コラム

矯正治療中のデメリット
「むし歯になりやすい」予防の対策とは?

一般的に矯正治療中は、装置を装着している関係でむし歯になりやすい傾向があります。

取り外しの利かない装置ですと、どうしても磨きにくい箇所が出てきてしまいますからね。日々のメンテナンスとの観点から、むし歯予防についていくつかお伝えいたします。

歯磨きについては、改めてお伝えしなくても大丈夫ですね。大切なのはご存じの通りです。しかし歯磨き粉や洗口液の爽快感から、ついついやった気になってしまうことも多いものです。お子様ですとついつい眠気が勝ってしまうこともありますね。

自己流にならず、正しい歯磨きの仕方を歯医者さんで実際に教えてもらってください。矯正治療をされなくても、定期的な健診はお口の健康に必要な習慣です。

ぜひ、かかりつけの「歯科」をご検討ください。

目次

    唾液とむし歯のメカニズム

    むし歯は「ミュータンス菌」を代表とする口内細菌がそのきっかけを作ります。これらの菌は、食事などで取り込まれた糖質を発酵させて酸を作り出します。この酸によってお口の中が酸性となり、歯の成分が溶かされてしまった状態が「むし歯」とよばれるものです。

    「…だったら何でむし歯は黒いんだ?」と思われた方はいらっしゃいますでしょうか?溶けただけなら黒くはなりません。むし歯が黒くなるのには理由があるのですが、ここでは割愛いたします。より重要なのはこちらです。

    「白く見えるむし歯」があるということです。こどものむし歯に多いことを、親御様はご記憶ください。仕上げ磨きなどでお子様のむし歯の有無をチェックされる親御様も多いと思います。むし歯は黒いものと先入観を持つと、これを見逃してしまいます。

    よく見ると白い斑点のようになっていたり、周りの歯と比べて濁った白色をしていたりします。「白いむし歯」、こちらはお気を付けください。

    さて糖質の摂取によって酸性状態に傾いた口内は、唾液の緩衝能(かんしょうのう)という機能によって、「徐々に」本来の中性(歯を溶かさないpH値)に戻っていきます。緩衝能には人それぞれ強弱があって、一概にどれくらいで中性に戻るともいえませんが、歯磨きの有無に関わらず、少なくともすぐには戻りません。

    しかし糖質の摂取によって酸性になるのは、あっという間です。

    むし歯予防で、最も考えるべきことは「お口の酸性状態を極力作らない生活習慣」となります。

    ステファンカーブ

    そのためにイメージしていただきたいのが次の図です。グラフのようなラインをステファンカーブといいます。

    この図は、糖質の摂取によってお口の中が酸性になる。そして唾液の循環によって中性に戻るを視覚化しています。大切なのは歯が溶け始めるpH値5.5のラインです。

    • 食べる時、食べない時のメリハリがあるのが水色のグラフ
    • だらだらと食べ続けているのが紫色のグラフ
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    これは食べ物に限りません。問題は糖質です。常に甘い飲み物を横に置いて、パソコン仕事などはよくある光景です。「でも1日に何回も歯を磨いているよ。」という方、少々誤解があります。

    紫色のグラフでは、お口の中は、ほぼ常時歯が溶けてしまうpH値にありますね。しかし歯磨きをしたとしてもすぐには中性に戻りません。

    この酸性状態は、唾液の循環によって徐々に中性へ戻っていきます。徐々に戻る過程で、新しい糖質が供給され、またすぐに酸性度が高くなるということになります。

    おかしな話ではありますが、歯磨きは1日1回でも水色のグラフのような生活習慣を心掛けた方が、むし歯予防としては効果的です。もちろん、歯磨きはたいして重要ではないというお話しではないのは、言うまでもありません。

    となりますので、次のようなことが日常生活で起こりえます。

    1. 仕事中でもまめに歯磨きをしているが、常に甘い飲み物やおやつをお供にデスクに向かっている。
    2. 仕事中に歯磨きの習慣はないが、仕事中の飲み物は水やお茶で、食事時以外には糖質は取る機会がない。

    となると、状況としてはむし歯のリスクは①の方が高くなります。

    ここに個々の緩衝能の強弱の要素が加わりますと、気を付けているようには見えないのに何でだかむし歯にならない人と、気を付けているつもりなのに何でだかむし歯になってしまう人が出てきます。

    最近ではむし歯のリスク検査も行える歯医者さんは多いです。ご自身のむし歯リスクを知っておくことも大切ですね。ただし、これらはあくまでむし歯のお話しになります。歯周病予防・口臭予防の観点では、歯磨きは大切な習慣になります。結局は歯磨きも大切との結論が変わるものではないんですね。

    まだできるむし歯対策

    広くいわれています「フッ素」「シーラント」もむし歯予防には有効な対策です。ここでは、その他の対策について、ポイントを押さえてまいりましょう。


    • 「キシリトール」

    キシリトールは口内を酸性にしにくい甘味料で、むし歯菌の活性を抑えてくれます。またガムなどを口にすることで唾液の分泌も促され、口内を中性に戻したり、歯の再石灰化を促す助けにもなります。

    ただし、どの商品でもよいわけでもありません。市販のキシリトール含有商品は、キシリトール含有率が約50%~60%である場合が多いです。市販品が決してダメなわけではありませんが、キシリトールの推奨される摂取量は5~10グラム程度とされています。こちらを頭の片隅に入れられてください。歯科専用のキシリトールですと含有率100%のものがあります。

    含有率の計算式は【キシリトール(グラム)÷炭水化物(グラム)×100】です。

    また、せっかくのキシリトール商品に糖類が入っていますと本末転倒です。シュガーレスや糖類ゼロの表示されているものがベターです。

    ※矯正治療中はガムは食べられませんのでご注意ください。


    • 「就寝前の飲食」

    就寝中はただでさえ唾液の分泌が減ります。就寝前の飲食は、口内が中性に戻るまでの時間を伸ばしてしまいます。結果として、口内が酸性である時間が長くなりますね。

    歯磨きをしてもすぐには中性に戻らないことをご注意ください。唾液の循環によって口内の酸性状態は中和されていきます。就寝前の飲食は控えた方がよいですね。


    • 「唾液の性状」

    唾液の緩衝能には強弱があり、人それぞれです。しかし一時的に唾液の性状はパワーアップさせることができます。唾液腺をマッサージして刺激を与えることで刺激唾液という緩衝能に優れた唾液が分泌されます。

    この唾液腺のマッサージはクリニックでお伝えしますね。歯ぐきやほっぺをマッサージして、何となく刺激を与えるだけでもある程度は効果ありです。

    また当院の歯周病対策としてお伝えしている歯磨き法(歯茎固め/自費診療)は、唾液の性状も変えることができます。歯周病予防とともに、むし歯予防にも効果的といえる対策になります。(ただしごめんなさい、お子様向けではないです。)


    これらのキーワードを意識して、よりむし歯に強いお口に育ててください。

    まとめ

    口内細菌が糖質をもとに口内を酸性にすることが「むし歯の原因」となります。そして唾液の働きによって、酸性状態は中和されていきます。

    一方で、飲み物などのそのものによって、口内が一定のpH値を超えた酸性になっても歯は溶け始めます。某炭酸飲料やそれこそお酢などは、むし歯菌に関わらず歯を溶かします。小さなお子様は食事を吐き戻してしまうことも多いですよね。胃酸も歯を溶かすには十分な酸性度を持っているとご記憶ください。

    むし歯予防は「歯磨き!」は決して間違いではありませんが、「ステファンカーブ」をどう自分なりに作っていくか。その習慣がより大切です。

    繰り返しになりますが「だったら歯磨きはそんなにしなくてもいいんだ。」はNGです。歯周病予防との観点からは、歯磨きという習慣は欠かせません。むし歯とともに、矯正治療中は歯周病にもなりやすい傾向があります。

    歯に関わる疾患として、歯周病はむし歯以上に要注意です。歯周病は大人の話と思われている空気感がありますが、世界で一番多い感染症といわれる通り、お子様にとっても無縁のものではないことを覚えてくださいね。

    現実として、歯周病のお子様は少なくありません。

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    こどもの矯正とRAMPA(ランパ)セラピーの5つのポイント

    • 1 舌が正しい位置に付かなくなってくるのは、乳幼児期からの様々な生活習慣の積み重ね。特に近年は赤ちゃん期の首周りの筋緊張による影響が大きい。
    • 2 歯並びの問題も含め、最重要ポイントになるのが「舌が正しい位置(上顎につく位置)にあること」、もしくは「きちんとした鼻呼吸が出来ること」
    • 3 ある程度の年齢に達し日常化したこどもの口呼吸を鼻呼吸に変えるには、すでに骨格的なアプローチが必要な段階になっている場合が多い。
    • 4 呼吸と歯並びの問題は密接な関係にあることの理解が必要。ランパセラピーの視点から見れば歯列の矯正だけで完結する問題は決して多くはない。
    • 5 矯正治療でまず考えるべき目的は「歯並びを整える」なのか?「歯がきれいに生え揃うお口に整える」なのか?

    当院では必要のない治療をおすすめすることはありません。

    どの治療、どのクリニックを選ばれるかは矯正治療の入り口であり、最も大切なことです。ご選択にあたり、そのご負担は大きいところと存じますが、お子様の将来に関わることとして、今ひと時のリサーチをお願いいたします。ぜひ複数のクリニックでお話しを伺ってください。ご家庭で話し合われてください。その結果による「矯正治療に対するご判断」がご家庭ごとの最適解と当院は思います。当院から精一杯お伝えさせていただくならば、「ランパセラピーが必要」と感じられるお子様は少なくございません。

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    この記事を監修した人
    こどもと女性の歯科クリニック
    院長 岡井有子

    看護師として京都市内の産婦人科勤務を経て、大阪歯科大学に入学。同大学大学院歯学研究科で小児歯科学を学ぶ。2017年、港区に「こどもと女性の歯科クリニック」開院。プライベートでは2児の母として忙しい毎日を送っている。

    こどもの矯正とRAMPA(ランパ)セラピー

    こどもと女性の歯科クリニック

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