コラム

【もっと】小児矯正って必要な治療?
こどもの歯科矯正で失敗をしないためには

はじめに

小児矯正を検討するなかで、「こどもの矯正って意味あるのかなぁ…」と、ふと思いませんか。ご不安かと思います。

調べれば調べるほど、ネガティブな体験談も目に入ります。しかし、その体験談のご家庭と、これをお読みの方のご家庭では、お子様の状態やご家庭の環境など、そのほとんどは異なります。過度に気にする必要はありません。

「小児矯正だからこそ、大きな意味がある」と当院では考えています。

当院のこの考えの源流は、「RAMPA(ランパ)セラピー」の存在です。この存在がなければ、もしかしたら違う考えを持っていたかもしれません。開業さえしていなかったかもしれませんね。

RAMPA(ランパ)セラピーとは、歯並びが悪くなる原因の根本的な解消を目指し、歯がきれいに生えるような土台に整え直そうという治療になります。

ランパセラピーについて、まだ知らない方や先に知っておきたい方は、下リンクからどうぞ。

ランパセラピーのポイント

歯並びが悪くなる原因は、いくつかの呼吸器や耳鼻の疾患と共通原因となっている場合があります。そしてその要因には、赤ちゃん期からの成長過程が大きく関わります。

下図は2023年に小児耳鼻咽喉科学会にてRAMPAの発表をさせていただいたものです。図の右上・左下の鼻腔に関する計測写真をご覧いただけたら結構です。RAMPAで重要となる上顎骨は鼻にも関わる骨です。鼻副鼻腔の容積等が変化するということは、上顎骨が変化しているということになります。上顎骨には上の歯が生えていますよね。

RAMPAで考える歯並びが悪くなる原因は、「正しいとはいえない骨格の成長」であり、より健全な骨格への成長誘導から矯正治療にアプローチしています。

小児耳鼻咽喉科学会
目次

    小児矯正

    それではいわゆる矯正治療。「歯列矯正」との視点でしたら、どうでしょうか?一期矯正が必要・不必要で歯科医師の意見があるのは、それぞれの考え方や扱っている治療によります。

    とはいえ小児矯正はそう必要ないという意見もあるなかで、どうせ永久歯に生え変わるのに、こどもの矯正って高い費用かけてやる意味あるの?とは思われますよね。ごく当然のお考えです。

    まずは小児矯正の意味をご理解いただかなくてはいけません。多くの場合、大人の矯正治療のように歯並びをきれいに整えることは、小児の矯正治療では大きな目的とはなっていないんですね。

    仰られる通り、乳歯列・混合歯列期に歯並びを整えても、いずれサイズの大きな永久歯に生え変わります。仮に一旦きれいに整えたとしても、成長によってそのバランスは変化していきます。小児の時期の歯列には隙間があった方がよい。顎の成長が終わってから矯正に取り組んだ方がよいとのお話しはそのような理屈になります。

    しかし、必ずしもすべてのお子様が、二期矯正からでも十分な結果が見込めるとは限りません。

    お子様が多感な時期を迎えられるその前に、なるべく負担の少ない二期矯正となるための準備が、小児矯正(一期矯正)の大きな目的となります。具体的には永久歯が生えてきても、きちんと歯が並ぶスペースをつくることを目的とされる場合が多いですね。

    ここで大切になるのが、歯並びが悪くなることは、日々の生活習慣が大きく関わっていることです。一度悪くなり始めた歯並びが、顎の成長に伴ってよくなっていくことは、そうあることではありません。

    現実的には、その生活習慣をよっぽど気を付けられなければ、おそらく悪いなりの歯並びを維持することさえ難しいことです。端的にいえば、悪くなる一方ということになります。かといって、どの時期から始めても、矯正治療の負担や結果は同じとはなりません。

    小児矯正の必要性の是非はともかく、早くからの歯科との共有がまずは大切です。

    「矯正治療は永久歯に生え変わってからでもいいんじゃない?」は理解ができる考えではあります。しかしそれには「二期矯正」からでも十分に対応ができるお口は維持できていること、もしかしたら「一期矯正」から始めていた方がその負担が少なかったかもしれないこと等のご理解は必要になります。

    小児矯正(一期矯正)の意味がある方もいれば、二期矯正からでも十分という方もいます。一概にいえるものはありませんので、そのご判断は歯科医師とのお話しの中で決められてください。

    また矯正治療も日々の積み重ねになります。装置の取り外しができる、お口のトレーニングが必要などのことは、思いのほか患者様の意識が必要になります。案外、ハードルを高くしてしまうことが多くありますので、ご留意ください。

    まずは矯正相談の前に

    では、少々耳の痛いお話しかもしれませんが、せっかく小児矯正をされたのに「意味がなかった」との場合はどうでしょうか?いわゆる「失敗」とされるものです。

    有難いことですが、当院にお越しになられる親御様では、皆さま矯正治療に一生懸命に向き合い、取り組まれています。そのような親御様から受け取れる考え方から学ぶことは多いです。

    ご家庭なりの考えや方針を持たれるのは大切なことですが、まずはそのための「知識」ですね。親御様には、矯正治療のリサーチを可能な範囲でも結構ですのでお願いいたします。

    「考えや方針」=「先入観や人から聞いた話」では、正しいとはいえない道しるべとなりかねません。

    その結果、いろいろ見たけど「よく分からなかった」でも、ご相談をされる理由には十分です。知識量が増えたので「よく分からない」となったのです。その疑問もぜひ矯正相談へとお持ちください。

    矯正治療での失敗を避けるための大切な最初の一歩となります。

    お子様のためを思えばこそのお悩みです。多くの情報のなかで、何がいいのか分からなくなると思います。

    しかし、「何がいいのか?」のご判断は、実際に歯科での相談を経なければ、おそらくその多くは難しいことです。

    小児矯正13

    だからといって、リサーチを省略し、真っ白な状態でご相談されますと、時間はあっという間になくなり、せっかく行ったのによく分からなかったとの結果になりかねません。またクリニックに言われるがままとの事態にもなりかねません。

    治療においては、ご家庭の「納得」の過程は必ず必要です。お子様の状態や矯正治療についての十分なご理解を、限られた時間内で行うのは少々難しいかと思います。

    貴重なお時間です。可能な限り知識を増やし、矯正相談の際には具体的に何を相談しようのイメージを持たれることがまずは大切です。結果として、親御様が視野を広く持ってご判断がすることができます。

    親御様とクリニックの間で矯正治療のゴールのイメージ、その過程でのリスクやお約束などの共有ができていれば、失敗といわれるものの多くは減らせるはずです。

    そのうえで、ご家庭なりの方針や、それを任せられるクリニックなどを決められてください。

    小児矯正にはご本人・ご家庭・クリニックのチームで行う治療であることのご理解が大切です。ご家庭としても、分からないことがあれば遠慮なくお話しをしてください。時間が足りなければ、ご納得されるまで相談されてよいと思います。

    RAMPAは審美のための矯正治療ではありません。テレビに出られている方々のような、ともすれば出来過ぎの歯並びは、RAMPAとその後の歯列矯正だけではかないませんことはお伝えをさせていただきます。

    そのうえでお話ししても、一般的な矯正歯科で「見た目」を理由に矯正を勧めることは、そう多いことではないと思います。見た目に対して、お子様や親御様が大きく気にならないのであれば、その必要性も大きくはないですしね。

    とはいえ歯並びの悪さは、お子様によっては性格等にも影響する心因的な要因ともなります。ご本人の理解に関わらず、まわりがその評価をしてしまうこともあります。海外在住の知人に聞きましたが「肥満」や「歯並びが悪い」などは、自己管理ができていないとされる空気は現実としてあるようです。

    個人的に矯正治療に関しての一番の失敗は、行動ができなかった「後悔」ではないかなと思います。矯正治療に対して、投資に近い考え方をされる親御様もいらっしゃいます。投資の中でのリスクとは、「リスク」という言葉が持つイメージとは異なるそうです。

    お子様の将来的なQOLが、矯正治療の是非によって、またRAMPAの是非によって、どのくらい振れ幅が出てくるのか?お子様の未来に想いを馳せてみてください。

    そのうえで矯正治療の是非をご判断をお願いします。

    こどもの矯正を意味あるものにする

    「小児矯正って意味ないのですか?」とのご質問をいただくことがあります。「結局、後戻りをする」や「いつまでたっても変わらない」などの体験談にこのような意見を見かけるそうです。

    その体験談にあるお子様の状態・治療方法・ご家庭の希望などの詳細が分かりませんので、それらに対しては具体的な何かを申すことはできません。

    小児矯正11

    確かに歯科医師であれば誰でも、矯正治療を手掛けられることは事実です。医師側の力不足や説明不足によるケースもあると思います。

    ぜひ通いやすいや安価よりも、クリニックとの信頼関係が築けそうかどうかを大切にされてください。ここの優先順位をどう取るかで「小児矯正って意味ない…」となる可能性はおそらく変わります。

    一方で患者様の責任に帰してしまうケースもあります。矯正治療を意味のあるものにするには、患者様側の自己管理や定期的な通院、医師との約束を守るなどのご負担はどうしても生じます。こちらも改めてご理解ください。

    あきらめないでください

    RAMPAでは、歯並びが悪くなる主な原因は「中顔面の劣成長」とお伝えしています。そしてこの劣成長の主な要因は「口呼吸」となります。つまり「中顔面の劣成長」と聞くと大げさな…かもしれませんが、その主な要因が口呼吸である以上、実はどのお子様にも起こりえることなのです。

    ということは、せっかく矯正治療で歯並びを整えたとしても、口呼吸が改善されていなければ、一定割合のお子様にはまだ「歯並びが悪くなる原因」が残っているということになります。ましてや鼻の通りが悪いとなると、歯並びがどうあろうと口呼吸を改善することはできません。結果として高い確率で「後戻り」となります。

    抜歯が必要になるかもしれません。大変になるかもしれませんが、歯列矯正はある程度は大人からでも可能です。しかし骨格(中顔面の劣成長)は、そうはいきません。RAMPAの治療対象が中顔面の劣成長です。お子様の矯正治療では、歯並びとともに呼吸にも目を向けられてください。

    歯列の問題だけならば上手な先生方が大勢いらっしゃいます。しかし、RAMPAでできることは一般的な矯正治療ではできません。特にお子様の呼吸に関してのお悩みには、RAMPAという可能性があります。あきらめないでください。

    まとめ

    クリニックとご家庭の連携がとれ、適切な治療がなされていれば、「意味がない」の言葉はそう出るものではないと思いますが、実際にその言葉があることを歯科医師も真摯に受け止めねばなりません。特に小児の矯正治療で、治療の理解より先に、お手軽さや負担の少なさを謳うのはどうかと思います。

    「なるべく負担が少なく」は大切なことですが、お手軽な治療というものはございません。そうはいっても、「頑張る」にも限りがあります。

    基本的に矯正治療は長期にわたる治療です。過剰に頑張らなくてはならないことのない環境とマインド作りが大切です。

    いわゆる矯正の失敗を避けるためには、リサーチから始まる親御様の熱量と、お子様を導いてあげられるご家庭の取り組みが重要になりますことを、治療前に今一度ご理解ください。無論、歯科としても同様になりますが、お子様にとっての親御様にはかないません。ご家庭では親御様が主治医となってあげてください。

    親身に考えてくれるクリニックでは、きちんと先生の口から説明をしてくれたり、十分な検査をしてくれたり、検査資料もいただけたりと見極める要素はいくつかあります。細かい部分の治療の良し悪しまでは分からないかもしれませんが、お話しをする中での相性などは無視できないかもしれませんね。

    いずれにしても親御様が実際にクリニックへと足を運ばれ、自分なりの「知識」を「考え方」へと変換することが大切です。

    ぜひお子様の学校を選ぶことと同様に、矯正方法や歯科クリニックをお考えください。同じ子を持つ親として、また歯科医師として、そして未来に関わることとして、同じくらい大切なことだと思います。

    無論、私たち歯科クリニックも襟を正さなくてはなりません。

    当院は、矯正治療においてランパセラピー専門医院です。どうしても「RAMPAでは…」のような記載が多くなってしまい、そのことをよく思われない方もいらっしゃると思います。RAMPAでお伝えしていることがすべての方に当てはまるわけではないのも、その通りになります。

    私どもが、親御様のお話しを伺うなかで、複雑な思いになる瞬間がいくつかあります。「もっと早くから行動すればよかった。」や「もっともっとリサーチすればよかった。」などがそうです。

    医療従事者として、可能な限りよくしてあげたい想いはありますが、結果との乖離に心を痛めることも、率直にございます。

    歯並びが悪くなり始めていることは、すでに原因があり、症状として顕在化している段階になります。とはいえ、必ず前段階があったはずです。

    普段、お仕事をされる中でも、リスクマネジメントなどどいわれます。医療の考え方でも大切なことになります。ぜひ何ともないうちから、かかりつけ医を見つけられ、お子様の成長を医科・歯科と共有されてください。

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    こどもの矯正とRAMPA(ランパ)セラピーの5つのポイント

    • 1 舌が正しい位置に付かなくなってくるのは、乳幼児期からの様々な生活習慣の積み重ね。特に近年は赤ちゃん期の首周りの筋緊張による影響が大きい。
    • 2 歯並びの問題も含め、最重要ポイントになるのが「舌が正しい位置(上顎につく位置)にあること」、もしくは「きちんとした鼻呼吸が出来ること」
    • 3 ある程度の年齢に達し日常化したこどもの口呼吸を鼻呼吸に変えるには、すでに骨格的なアプローチが必要な段階になっている場合が多い。
    • 4 呼吸と歯並びの問題は密接な関係にあることの理解が必要。ランパセラピーの視点から見れば歯列の矯正だけで完結する問題は決して多くはない。
    • 5 矯正治療でまず考えるべき目的は「歯並びを整える」なのか?「歯がきれいに生え揃うお口に整える」なのか?

    当院では必要のない治療をおすすめすることはありません。

    どの治療、どのクリニックを選ばれるかは矯正治療の入り口であり、最も大切なことです。ご選択にあたり、そのご負担は大きいところと存じますが、お子様の将来に関わることとして、今ひと時のリサーチをお願いいたします。ぜひ複数のクリニックでお話しを伺ってください。ご家庭で話し合われてください。その結果による「矯正治療に対するご判断」がご家庭ごとの最適解と当院は思います。当院から精一杯お伝えさせていただくならば、「ランパセラピーが必要」と感じられるお子様は少なくございません。

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    この記事を監修した人
    こどもと女性の歯科クリニック
    院長 岡井有子

    看護師として京都市内の産婦人科勤務を経て、大阪歯科大学に入学。同大学大学院歯学研究科で小児歯科学を学ぶ。2017年、港区に「こどもと女性の歯科クリニック」開院。プライベートでは2児の母として忙しい毎日を送っている。

    こどもの矯正とRAMPA(ランパ)セラピー

    こどもと女性の歯科クリニック

    AM8:30〜13:00 PM14:00~18:00(最終受付 17:30)
    休診日:金曜・日曜日

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