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一般的な矯正とランパセラピー 治療の効果に関わるその違いは顎の拡大方向
はじめに
例えば叢生(そうせい/ガタガタとした歯並び)は、主に歯がきれいに並ぶために必要なスペースが足りないことが原因といわれます。そのため、歯がいろいろな箇所や角度から、そもそも足りないスペースに無理に生えてくる状況となり、ガタガタの歯並び(叢生)という状態になります。
叢生に対して、小児の矯正治療では永久歯が生え揃う前に「歯がきれいに生えるスペースを確保しましょう。」と説明を受けることが多いでしょうか?
こちらでは比較的理解をしやすい叢生を一例としてお話しいたします。ランパセラピーを端的に表すと「歯並びが悪くなる根本的原因から改善する。」となりますが、この中の「歯並びが悪い」は必ずしも叢生を指すものではありません。
「歯並びが悪い」には他にも上顎前突・反対咬合・過蓋咬合など様々ありますが、いずれの状態であっても重要なのはランパセラピーが治療として適切との判断になるかどうか?となります。「骨格」、その改善によって、お子様ごとの歯並びの悪さが改善するのかどうか?ですね。
叢生以外でお悩みの親御様にもここでのお話しは無関係ではございません。ランパセラピーでは、いずれの不正咬合であっても歯並びが悪くなる根本的原因からの改善を目指しています。
元を辿れば、ランパセラピーはイギリスのドクターJohn Mew氏が考案したバイオブロックセラピーを、三谷寧医師(吉祥寺こども診療室)が日本人に最適化し、口腔外装置と組み合わせることで三次元的アプローチを実現させた矯正治療です。
なかなか不思議なお話しですが、矯正治療に対しての歯の動き方や痛みの感じ方等がそれぞれの人種によっても変わってきます。日本人に最適化とはここからきています。
当院は全国でも数少ないランパセラピー専門医院として、この矯正治療の存在と可能性を知っていただきたいと考えております。
RAMPA(ランパ)セラピーとは歯並びが悪くなる原因の根本的な解消を目指し、歯がきれいに生えるような土台に整え直そうという治療になります。
当サイト内では治療に関する記述では「ランパセラピー」、器具・システムに関する記述では「RAMPA」と表記しております。
ランパセラピーについて、まだ知らない方や先に知っておきたい方は下リンクからどうぞ。
一般的な矯正治療の考え方は?
叢生に対して、歯列を拡げたり抜歯によって歯数を減らす等の処置を行い、歯を並べるスペースを確保しようという治療が従来型の矯正治療の基本的な考え方です。
対してランパセラピーで考えることは「歯が生える土台から整え直そう。」になります。
下記は矯正治療に対してよく使われる例えですが、治療自体とは分けてご理解ください。イメージを優先しています。
例えば5人座りたい人がいるならば、5人掛けのベンチが必要になります。しかし5人座れたとしても、行儀の悪い人がいると他の人は窮屈な思いをします。
比較的症状の軽い叢生がこの状態です。行儀の悪い人に正してもらえれば5人はきちんと座れます。
「いやいや、どう見てもこのベンチは4人掛けの幅しかありません」となるとこれは困ります。
お客さん(⇒身体)からしたら、もともと「5人掛けのベンチが置けるスペースはあったはずなのに?」なのですが、なぜかそのスペースは狭くなり、(⇒ここが非常に重要になります。)そこに合わせて作られたベンチは4人掛けの幅しかありません。(⇒主にお口の発達の問題によって「歯が生える場所が正しく作られなかった」となります。)
座りたい人はすでにここにいます。(⇒赤ちゃんであっても生まれた時点で乳歯が生える準備ができています。)5人掛けのベンチは必要なんですね。となると必要なのはリメイクになります。
しかしです。リメイクを依頼された業者さん(⇒矯正治療)によっては「今から5人掛けは難しいかもしれません。」となる可能性があります。
真っ先に思いつくのはベンチのリメイクになりますが、このベンチはもともとそのスペースに合わせて作られたものなので、業者さんにしてみたら「このスペースに5人掛けのベンチですか?」という見立てです。
今から5人掛けにしたいといっても拡げるには限度があるのです。(⇒一期矯正)場所ごと拡げることはそう簡単にはいきませんので、場所とベンチのバランスが合わないんですね。10坪の土地に15坪の家を建てたいというようなイメージになります。
さて限界までのリメイクで5人座れればいいのですがどうでしょうか?
まずはベンチの幅を出来るだけ拡げてみますが、ちょっと窮屈かもしれません。どうしても無理そうなら座る人数を減らしてもらってもいいですか?(⇒抜歯)という判断になります。
それでしたら「皆さん心地よく座れますよ。」ということですね。(⇒一概に抜歯が悪いわけではありません。)
無理にベンチを作ろうとしてしまう業者さんもいると伺いますので、お気を付けください。
「ちょっと待てよ、いっそ場所ごと作り直すことも可能なんじゃないか?」と考える業者さん(⇒RAMPAなど)もいます。
矯正治療の目的の違いに対して、小児の矯正は「お口の育成」、大人の矯正は「お口の更正」と表現されることがあります。
また例えを用い分かりやすくお伝えする場合、「家の新築」と「家のリフォーム」の違いのような例えがされることもあります。いずれにしても少々違和感を感じるかもしれませんね。
当院では、小児矯正の多くに必要になるのはすでに「お口の更正」、または「家のリフォーム」と考えています。「お口の育成」は赤ちゃん歯科がターゲットとする領域になります。
RAMPAの特徴
「なんとか歯が生えるスペースを確保しよう!」
抜歯こそ考えませんが、基本的にはランパセラピーで考えることも同様です。従来の矯正方法との最も大きな違いは、足りないスペースに対して二次元的に横方向だけに拡げるのか、三次元的・立体的に拡げるのかになります。
少々歯を動かし歯並びを整える程度で済むのならばよいですが、そうはいかない場合、スペースを確保する工程はどうしても必要になります。広くいわれる「〇〇を拡げる」がそこに当たります。
本来、歯が並ぶスペースが足りないという事態はそうあることではないんですね。多くの場合、何らかの原因で、歯が並ぶスペースを足りなくしてしまったということになります。
ただし「何を拡げるのか?」は大切な部分になります。「歯列」を拡げるのか?「顎」を拡げるのか?これは非常に重要な理解になります。
いずれにしても、一期矯正で十分にスペースが確保できるならば、負担の大きい二期矯正はまず必要なくなるはずなのですが、なかなかそう上手くいく場合ばかりではありません。歯の土台の範囲内かつ悪影響のない範囲となると歯列はそうそう大きくは動かせないんですね。
RAMPAでアプローチするのは「顎(骨)」になります。
そもそも健全な顎へと成長させられれば、歯は自然と生え揃います。健全な成長がかなわず、歪んでしまった骨格(主に上顎骨)が原因で歯並びが乱れてしまうことが多いんですね。
ランパセラピーでは一期・二期との考え方はありません。歪んでしまった骨格を根本から整え直そうとの視点から歯列矯正をみています。
「本来、拡げるべきなのは?」
一般的な矯正治療は歯並びが悪いことへの対症療法という意味合いが強くなります。
改めて、拡大床(床矯正)や急速拡大装置は、歯列もしくは歯が生える土台を横方向に二次元的に拡大します。
不正咬合の原因を骨格的要因とした場合、かつ根本的な原因解消を目指す場合、「歪んでしまった顎骨」に対して歯列や土台部分を二次元的に拡げるこれらでは少々無理があります。
そもそもこの歯が並ぶスペースが足りなくなる顎骨の歪みの原因は、中顔面と呼ばれる鼻周りあたりの骨格の下方成長(劣成長)なのです。
これに対して、RAMPAのシステムでは口腔外装置と組み合わせることで三次元的に上前方へと拡大します。上前方へ牽引することで、歪みを整えるという表現がより適切かもしれません。
「なぜ上前方なのか?」それが本来あるべき骨格の正しい成長方向だからと理解してください。「上前方への成長誘導」は非常に重要なキーワードです。これは他の矯正治療では大変困難なことになります。RAMPAのシステムは、この上前方という力のベクトルを得るために考えられた構造なのです。
大きな差異を感じられる一般的な矯正とランパセラピーですが、元を辿っていくと「顎の拡大方向」の違いから、その差異は生まれます。
歯列のことであれ、呼吸のことであれ、それらの問題の原因は主に骨格となります。それらを根本から正す。そのためには「上前方への成長は不可欠な過程」ということになります。
歯が生えている部分だけ拡げるとは違いますよね。
難しいとされていた「歪みのない健全な顎骨」への成長誘導を、この三次元的アプローチが可能としています。
このことにより「中顔面の発達不良」に起因する不正咬合に加えて、原因を同じくする呼吸器系や耳鼻系の問題の改善が期待できるのです。ランパセラピーでフォーカスしているのは、歯並びよりむしろこちらです。
ランパセラピーでは、健全な呼吸機能・口腔機能への変化から、未来の健康を目指しています。
とはいえ歯並びは?と思われる方もいますでしょう。
「芸術的な歯並び」とはまいりませんが、最終的には自然ときれいな歯並びまで整いますのでご安心ください。
こどもの矯正とRAMPA(ランパ)セラピーの5つのポイント
- 1 舌が正しい位置に付かなくなってくるのは、主に赤ちゃん時代からの様々な生活習慣の積み重ね。特に近年は赤ちゃんの首周りの筋緊張による影響が大きい。
- 2 歯並びの問題も含め、最重要ポイントになるのが「舌が正しい位置(上顎につく位置)にあること」、もしくは「きちんとした鼻呼吸が出来ること」
- 3 ある程度の年齢に達し日常化したこどもの口呼吸を鼻呼吸に変えるには、すでに骨格的なアプローチが必要な段階になっている場合が多い。
- 4 呼吸と歯並びの問題は密接な関係にあることの理解が必要。ランパセラピーの視点から見れば歯列の矯正だけで完結する問題は決して多くはない。
- 5 矯正治療でまず考えるべき目的は「歯並びを整える」なのか?「歯がきれいに生え揃うお口に整える」なのか?
当院では必要のない治療をおすすめすることはありません。
当院・他院に限らず、ホームページ等で記載がされている、「〇〇の原因」や「〇〇を改善するためには?」などは最終的に一つの答えに収束するものではありません。クリニックごとの考えの優先度・重要度などにより記載が異なってまいります。実際には患者様それぞれに答えはいくつもございます。
どの治療、どのクリニックを選ばれるかは矯正治療の入り口であり、最も大切なことです。ご選択にあたり、ご家庭の負担は大きいところと存じますが、お子様の将来に関わることとして今ひと時のリサーチをお願いいたします。その結果による「矯正治療に対するご判断」がご家庭ごとの答えと存じます。当院から精一杯お伝えさせていただくならば「ランパセラピーが必要」と感じられるお子様は少なくございません。
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この記事を監修した人
こどもと女性の歯科クリニック
院長 岡井有子
看護師として京都市内の産婦人科勤務を経て、大阪歯科大学に入学。同大学大学院歯学研究科で小児歯科学を学ぶ。2017年、港区に「こどもと女性の歯科クリニック」開院。プライベートでは2児の母として忙しい毎日を送っている。
こどもと女性の歯科クリニック
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