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【もっと】小児矯正って必要な治療?
こどもの歯科矯正で失敗をしないために
はじめに
小児矯正を検討するなかで、「こどもに矯正って意味あるのかなぁ…」と、ふと思いませんか。ご不安かと思います。
調べれば調べるほど、ネガティブな体験談も目に入ります。しかし、そのご家庭と、これをお読みの方のご家庭では、お子様の状況やご家庭の環境など、そのほとんどは異なります。過度に気にする必要はありません。
「小児矯正だからこそ、大きな意味があります」と強くお伝えいたします。
当院のこの考えの源流は、「RAMPA(ランパ)セラピー」の存在です。この存在がなければ、もしかしたら違う考えを持っていたかもしれません。開業さえしていなかったかもしれませんね。
RAMPA(ランパ)セラピーとは、歯並びが悪くなる原因の根本的な解消を目指す治療です。
ランパセラピーのポイント
歯並びが悪くなる原因は、いくつかの呼吸器や耳鼻の疾患と共通原因となっている場合があります。その要因には、赤ちゃん期からの成長過程が大きく関わります。
RAMPAで考える歯並びが悪くなる原因は、「正しいとはいえない骨格の成長」であり、より健全な骨格への成長誘導から矯正治療にアプローチしています。
小児矯正
それではいわゆる矯正治療。「歯列矯正」との視点でしたら、どうでしょうか?小児矯正の是非で歯科医師の意見があるのは、それぞれの考え方や扱っている治療によります。
小児矯正は必要ないという意見もあるなかで、どうせ永久歯に生え変わるのに、こどもの矯正って高い費用かけてやる意味あるの?とは思われますよね。ごく当然のお考えです。
まず多くの場合、大人の矯正治療のように歯並びをきれいに整えることは、小児の矯正治療では大きな目的とはなっていないんですね。
仰られる通り、乳歯列・混合歯列期に歯並びを整えても、いずれサイズの大きな永久歯に生え変わります。仮に一旦きれいに整えたとしても、成長によってそのバランスは変化していきます。小児の時期の歯列には隙間があった方がよい。顎の成長が終わってから矯正に取り組んだ方がよいとのお話しはそのような理屈になります。
しかし、必ずしもすべてのお子様が、二期矯正からでも十分な結果が見込めるとは限りません。
なるべく負担の少ない二期矯正となるための準備が、小児矯正(一期矯正)の大きな目的です。具体的には、永久歯が生えてきても、きちんと歯が並ぶスペースをつくることを目的とされる場合が多いですね。
ここで大切になるのが、歯並びが悪くなることは、日々の生活習慣が大きく関わっていることです。一度悪くなり始めた歯並びが、顎の成長に伴ってよくなっていくことは、そうあることではありません。
現実的には、その生活習慣をよっぽど気を付けられなければ、おそらく悪いなりの歯並びを維持することさえ難しいことです。端的にいえば、悪くなる一方ということになります。かといって、どの時期から始めても、矯正治療の負担や結果は同じとはなりません。
「矯正治療は永久歯に生え変わってから」は理解ができる考えではあります。しかしそれには「二期矯正」からでも十分に対応ができるお口は維持できていること、もしかしたら「一期矯正」から始めていた方がその負担が少なかったかもしれないことのご理解は必要です。
小児矯正(一期矯正)の意味がある方もいれば、二期矯正からでも十分という方もいます。一概にいえるものはありませんので、そのご判断は歯科医師とのお話しの中で決められてください。
矯正相談の前に
では、せっかく小児矯正をされたのに「意味がなかった」との場合はどうでしょうか?いわゆる「失敗」とされるものです。
有難いことに、当院にお越しになられる親御様では、皆さま矯正治療に一生懸命に向き合い、取り組まれています。そのような親御様から受け取れる考え方から学ぶことは多いです。
ご家庭なりの考えや方針を持たれるのは大切なことですが、まずはそのための「知識」です。親御様には、矯正治療のリサーチを可能な限りお願いします。
「考えや方針」=「先入観や人から聞いた話」では、正しいとはいえない道しるべとなりかねません。
その結果、「よく分からなかった」でも、ご相談をされる理由には十分です。知識量が増えたので「よく分からない」となったのです。その疑問もぜひ矯正相談へとお持ちください。
矯正治療での失敗を避けるための大切な最初の一歩となります。
お子様を思えばこそのお悩みです。多くの情報のなかで、何がいいのか分からなくなると思います。
しかし、「何がいいのか?」のご判断は、実際に歯科での相談を経なければ、おそらくその多くは難しいことです。

だからといって、リサーチを省略し、真っ白な状態でご相談されますと、時間はあっという間になくなり、せっかく行ったのによく分からなかったとの結果になりかねません。またクリニックに言われるがままとの事態にもなりかねません。
治療において、ご家庭の「納得」の過程は必ず必要です。お子様の状態や矯正治療についての十分なご理解を、限られた時間内で行うのは少々難しいかと思います。
貴重なお時間です。可能な限り知識を増やし、矯正相談の際には具体的に何を相談しようのイメージを持たれることがまずは大切です。結果として、親御様が視野を広く持ってご判断がすることができます。
親御様とクリニックの間で矯正治療のゴールのイメージ、その過程でのリスクやお約束などの共有ができていれば、失敗といわれるものの多くは減らせるはずです。
分からないことがあれば遠慮なくお話しをしてください。時間が足りなければ、ご納得されるまで相談されてよいと思います。
RAMPAは審美のための矯正治療ではありません。一部の芸能人のような、ともすれば出来過ぎの歯並びは、RAMPAとその後の歯列矯正だけでは叶いませんことはお伝えさせていただきます。
しかし、一般的な矯正歯科でも「見た目」を理由に矯正を勧めることは、そう多いことではないと思います。
とはいえ歯並びの悪さは、お子様によっては性格等にも影響する心因的な要因ともなります。ご本人の理解に関わらず、まわりがその評価をしてしまうこともあります。海外在住の知人に聞きましたが「肥満」や「歯並びが悪い」などは、自己管理ができない人とされる空気は現実としてあるようです。
個人的に矯正治療に関しての一番の失敗とは、行動ができなかった「後悔」と思います。矯正治療に対して、投資に近い考え方をされる親御様もいらっしゃいます。投資の中でのリスクとは、「リスク」という言葉が持つイメージとは異なるそうです。
お子様の将来的なQOLが、矯正治療の是非によって、またRAMPAの是非によって、どのくらい振れ幅が出てくるのか?お子様の未来に想いを馳せてみてください。
そのうえで矯正治療のご判断をお願いします。
こどもの矯正を意味あるものにする
「小児矯正って意味ないのですか?」とのご質問をいただくことがあります。「結局、後戻りをする」や「いつまでたっても変わらない」などの体験談にこのような意見を見かけるそうです。
その体験談にあるお子様の状態・治療方法・ご家庭の希望などの詳細が分かりませんので、それらに対しては具体的な何かを申せません。

確かに歯科医師であれば誰でも、矯正治療を手掛けられることは事実です。医師側の力不足や説明不足によるケースもあると思います。
ぜひ通いやすいや安価よりも、クリニックとの信頼関係が築けそうかどうかを大切にされてください。ここの優先順位をどう取るかで「小児矯正って意味ない…」となる可能性は変わります。
一方で患者様の責任に帰してしまうケースもあります。矯正治療を意味のあるものにするには、患者様側の自己管理や定期的な通院、医師との約束を守るなどのご負担はどうしても生じます。こちらも改めてご理解ください。矯正治療の主人公はご家庭です。
あきらめないでください
RAMPAでは、歯並びが悪くなる主な原因は「中顔面の劣成長」とお伝えしています。そしてこの劣成長の主な要因は「口呼吸」です。つまり「中顔面の劣成長」とは、実はどのお子様にも起こりえることなのです。
ということは、せっかく矯正治療で歯並びを整えたとしても、口呼吸が改善されていなければ、一定割合のお子様にはまだ「歯並びが悪くなる原因」が残っているということになります。ましてや鼻の通りが悪いとなると、歯並びがどうあろうと口呼吸を改善することはできません。結果として高い確率で「後戻り」となります。
抜歯が必要になるかもしれません。大変になるかもしれませんが、歯列矯正はある程度は大人からでも可能です。しかし骨格(中顔面の劣成長)は、そうはいきません。RAMPAの治療対象は中顔面の劣成長です。
歯列の問題だけならば上手な先生方が大勢いらっしゃいます。しかし、RAMPAでできることは一般的な矯正治療ではできません。特にお子様の呼吸に関してのお悩みには、RAMPAという可能性があります。まだあきらめないでください。
まとめ
クリニックとご家庭の連携がとれ、適切な治療がなされていれば、「意味がない」の言葉はそう出るものではないと思いますが、実際にその言葉があることを歯科医師も真摯に受け止めねばなりません。特に小児の矯正治療で、治療の理解より先に、お手軽さや負担の少なさを謳うのはどうかと思います。
「なるべく負担が少なく」は大切なことですが、お手軽な治療というものはありません。
基本的に矯正治療は長期にわたる治療です。過剰に頑張らなくてはならないことのない環境とマインド作りが大切です。
失敗を避けるためには、リサーチから始まる親御様の熱量と、お子様を導いてあげられるご家庭の取り組みが重要になりますことを、治療前に今一度ご理解ください。
無論、歯科としても同様ですが、お子様にとっては親御様にはかないません。ご家庭では親御様が主治医となってあげてください。
クリニック選びでは、医師の口から説明をしてくれたり、十分な検査をしてくれたり、検査資料もいただけたりと見極める要素はいくつかあります。相性なども無視できないかもしれませんね。
いずれにしても親御様が実際にクリニックへと足を運ばれ、自分なりの「知識」を「考え方」へと変換することが大切です。
ぜひお子様の学校を選ぶことと同様に、矯正方法や歯科クリニックをお考えください。同じ子を持つ親として、また歯科医師として、そして未来に関わることとして、同じくらい大切なことだと思います。
無論、私たち歯科クリニックも襟を正さなくてはなりません。

こどもの矯正とRAMPA(ランパ)セラピーの5つのポイント
- 1 舌が正しい位置に付かなくなるのは、乳幼児期からの様々な生活習慣の積み重ね。
- 2 お口の発達においての最重要ポイントは「きちんとした鼻呼吸ができること」
- 3 ある程度の年齢に達したこどもの口呼吸は、骨格的なアプローチが必要な段階にある場合も多い。
- 4 呼吸と歯並びには密接な関係があることの理解が必要。歯列矯正のみでは骨格へのアプローチは難しい。
- 5 矯正治療の目的は「歯並びを整える」でよいのか?「根本からの改善」を目指すのか?
当院では必要のない治療をおすすめすることはありません。
どの治療、どのクリニックを選ばれるかは矯正治療の入り口であり、最も大切なことです。ご選択にあたり、そのご負担は大きいところと存じますが、お子様の将来に関わることとして、今ひと時のリサーチをお願いいたします。ぜひ複数のクリニックでお話しを伺ってください。ご家庭で話し合われてください。その結果による「矯正治療に対するご判断」がご家庭ごとの最適解と当院は思います。当院から精一杯お伝えさせていただくならば、「ランパセラピーが必要」と感じられるお子様は少なくございません。
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この記事を監修した人
こどもと女性の歯科クリニック
院長 岡井有子
看護師として京都市内の産婦人科勤務を経て、大阪歯科大学に入学。同大学大学院歯学研究科で小児歯科学を学ぶ。2017年、港区に「こどもと女性の歯科クリニック」開院。プライベートでは2児の母として忙しい毎日を送っている。

こどもと女性の歯科クリニック
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