」等ができませんと、赤ちゃんの首周りに負担がかかり、いわゆる筋肉の凝りのような状態になります。
この首周りの筋緊張に連動して、舌骨と呼ばれる骨の位置が下がります。舌骨の下方移動は別の筋肉を通じて舌を引き下げ、口呼吸へと繋がっていきます。


イラストは舌が正しい位置にある場合を示しています。ただ口呼吸では舌は正しい(上顎につく位置)にありません。三角形の顎は、口呼吸となっているこどもの典型的な顎の形です。
きちんと鼻呼吸で生活ができている証が、まぁるい顎なんですね。

口呼吸では取り込む酸素量が少なくなります。こうなると人間はどうするか?
受け口、もしくは姿勢を悪くして、気道を開けようと無意識的に反応します。お子様の様子をよく観察されてみてください。
赤ちゃんの正しい姿勢
この赤ちゃんの首周りの筋緊張を招きにくい、つまり首周りへの負担が少ないのが「Cカーブ」の姿勢です。
「では首をきちんと支えていればいいのでは?」との疑問があるかもしれません。
首周りに限らず、筋肉は他の筋肉とも連動しています。例えば背中の筋緊張は、首へも連動します。首だけ負担がなければよいとの話ではないので、赤ちゃんがリラックスできるCカーブが必要となるわけです。
抱っこに限らず、寝かせるときなどの場面々々で、Cカーブに気を配ってあげてください。ただし、寝返りを打つたびに直してあげるなど、意識しすぎても今度は赤ちゃんの睡眠自体に影響があります。過度な視点で見るのもあまり現実的ではありませんね。
赤ちゃんに無理をかけない範囲で意識されてください。当院では「寝かしつけるとき」には意識してくださいとお伝えしています。
Cカーブをはじめ、成長のためのサポートグッズも多く市販されています。もしベビー用品の購入で迷われていましたら、お声がけください。
念のためお伝えいたしますが、当院とベビー用品等のメーカー・販売店には一切の関係はありません。赤ちゃんのために「おすすめできるか、できないか」のみでお伝えしています。

※写真は当院でも使用している、うずまきクッションです。
さらに深く!なぜ赤ちゃんに「Cカーブ」なのか?
人間は十月十日で生まれてきますが、生物学的には未熟な状態で生まれざるを得ない事情があります。ですので本来はママのお腹にいた時の姿勢「Cカーブ」は、正しい成長のためにまだまだ必要なんですね。
多くの動物の赤ちゃんは、生まれてしばらくで歩き始めます。一方でヒトは生後1年前後は歩けない動物です。野生動物には野生動物の事情があり、ヒトにはそれを必要としない環境もあります。
ヒトがもし生まれてすぐ歩くのならば、2歳児くらいの身体の成熟が必要といわれていますが、二足歩行のヒトの骨盤の仕組み上、その大きさまでお腹にいたら自然分娩が無理なんですね。そこでヒトはまだ未熟なうちに出産という道を辿りました。
生まれてからの成長のために、司令塔である「脳」を最優先にお腹の赤ちゃんは成長していきます。だから赤ちゃんって頭が大きいんです。
生まれてからの準備が足りない中で、赤ちゃんは生まれてきてくれています。動物だったら母親のお腹の中でできた準備を、人間の赤ちゃんは生まれてからもしなくてはならないんです。正しい成長のためには「Cカーブ」はまだ必要なんですね。
赤ちゃんはこれから生きていくための準備をがんばっています。親御様をはじめ大人の手助けを必要としています。正しい成長のお手伝いをしてあげたいものですね。
お口を育てることも、その中の大切な一つです。
よくない抱っこ例
分かりやすいように少々極端にしておりますが、下の写真は望ましくない抱っこの例です。
大切なのは「Cカーブ」です。「V・U」や「I」はNGですのでご注意ください。



こどもの矯正とRAMPA(ランパ)セラピーの5つのポイント
- 1 舌が正しい位置に付かなくなるのは、乳幼児期からの様々な生活習慣の積み重ね。
- 2 お口の発達においての最重要ポイントは「きちんとした鼻呼吸ができること」
- 3 ある程度の年齢に達したこどもの口呼吸は、骨格的なアプローチが必要な段階にある場合も多い。
- 4 呼吸と歯並びには密接な関係があることの理解が必要。歯列矯正のみでは骨格へのアプローチは難しい。
- 5 矯正治療の目的は「歯並びを整える」でよいのか?「根本からの改善」を目指すのか?
当院では必要のない治療をおすすめすることはありません。
どの治療、どのクリニックを選ばれるかは矯正治療の入り口であり、最も大切なことです。ご選択にあたり、そのご負担は大きいところと存じますが、お子様の将来に関わることとして、今ひと時のリサーチをお願いいたします。ぜひ複数のクリニックでお話しを伺ってください。ご家庭で話し合われてください。その結果による「矯正治療に対するご判断」がご家庭ごとの最適解と当院は思います。当院から精一杯お伝えさせていただくならば、「ランパセラピーが必要」と感じられるお子様は少なくございません。
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この記事を監修した人
こどもと女性の歯科クリニック
院長 岡井有子
看護師として京都市内の産婦人科勤務を経て、大阪歯科大学に入学。同大学大学院歯学研究科で小児歯科学を学ぶ。2017年、港区に「こどもと女性の歯科クリニック」開院。プライベートでは2児の母として忙しい毎日を送っている。

こどもと女性の歯科クリニック
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