コラム

床矯正とRAMPAでは「顎を拡げる意味」が違う|拡大床で歯列を拡げても「顎が小さい」は変わらない

床矯正で「顎を拡げる」の勘違い 小児矯正(一期矯正)で行われる顎の拡大とは?

例えば叢生(そうせい/ガタガタとした歯並び)は、主に歯がきれいに並ぶために必要なスペースが足りないことが原因といわれます。そのため、歯がいろいろな箇所や角度から無理に生えてくる状況となり、叢生という状態になります。

叢生に対して、小児の矯正治療では、永久歯が生え揃う前に「歯が生えるスペースを確保しましょう」と説明を受けることが多いでしょうか?

もしくは「顎を拡げましょう」と説明されるかもしれません。

叢生(ガタガタの歯並び)

本ページでは、叢生を一例としてお話しいたします。ランパセラピーを端的に表現すると、「歯並びが悪くなる根本的原因から改善する」となりますが、この「歯並びが悪い」は必ずしも叢生を指すものではありません。

「歯並びが悪い」には、上顎前突・反対咬合・過蓋咬合など様々ありますが、いずれの状態であっても重要なのは「ランパセラピーが治療として適切かどうか?」となります。「骨格」の改善によって「お子様ごとの歯並びの悪さが改善するのか?」ですね。

叢生以外でお悩みの親御様にも、ここでのお話しは無関係ではありません。ランパセラピーでは、いずれの不正咬合であっても、歯並びが悪くなる根本的原因からの改善を目指しています。

目次

    床矯正(しょうきょうせい)とは?

    以下は一般的に記載されている「床矯正」の記述です。AI検索をしても似たような結果が出るはずです。AI検索で出てくるということは、そのような記載をしているウェブサイトが非常に多いことを示しています。

    床矯正は、主に成長期の子どもを対象に、取り外し可能な装置(拡大床)で顎の幅を広げ、永久歯がきちんと並ぶスペースを作る小児矯正治療(一期矯正)です。抜歯を極力避けて自然な歯並びを目指すメリットがあります。

    ここに本当に大切な誤解の元があります。床矯正で拡げるのは「顎」ではなく、「歯列」です。床矯正の装置(拡大床)は、顎を拡げる構造を持っていません。

    床矯正(拡大床)の考え方

    ランパセラピーで考えることは「歯が生える土台から整え直す」。こちらをまずご記憶ください。その具体的な目標が「顎を拡げる」です。

    ですが、床矯正で拡大するのは歯列。

    以下は、矯正治療に対してよく使われるベンチの例えですが、治療自体とは分けてご理解ください。イメージを優先しています。そして、もう少し理解しやすく、よくある横並びのベンチではなく、「半円」のベンチをイメージされてください。

    ポイントは「ベンチの大きさ」に焦点をあてるのがランパセラピー。「座る人の位置」に焦点をあてるのが床矯正になります。

    床矯正を「半円」のベンチで例えると‥

    例えば、5人座りたい人がいるならば、5人掛けのベンチが必要です。しかし、5人座れたとしても、行儀の悪い人がいると他の人は窮屈な思いをします。

    比較的症状の軽い叢生がこの状態です。行儀の悪い人に正してもらえれば5人はきちんと座れます。

    「いやいや、どう見てもこのベンチは4人掛けの幅しかありません」となるとこれは困ります。

    お客さん(⇒身体)からしたら、もともと「5人掛けのベンチが置けるスペースはあったはずなのに?」なのですが、なぜかそのスペースは狭くなり、(⇒この「なぜか?」が大事です)そこに合わせて作られたベンチは4人掛けの幅しかありません。(⇒主にお口の発達の問題によって、歯が生える場所が正しく作られなかった)

    子供のまるい顎と三角の顎の比較

    座りたい人はすでにここにいます。(⇒乳歯の後ろにはすでに永久歯が控えています)5人掛けのベンチは必要なんですね。ですが、実際に生えてくるのは、もう少し先です。となると、必要なのは永久歯が生えてくるまでのリメイクです。

    しかしです。リメイクの業者さん(⇒矯正治療)によっては「今から5人掛けは難しいかもしれません」となる可能性があります。

    真っ先に思いつくのはベンチのリメイクですが、この4人掛けのベンチはそのスペースに合わせて作られたものなので、業者さんにしてみたら、「このスペースに今から5人掛けのベンチですか?」という見立てです。

    場所ごと拡げることはそう簡単にはできません(⇒骨格の問題だからです)ので、希望と現実が合わないんです。

    さて、最終的に5人座れればいいのですが、どうでしょうか?重要なのはここです。

    まずは「座られている皆さん(歯)、もう少しづつ奥に座ってください」。(⇒これが床矯正です)ベンチは半円です。皆が座っている位置から後ろに下がれば、少しづつスペースは空きます。

    それでも、ちょっと窮屈かもしれません。どうしても無理そうなら座る人数を減らしてもらってもいいですか?(⇒抜歯)という判断になります。

    これらが、一般的な矯正治療の流れ。抜歯ありきの考え方ならば、一期矯正は基本的に不要です。矯正治療に抜歯はつきもの。それは仕方がないとの先入観があれば、無駄な負担となる可能性の高い一期矯正を薦めない歯科は親切にも映ります。

    しかしです。「ちょっと待てよ、そもそも狭くなった原因があるじゃないか。いっそ場所ごと作り直すべきなんじゃないか?」と考える業者(⇒RAMPA)もいます。「顎が小さい」には、「呼吸」の問題が関わるからです。

    矯正治療の目的の違いに対して、小児の矯正は「お口の育成」、大人の矯正は「お口の更正」と表現されることがあります。

    また、「家の新築」と「家のリフォーム」のような例えがされることもあります。いずれにしても違和感を感じるかもしれません。矯正治療の時点で、育成でも新築でもありません。

    当院では、小児矯正の多くに必要になるのはすでに「お口の更正」、または「家のリフォーム」と考えています。「お口の育成」は赤ちゃん歯科がターゲットとする領域です。

    RAMPAだけが持つ「上前方への力のベクトル」

    「なんとか歯が生えるスペースを確保しよう!」

    抜歯こそ考えませんが、基本的にはランパセラピーも同様です。従来の矯正方法との最も大きな違いは、足りないスペースに対して、二次元的に横方向だけに拡げるのか、三次元的・立体的に拡げるのかです。

    少々歯を動かし、歯並びを整える程度で済むのならば、マウスピース矯正もよいですが、そうはいかない場合、スペースを確保する工程はどうしても必要です。「〇〇を拡げる」がそこに当たります。

    本来、歯が並ぶスペースが足りないという事態は、ヒトの設計図上では想定されていないんですね。多くの場合、何らかの原因で、歯が並ぶスペースを足りなくしてしまったということになります。

    ここで大切なのは、「何を拡げるのか?」です。「歯列」を拡げるのか?「顎」を拡げるのか?ここが非常に重要な理解です。

    歯の土台の範囲内、かつ悪影響のない範囲となると「歯列」はそうそう大きくは動かせないんですね。先ほどのベンチの例からすると、後ろに下がりすぎて落っこちてしまう。だから抜歯の懸念が付いてまわります。

    RAMPAでアプローチするのは直接「顎の骨」です。ですので大きな変化が望めるんです。

    さんかくの顎
    正しく育ったお口

    そもそも健全な顎へと成長させられれば、歯は自然と生え揃います。健全な成長がかなわず、歪んでしまった骨格が原因で、歯並びが乱れてしまうことが多い。

    ランパセラピーでは一期・二期との考え方はありません。歪んでしまった骨格を根本から整え直そうとの視点から歯列矯正をみています。

    そして、とても大切なこと。歪んだ骨格は、空気の通り道、鼻腔や気道へも悪影響を及ぼす可能性があります。つまり、呼吸、酸素摂取能力に関わります。

    ならば「本来、拡げるべきなのは?」

    RAMPA 拡大床矯正
    拡大方向三次元(上前方)二次元(主に横方向)
    主な対象上下顎のゆがみ(骨格)歯を並べるスペース(歯列)
    期待できる効果歯並び+呼吸の改善歯並びの改善(二期あり)
    装置の種類口腔内+口腔外装置口腔内装置
    抜歯の懸念ほぼない不確定

    拡大方向の理解の重要性

    改めて、拡大床(床矯正)や急速拡大装置は歯列、もしくは歯が生える土台を横方向に二次元的に拡大します。

    不正咬合の原因を骨格的要因とした場合、かつ根本的な原因解消を目指す場合、「歪んでしまった顎骨」に対して、二次元的に拡げるこれらでは少々無理があります。

    そもそも歯が並ぶスペースが足りなくなる顎骨の歪みの原因は、中顔面の骨格の劣成長であって、歯が生えている部分だけの問題ではありません。そして、上顎骨は「鼻」にも関わる骨です。

    中顔面を構成する上顎骨は歯と鼻に関わる骨と示すイラスト

    RAMPAのシステムでは、口腔外装置と組み合わせることで、三次元的に上前方へと拡大します。上前方へ牽引することで、歪みを整えるという表現がより適切かもしれません。

    「なぜ上前方なのか?」それが本来あるべき骨格の正しい成長方向だからと理解してください。健全的な解決のためには、下がってしまった上顎は上げてあげなくてはなりません。

    「上前方への成長誘導」は、非常に重要なキーワードです。これは他の矯正治療では大変困難なことです。RAMPAのシステムは、この上前方という力のベクトルを得るために考えられた構造なんです。

    大きな違いを感じられる一般的な矯正とランパセラピーですが、元を辿っていくと「顎の拡大方向と効果範囲」に違いは現れます。

    歯列のことであれ、呼吸のことであれ、それらの問題の原因は主に骨格です。その改善のためには「上前方への成長は不可欠な過程」ということです。歯が生えている部分だけ拡げるでは、歯並びが悪いことに対する対症療法になってしまいます。

    ランパセラピー(ランパ矯正)で使用する装置
    RAMPAが骨格へかける力のベクトルのイメージイラスト

    難しいとされていた「歪みのない健全な顎骨」への成長誘導を、この三次元的アプローチが可能としています。

    このことにより「中顔面の発達不良」に起因する呼吸器系や耳鼻系の問題の改善が期待できるのです。ランパセラピーでフォーカスしているのは、歯並びよりむしろこちらです。

    ランパセラピーでは、健全な呼吸機能・口腔機能への変化から、未来の健康を目指しています。歯並びはいわば副産物です。

    RAMPA前と治療中の気道容積の変化を示すレントゲン

    とはいえ歯並びは?と思われる方もいますでしょう。当院ではワイヤーやマウスピースを使用しての歯列へのアプローチは基本的には行いません。せっかく上げた中顔面(上顎)が再び下がる可能性があるからです。

    「芸術的な歯並び」とはまいりませんが、12歳臼歯が生え揃う時期を目安に、最終的には自然ときれいな歯並びに整いますのでご安心ください。それがヒトのそもそもの設計図にはあるのです。

    ランパセラピー(ランパ矯正)終了時のイメージ
    こどもと女性の歯科クリニックロゴ

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    こどもと女性の歯科クリニック院長|岡井有子

    この記事を監修した人
    こどもと女性の歯科クリニック
    院長 岡井有子

    看護師として京都府内産婦人科等勤務を経て、大阪歯科大学に入学。大阪歯科大学大学院歯学研究科で小児歯科学を学ぶ。歯学博士。

    2017年東京都港区麻布十番にランパセラピー専門医院「こどもと女性の歯科クリニック」開院。

    2024年「医療法人社団セントワ」開設。同法人理事長就任。

    日本小児歯科学会・日本小児耳鼻咽喉科学会・日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会・日本ダウン症学会所属。
    RAMPA研究会・赤ちゃん歯科ネットワーク所属。

    2025年European Conference on Dentistry and Oral Health(パリ)、MENA Congress for Rare Diseases(アブダビ)などにおいて、ランパセラピー学会発表。

    プライベートでは2児の母として忙しい毎日を送っている。

    こどもの矯正とRAMPA(ランパ)セラピー

    こどもと女性の歯科クリニック

    AM8:30〜13:00 PM14:00~18:00(最終受付 17:30)
    休診日:金曜・日曜日

    〒106-0046 東京都港区元麻布1-4-27-101
    TEL:03-6435-2281

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