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ランパセラピーと歯並びが悪くなる原因の関係 なぜこの矯正装置が必要なのか?
はじめに
近年では、矯正装置の見た目に配慮した術式もあり選択肢は増えましたが、治療の仕組み自体が多種多様に増えたわけではありません。
全ての症状に対して、全ての矯正治療が適切であり、患者様の考えによってどれでも選べるものではないことは今一度ご確認ください。
日本では矯正治療に対するネガティブな感覚があります。「見た目」などはよくいわれますね。日本人的にみれば、矯正装置をつけた外見にモヤモヤした感覚を持つことに一定の理解はできます。
かつてはその外見に対して、心ない言葉もあり、とりわけ子供心には響いたことでしょう。現在でも、お子様のコミュニティー内ではないことではないのかもしれません。
しかし、多様性や個性がより大事にされる時代となりました。矯正装置に対するある種の偏見も少なくなり、より多くのご家庭が矯正治療に取り組まれています。
先入観から、矯正治療が「選択肢」とはならないご家庭もあることと思います。そもそも矯正治療は未来を見据えた恥ずべきことなどない行いです。
最近では、矯正治療に投資と近い考えを持たれている親御様も少なくありません。お子様の将来を考えれば、まさしくその通りかもしれません。
しかしお子様にとっては、その解釈も難しく、お子様ご自身がどうしても受け入れられないこともあるでしょう。せめて努力ではいかんともしがたい、他人の目が過剰に気になるような社会の空気感はなくなるといいですね。
それには私たち医療従事者はもちろんのこと、お子様にとってはご家庭のお声がけが大切な力になります。ご協力をお願いいたします。
RAMPAの装置に対して、頭では理解できても気持ちが追い付かない親御様の戸惑いを感じることもあります。お子様にしてみればなおさらかもしれません。
それも承知した上で、RAMPAの装置は、求める上前方へのベクトルの力を得るために考え抜かれた形状であることをご理解ください。
装置のインパクトで案外忘れられてしまいますが、RAMPAの外付け装置は基本的におうち時間で装着することになります。学校等でお出かけの際は、外していただいて大丈夫です。(装着時間のお約束はお守りくださいね。)
なぜこのような矯正装置が必要なのか?順を追ってご説明いたします。初見の方は分かりづらい言葉があるかもしれません。その際は、下リンクよりご確認ください。
RAMPA(ランパ)セラピーとは歯並びが悪くなる原因の根本的な解消を目指し、歯がきれいに生えるような土台に整え直そうという治療になります。
当サイト内では治療に関する記述では「ランパセラピー」、器具・システムに関する記述では「RAMPA」と表記しております。
ランパセラピーについて、まだ知らない方や先に知っておきたい方は下リンクからどうぞ。
歯並びが悪くなるのには様々な原因があります。当院では「中顔面」の問題にフォーカスしてお伝えしていますが、これも歯並びの問題のすべての原因を言い当てているものではありません。
患者様にとっては「原因に対して適切な治療法」を知ることが大切です。そのためには、複数の歯科医院でお話しを伺い、必要に応じて検査を受けることが必要になります。
歯並びが悪くなる原因
当院では、歯並びが悪くなる主な原因は「中顔面の骨格的な発達不良」とお伝えしています。しかしこちらは最終的な治療対象としての捉え方に近くなりますので、一旦置いてください。
この発達不良を導く主な要因が「口呼吸」となります。中顔面云々といわれると難しい話、関係のない話と受け取られるかもしれませんが、その主たる要因が「口呼吸」である以上、ここでのお話しが無関係となるお子様の方が少ないかもしれません。
イラストは健全な上顎を表しています。舌は上顎についている状態が正しい形です。そしてこの状態では鼻呼吸しかできません。これも呼吸の正しい形です。
舌を上顎につけたまま、口呼吸はできないんですね。お試しください。
さて口呼吸になると、イラストの何が変わってくるでしょうか?
そうですね。イラストでいう「舌圧」がなくなります。これは舌の力による内から外へ向かう力がなくなるということになります。外から内へ向かう力の「唇圧・頬圧」は変わりませんので、歯を境とする圧力のバランスが崩れます。このバランスの中で歯並びは決まります。
外からの力が優位なってしまいますので、歯が生える土台ごと、顎が狭小化する向きに力がかかり続けます。
その結果、写真のような三角形に近い顎の形、いわゆる「顎が狭い」に繋がっていきます。舌による内から外に向かう力が弱いので、歯の土台に厚みもみられます。お子様のお口の中を確認してみてください。
このままだと歯並びは悪くなりそうな予測ができますね。
こちらの写真が適切な「舌圧」と「唇圧・頬圧」のバランスの中で健全に成長した上顎となります。きれいなアーチ状の顎です。歯の土台の厚みもありませんね。
歯と歯の間もきちんと隙間があって、矯正治療の必要はなさそうな予測ができます。
歯並びが悪くなる原因が導くこと
さて口呼吸によって、困ることはまだあります。舌の支えがあることによって、本来は上前方へ向かうはずだった中顔面(顔の中心、鼻廻りのあたり)の成長方向は、舌の支えがなくなることによって下方へと向かいます。
上顎骨を中心とする中顔面が、正しいとはいえない成長(下方成長)を続けますと、上顎骨には歪みが生じはじめ、歯が生える土台や空気の通り道である鼻腔や気道にもよくない影響を及ぼします。
このことは後々、口や鼻の空間を狭くさせ、歯並びに影響を及ぼすのはもちろんのこと、慢性的な副鼻腔炎などの耳鼻疾患にも繋がります。
土台である上顎骨、そして舌圧や唇圧・頬圧などの干渉が歯並びの形成において、大切な要素となるんですね。
そしてすでに「歯並びに問題が起きている」となると、それは鼻腔の問題を招く要因が潜んでいる可能性があるということなります。さらにこの関係性は、歯並びと鼻腔を入れ替えても成り立ちます。
舌の力と矯正装置の力
さて「たかが舌で?」とご感想を持たれている方もいるかもしれません。
一つ覚えていただきたいことがあります。ほとんどの矯正治療では矯正装置を使い、程度の差こそあれ、歯列や骨格に力を加えて矯正していきます。
しかし、実は矯正装置によってかける力よりも、はるかに大きい力で舌は歯列や骨格に力をかけています。
ホントは舌やその周りの筋肉が、何よりの矯正装置なんですね。同時に舌は、歯並びの域を超えた役割も担っています。ということはつまり、舌が正しい位置にないことは、骨格の正しいとはいえない成長を導き、それが何らかの悪影響として現れる可能性が高くなるということになります。その代表が歯並びや呼吸の不具合となるんですね。
原因に対してのアプローチ
本来であれば、ヒトの設計図では、歯はきれいに生え揃うようにできています。しかし、イレギュラーな成長により、口呼吸となり、上顎は下がり、お口の空間は狭くなってしまいました。結果として歯並びが悪くなります。
ここで歯並びが悪くなる原因、そして治療対象は「中顔面の骨格的な発達不良」となります。
当院のスタンス
もし検査の結果、ここまでのお話しのような過程を経て、歯並びに問題が出ているのであれば、当院は原因から改善し、可能な限り正しい成長の形に戻してあげたい。
決して審美的な歯並びを軽視するものではありませんが、とりわけこれからを生きるお子様には、呼吸に関わることや将来的な口内疾患予防の方がより大切なことと考えています。
そのためには、根本から正し、継続的に矯正治療の必要がなくなるお口に整え直してあげることが必要です。当院がランパセラピーしか行わない大きな理由になります。
RAMPAの装置が必要な理由
さて現実として歯並びが悪くなってきている。多くの方は「このままではよくないな。」と思われますね。ご理解しやすいようにイメージ優先の表現になりますが、ご容赦ください。さてこの発達不良はどうしたらよいでしょう?
【口呼吸になる⇒中顔面が下がる⇒お口の空間が狭くなる】
が、歯並びが悪くなる一つの流れでした。そもそもは口呼吸が良くなかった。だったら口呼吸を正せばいいとなりますね。これは間違いではありません。
今は口呼吸だとしても、年齢や状態によっては、習癖の改善やお口のトレーニングによって口呼吸を正し、舌が本来の働きを取り戻せば間に合う場合もあります。この段階を主な対象とした矯正治療もあります。
ただし問題があります。成長が進むことで、骨はどんどん固まっていきます。中顔面の下方成長も同様です。このことが鼻腔にも影響を及ぼすことはお伝えいたしました。
正しいとはいえない成長により鼻腔が狭くなってしまい、すでに鼻からの呼吸に何らかの支障がある状態ですと、その状態で舌を上顎につけることはできません。
舌が上顎についた状態では、口呼吸ができないことはお試しされたでしょうか?つまり舌を上顎につけると、鼻からも口からも呼吸ができない状態ということになってしまいます。
ということは、鼻腔の問題を解決しないことには、舌は上顎につけることはできないんですね。これは口呼吸を鼻呼吸に変えることと言い換えても同様です。
ではこの鼻腔の問題の要因は何だったでしょうか?一連の流れを思い返してください。ポイントは【口呼吸になる⇒中顔面が下がる⇒お口の空間が狭くなる】です。
そうですね。中顔面の下方成長による上顎骨の歪みでした。だったら「上顎骨の歪みをとるために、中顔面は上げたらいい」となりますね。その結果として歯が生え揃う土台に整えることができます。
そのためには、中顔面が本来成長するはずだった「上前方」へと導く力が必要です。しかし鼻腔に問題がある限り、舌はその役割を担えません。そこで舌の代役、つまりRAMPAのシステムなんです。
ここで舌の代わりとなる力を端的にいうと、
- 上前方方向へ、口の中から外へ押す力
- 上前方方向へ、外から口の中を牽引する力
になります。そのいずれかの力を人工的に生み出さなくてはなりません。正しくない成長を続ける中顔面を、正しい成長方向へと変化させるには、力のベクトルとして「上前方」はどうしても必要になります。それが本来あるべき形だからです。
ただしです。現実的に、舌が発揮する力(中顔面を上前方に向かわせる力)の代わりを、口腔内の装置のみで効果的に作り出すことは難しいんですね。
口腔内装置だけでは効果的な力は生み出せないとなると、口腔内と口腔外の装置を連結して外から牽引することで、その力を生み出そう…
だからRAMPAの装置がこのような形状になったんです。
バイオブロックとRAMPA
バイオブロックとRAMPAは、治療の目的としてはほぼ同じですが、違いは様々あります。ここでのお話しからいえば、バイオブロックの上顎の誘導方向は上前方というより、「上方」の表現に近くなります。
バイオブロックは口腔内装置のみの治療で、RAMPAは口腔内外の装置の連結による治療とご紹介していますが、口腔外の装置を使うか使わないかだけの違いではございません。バイオブロックから派生し、RAMPAとして全く別の進化をしているとご理解ください。
治療の前提として
矯正治療の前提として、症状の深刻度合い、患者様の年齢やご希望など様々な要素によって、どうしたらよいか?どこまでできるのか?ベストと思われる結果とは何か?など様々に変わります。検査や歯科医師とのお話しを経て、目標を設定しなくてはなりません。
歯科医院としてベストと思われるご提案はいたしますが、そのご判断はご家庭となります。「歯並びだけで大丈夫」や「根本から治したい」、また「見送る」という選択肢もあります。ご家庭がご納得の結論であれば、どれも間違いではありません。自信を持たれてください。
まとめ
本来、健全な骨格であれば歯は自然と生え揃うように人間の身体はできています。鼻呼吸なども基本的には同様です。どこかのタイミングでイレギュラーな成長をしてしまったんですね。
ランパセラピーとは「歯が自然と生え揃う土台へと整え直す矯正治療」です。そのためのRAMPAの形状なんですね。
この「整え直す」というワードは実は大切な部分です。矯正治療自体は大掛かりかもしれませんが、その目的は「間違った成長方向の骨格に対して、正しい成長はこっちだよ。」と誘導して、本来こうあってほしい骨格に近づけることです。身体には優しいんですね。
拡げたいところを力で拡げるのとは、少々意義が異なります。だから痛みも少ないとなります。
「歯並びが悪くなってしまった原因から改善し、より健全に近いお口に整え直してからの歯列矯正を目指す」、このことにより、基本的にはどのような不正咬合でも対応は可能となります。
さらに意義のあることは、この成長誘導により、鼻腔や気道の狭さが改善され、健康面での改善も期待できることです。
手段は複雑でも「原因から改善する」、その考えはいたってシンプルです。
残念なことに歯並びは一度整えたからといって、ずっとそのまま維持ができるとは限りません。生活習慣や習癖、むし歯やけがで歯を失ったなど様々で身近なことから再び歯並びが乱れていくことがあります。
RAMPAのシステムも万能なものではありません。しかし、生活習慣の中でいわれる不正咬合の原因、例えば口呼吸や不良姿勢はRAMPAのメカニズムにより改善されていきます。
後戻りの可能性は少ないということになります。
こどもの矯正とRAMPA(ランパ)セラピーの5つのポイント
- 1 舌が正しい位置に付かなくなってくるのは、主に赤ちゃん時代からの様々な生活習慣の積み重ね。特に近年は赤ちゃんの首周りの筋緊張による影響が大きい。
- 2 歯並びの問題も含め、最重要ポイントになるのが「舌が正しい位置(上顎につく位置)にあること」、もしくは「きちんとした鼻呼吸が出来ること」
- 3 ある程度の年齢に達し日常化したこどもの口呼吸を鼻呼吸に変えるには、すでに骨格的なアプローチが必要な段階になっている場合が多い。
- 4 呼吸と歯並びの問題は密接な関係にあることの理解が必要。ランパセラピーの視点から見れば歯列の矯正だけで完結する問題は決して多くはない。
- 5 矯正治療でまず考えるべき目的は「歯並びを整える」なのか?「歯がきれいに生え揃うお口に整える」なのか?
当院では必要のない治療をおすすめすることはありません。
当院・他院に限らず、ホームページ等で記載がされている、「〇〇の原因」や「〇〇を改善するためには?」などは最終的に一つの答えに収束するものではありません。クリニックごとの考えの優先度・重要度などにより記載が異なってまいります。実際には患者様それぞれに答えはいくつもございます。
どの治療、どのクリニックを選ばれるかは矯正治療の入り口であり、最も大切なことです。ご選択にあたり、ご家庭の負担は大きいところと存じますが、お子様の将来に関わることとして今ひと時のリサーチをお願いいたします。その結果による「矯正治療に対するご判断」がご家庭ごとの答えと存じます。当院から精一杯お伝えさせていただくならば「ランパセラピーが必要」と感じられるお子様は少なくございません。
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この記事を監修した人
こどもと女性の歯科クリニック
院長 岡井有子
看護師として京都市内の産婦人科勤務を経て、大阪歯科大学に入学。同大学大学院歯学研究科で小児歯科学を学ぶ。2017年、港区に「こどもと女性の歯科クリニック」開院。プライベートでは2児の母として忙しい毎日を送っている。
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