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ランパセラピーのデメリットは?矯正治療中の注意点とお約束について
はじめに
基本的にランパセラピーをご理解いただき、治療に向き合っていただけましたらデメリットという言葉で説明することはございません。健全な成長がこの治療の過程と目的であることがその大きな理由です。ただしこれはランパセラピーの過程で「何かしらの重大な悪影響の恐れがある。」との意味でご理解ください。
矯正相談や検査では、お子様の状態、治療の説明とその効果の見込み、通院や費用のご負担などありのままをお話しいたします。その中には、ご家庭ならではのデメリットと感じられる部分もあるかもしれません。ぜひお話しの中でご判断ください。結論を急ぐ必要はありません。
ランパセラピーではお子様の成長に寄り添う形で治療を行ってまいります。思いのほか、長期間にわたる治療になるかもしれません。矯正治療は長期的なライフスタイルまで視野に入れてご検討ください。
RAMPAと一般的な矯正治療との違い
歯並びが悪くなるのには原因があります。RAMPAでは、その原因と考える骨格にアプローチをします。骨格を整えたのち、つまり歯が生える土台を整えたのちに、歯列を整える過程へと移行します。
RAMPAの役割の中心は歯列ではなく、歯がきちんと生えてこられるように「まず土台を整える」ということなんですね。ポイントは、
- 原因(骨格の発達の問題)にアプローチをするのか?
- いま目に見えている症状(歯並びの悪さ)にアプローチをするのか?
となります。
RAMPAの主目的は骨格の成長不良によって導かれた諸症状の改善となります。この諸症状の中に歯並びが悪くなるも含まれるとのお話しなんですね。審美を主目的とされるならば、RAMPAは必ずしもご希望を叶えられる治療ではないかもしれません。
当院として、RAMPAでお伝えしていることに当てはまるお子様たちの未来を考えたとき、原因が骨格にあるとの推測がありながら、歯列を整えるために行う矯正治療のご提案はできませんことは何卒ご理解ください。RAMPAを押し付けるようなこともいたしません。ぜひお考えになられてみてください。
治療の詳細については下リンクをはじめ、他コラムもご覧ください。
RAMPA(ランパ)セラピーとは歯並びが悪くなる原因の根本的な解消を目指し、歯がきれいに生えるような土台に整え直そうという治療になります。
当サイト内では治療に関する記述では「ランパセラピー」、器具・システムに関する記述では「RAMPA」と表記しております。
ランパセラピーについて、まだ知らない方や先に知っておきたい方は下リンクからどうぞ。
ランパセラピーについては主に以下のお約束(ご負担)があります。デメリットと言い換えてもよい部分かもしれませんが、ぜひ前向きにとらえてください。
装置の装着時間など一つ一つのお約束には目的があります。お守りいただけませんと効果は著しく減少します。ご不安な点は必ずご相談ください。またお子様の年齢や症状、ライフスタイルによってもその過程は変わります。あくまで目安としてご理解ください。
装置装着時間のお約束
矯正治療自体は通常約2~3年かかりますが、最も大変な期間が口腔外装置(RAMPA)装着期間の約90日×2~3クールです。
この期間はRAMPAの装着が年齢によって、1日の内10~15時間必要です。適齢期としている5才~12才のお子様ですと10~12時間が目安となります。一日の装着時間は連続でなくても大丈夫です。寝る時間+αとお考えください。
まずは率直に思われることですが、「これつけて寝られるんですか??」とのご質問をいただきます。
親御様の心配をよそに、多くのこどもたちは問題なく寝てしまいます。私自身も試していますが、ふつうに寝られました。
矯正装置自体の違和感や痛みは、どの矯正治療でも程度の差こそあれ、慣れるまでは感じることが多いです。矯正治療の最初のステップは「装置に慣れる」から始まります。
治療上、装置の構造は変えられませんが、皆さん好きなデコレーションをされています。
努力を楽しむ。その発想は です。
2週間に1回程度の通院のお約束
装置の調整に必ず必要です。ランパセラピーでは、通院のご負担は多くの方に当てはまる懸念事項ですが、どうか未来への価値観を持ってご理解ください。
スタートしてまだ慣れないうちは違和感や痛みがあったり、装置が外れたりと頻回の通院が必要になることもあります。通院のご負担は特にデメリットといえるかもしれません。
通院のご負担に大きく関わることですが、RAMPAを取り扱えるクリニックは非常に少数です。その中でもRAMPAを専門的に扱うクリニックは全国でも数えるほどしかありません。
誤解のないようにお伝えいたしますが、RAMPAを扱っていることは矯正治療のスペシャリストを意味するものではありません。一般的な矯正治療とは様々な点で異なる治療なのです。矯正の専門医、認定医であってもRAMPAを扱えるわけではありません。
もちろん当院にむし歯治療で来られる方、予防で来られる方などで患者様の分け隔てはありませんが、こと矯正治療においては、「ランパセラピーを必要とされるこどもたちのためのクリニックでありたい。限りある力ならばランパセラピーに全力を注ぎたい。」そう考えております。
RAMPAのクリニックはどうやって選ぶ?
いずれも正確な数は分かりませんが、そもそもの全国の歯科診療所数が67000~68000件程度、その中でRAMPAの取り扱いを掲げているのが150~200件程度とされています。ざっくり計算しても全体数の0.3%程度となります。さらに専門医院となりますと圧倒的に少なくなるのはお伝えした通りです。
RAMPAの話を聞いてみたいと思われても、この時点で、すでにハードルは低くはないですね。これらはRAMPAの大きな課題の一つになりますが、とはいえ現状、その中からどうやってクリニックを選んだらよいでしょうか?
そこで最も大切になるのが、クリニックやRAMPAの方針を理解でき、信頼関係が築けるかどうかです。RAMPAに限らず矯正治療は基本的に長期にわたる治療になります。成長等も関わりますので、予定通り進まないことも多くあります。
コミュニケーションをしっかりと取り、クリニックとのお約束は守らねばなりません。無論、クリニックとしては真摯に向き合わなくてはなりません。治療を可能な限り順調に進めるには、信頼関係は非常に大切です。
さて現実的なお話しをいたしますが、こちらは何かを否定する意図ではないことはご理解ください。
まず矯正専門医・認定医の資格はRAMPAには当てはまりません。これらは一般的な矯正治療に関する資格であり、学会独自の認定要件に則った資格ですので、一定レベルの意義はありますが、少なくともRAMPAには当てはまりません。
となると、患者様が検討するのに、一番参考になるのは症例数とその内容になりますでしょうか。しかし、医療では制約があり、症例数〇〇件や患者様の声のような記載はできません。直接、ご相談へと足を運ばれ、伺ってみてください。
クリニック間で比較するものではないので、当院の症例数が多いか少ないかは正直分かりません。ただRAMPAでは、歯列のみならず、舌位・頭位・姿勢や副鼻腔・気道の通気性など、従来の矯正治療の枠を超えたアプローチを目指しています。
重ねた症例数に基づく、独特のスキルや判断が必要になってきます。ですので症例数が大きな判断基準となるわけです。
また、可能であれば、RAMPAでお伝えしていることの結果となる症例(気道や副鼻腔の拡大・骨格の変化等)を実際に見せていただけたら、ご検討の大きな材料になると思います。
RAMPAをご検討されるならば、その主目的である鼻腔や気道の変化、骨格の変化等を重要視されてください。歯並びはむしろ副産物です。ぜひクリニックで症例を見せていただき、その変化をお子様に投影されてみてください。
※患者様によっては、院内資料でしたら公開の許可をいただいている場合があります。下資料は5才8カ月でRAMPAを始められたお子様の治療前とRAMPA開始後約6カ月経過時の鼻腔の容積の変化です。
RAMPAのクリニックはなぜ少ない?
まずこちらは個人的な私見であることをお断りさせていただきます。RAMPAはこれからの発展の可能性も含め、矯正治療の選択肢として有意義な治療法だと、当院では考えています。だからこそ、当院の矯正治療ではRAMPAしか扱いません。
しかし「RAMPAのクリニックって、なんでこんなに少ないの??」とご質問をいただくことがあります。踏み込んだご意見ですと「ほんとに良い治療ならもっと広がっているはずだと思うんですが…」といただくこともあります。その通りだと思います。それらの理由については大きく2点あると考えています。
- 既存の矯正治療とは全く異なること
- 歯科医師・患者様ともに負担が大きいこと
先ほどもお伝えしたように、RAMPAでは歯列・舌位・頭位・姿勢や副鼻腔・気道の通気性など、総合的なアプローチが必要です。多くの先生方が学んだ「矯正治療」の知見やスキルとは大きく異なります。従来の矯正治療の延長線上にRAMPAがあるのではないんですね。
RAMPAを扱うのであれば、それらを改めて学ばなくてはなりません。しかし先生ごとに歯科の道を進むにあたり、それぞれの治療方針には自負があるはずです。それを一旦は胸にしまわなければ、RAMPAは学べないんですね。
ですので私個人としては、RAMPAの理念に共感し、この術式をやっていくのであれば、他の矯正はできないと考えたわけです。従来の矯正治療にも意義はあり、否定をするべきものではありませんが、当院はそれを選びませんでした。それらには専門医や認定医をはじめ、上手な先生方は大勢いらっしゃいますので。
少しずつとはいえ、RAMPAの認知は広がっています。一般的な矯正とランパセラピーでは考え方が全く異なるのに、「なぜ同じクリニックで扱えるのか?」との問い合わせもいただき、患者様のリサーチ力に驚くことも増えました。
またRAMPAは患者様の負担も大きいですが、治療をする側の負担も大きいです。ここには、治療期間の長さやRAMPA独特の知見やスキルの習得などのほかに、経営的な意味合いも含まれます。
この対極にあるのが、近年のマウスピース矯正です。読まれる方には不快な思いをさせてしまうかもしれませんが、治療の理解や費用の負担の大きいRAMPAは患者様にとってもハードルは低くありません。かといって必要な技工物の費用だけとっても、RAMPAは他の矯正治療の数倍です。経営的にいうと原価率が高い治療ともいえます。
総合的にクリニック側の負担が大きく、経営的な合理性が低いとなってしまうのです。
転院について
お引越しなどで当院への通院が困難となった場合、治療の継続については信頼のおけるクリニックをご紹介させていただきます。しかしお引越し先によっては、通院のご負担が増えることや通院先が見当たらないことなども考えられます。
特にグローバルに活躍されている親御様では、海外にRAMPAの取り扱いがあるクリニックはほぼございません。
先々の転勤のご予定などで治療を躊躇される親御様もいらっしゃると思います。しかしお子様の将来に関わることです。RAMPAの必要性を感じていながら、あきらめるのもつらいご判断かと思います。
ぜひ長期的なライフスタイルまで含め、ご不安はお話しください。治療である以上、無責任なご提案はできませんが、解決策は模索してまいりましょう。
費用負担増
ランパセラピーでは費用の負担が大きくなりますが、一期矯正・二期矯正との考え方はありません。
他の小児矯正と費用比較する場合は、一期矯正と二期矯正を考慮に入れてご検討されてください。小児の一期矯正と永久歯の二期矯正では目的が異なります。多くの場合、一期矯正で矯正治療が終わることは、そうあることではありません。
顎顔面口腔育成療法にかかる主な費用(税込)は以下になります。
- バイオブロックセラピー 99万円
- ランパセラピー 143万円
- 別途調整料 5,500円/月 ※内容により異なる場合があります。
その他、追加装置や装置の破損・紛失時などの費用が発生する場合がございます。
TOPIX
2024年4月現在、現行のRAMPAフレームを改良し、治療をより効果的・効率的にする「ヘルメットタイプ」のRAMPAを試験的に運用しております。お子様の骨格を3Dスキャナーでデータ化し、よりお子様に合わせた次世代のRAMPAとなっています。
ご希望のご家庭にはご提供を始めておりますが、まだ装置の製作数も限られ、追加費用のご負担(+16.5万円程度)もお願いすることになります。この装置は開発者である三谷医師の吉祥寺こども診療室他、全国でも数院のみでの取り扱いとなります。
まとめ
ランパセラピーでは治療の過程で一時的に「出っ歯」や「すきっ歯」に見えるような段階があります。広く矯正治療で描くイメージとは異なるので、ご不安になると思います。
これは顎を整える過程での想定内の経過ですのでご安心ください。最終的には歯並びは整います。治療に懸念点がある場合はお話しをいたします。
しかし例え一時期とはいえ、お子様にとっては大きなことかもしれません。ご検討の上で大切な要素ですのでお伝えをさせていただきます。
補足をいたします。
- 装置装着時は、どうしても歯磨きがやりにくくなります。むし歯予防や歯周病予防の観点から、より丁寧な歯磨きを心掛ける必要があります。
- ランパセラピーは骨に関わる治療ですので、一定の効果を期待するためには、年齢的にある程度のリミットがあります。装置装着のお約束もありますので、治療の是非についてはご家庭で共有されてください。
- RAMPAの装置には厚みがありますので、アデノイドの肥大などがあるお子様では、一時的にいびきや睡眠時無呼吸がみられる場合があります。既往歴などは必ずお伝えください。
ご不安がございましたらぜひお話しください。
当院にはRAMPA仲間もたくさんいます。機会があればお話しもされてみてください。メリットであれデメリットであれ、貴重な体験談にもなるはずです。
当院からのお願い
上記のお約束をがんばったこどもたちの大多数には、よりよい変化が見られています。
しかし、身体のことである以上、結果のお約束はできませんことはご承知おきください。成長の個人差もございます。目標は、当院とご家庭の取り組みによって届きうる最大限の結果とのご理解をお願いいたします。
当然ながら、結果をお約束できない以上、費用も含めた様々なご負担と治療の結果が見合うのか?との懸念はあることと存じます。
特に歯並びに関しては、RAMPAでも一定程度までは改善しますが、あくまで土台を整えた中での自然な歯並びまでがゴールになります。
ご家庭ごとの価値観はもちろんあることと存じますが、RAMPAでは歯並びよりも大事なことがあるとのスタンスで取り組んでいます。その点でいえば、RAMPAを矯正治療と銘打つことに少々の違和感があるのは率直な想いです。
ぜひお子様を含めご家庭で話し合われ、ゆっくりお考えください。少々後ろ向きなお話しをいたしましたが、大切なお伝えになります、何卒ご容赦ください。
無論、目標は届くべく努力を持って意味のあるものとなります。目標に向かって、当院としても可能な限りのサポートをさせていただきます。未来に向けて、一歩ずつ楽しく進んでまいりましょう。
こどもの矯正とRAMPA(ランパ)セラピーの5つのポイント
- 1 舌が正しい位置に付かなくなってくるのは、主に赤ちゃん時代からの様々な生活習慣の積み重ね。特に近年は赤ちゃんの首周りの筋緊張による影響が大きい。
- 2 歯並びの問題も含め、最重要ポイントになるのが「舌が正しい位置(上顎につく位置)にあること」、もしくは「きちんとした鼻呼吸が出来ること」
- 3 ある程度の年齢に達し日常化したこどもの口呼吸を鼻呼吸に変えるには、すでに骨格的なアプローチが必要な段階になっている場合が多い。
- 4 呼吸と歯並びの問題は密接な関係にあることの理解が必要。ランパセラピーの視点から見れば歯列の矯正だけで完結する問題は決して多くはない。
- 5 矯正治療でまず考えるべき目的は「歯並びを整える」なのか?「歯がきれいに生え揃うお口に整える」なのか?
当院では必要のない治療をおすすめすることはありません。
当院・他院に限らず、ホームページ等で記載がされている、「〇〇の原因」や「〇〇を改善するためには?」などは最終的に一つの答えに収束するものではありません。クリニックごとの考えの優先度・重要度などにより記載が異なってまいります。実際には患者様それぞれに答えはいくつもございます。
どの治療、どのクリニックを選ばれるかは矯正治療の入り口であり、最も大切なことです。ご選択にあたり、ご家庭の負担は大きいところと存じますが、お子様の将来に関わることとして今ひと時のリサーチをお願いいたします。その結果による「矯正治療に対するご判断」がご家庭ごとの答えと存じます。当院から精一杯お伝えさせていただくならば「ランパセラピーが必要」と感じられるお子様は少なくございません。
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この記事を監修した人
こどもと女性の歯科クリニック
院長 岡井有子
看護師として京都市内の産婦人科勤務を経て、大阪歯科大学に入学。同大学大学院歯学研究科で小児歯科学を学ぶ。2017年、港区に「こどもと女性の歯科クリニック」開院。プライベートでは2児の母として忙しい毎日を送っている。
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