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こどもの歯並びや噛み合わせが悪い 不正咬合にはどんな種類がある?
はじめに
矯正治療ごとに、得意・不得意な症例があります。お子様の歯並びの悪さはどのタイプなのか?果たしてそれは軽度なのか、重度なのか?実際に先生に診てもらってください。どの矯正治療がよいのかを具体的に検討するのは、その後のお話しになります。
下図アラインテクノロジー社の調査では62.3%の親御様がお子様の歯並びに関し、良くないと感じているようです。
叢生(そうせい)
「乱杭歯(らんぐいば)」ともいわれる不正咬合の一つです。歯と歯槽骨(歯を支える骨)の大きさのバランスが悪く、デコボコとした歯並びの状態を指します。いわゆる歯並びが悪いと聞いて、多くの方がイメージされるのが、この叢生ではないでしょうか?
叢生を誘引する原因は、歯が生える土台に対し歯が大きい、もしくは歯の大きさに対し土台が小さいなど、歯の大きさとその土台のアンバランスとされています。
特に叢生が気になり矯正相談を受けられた場合、「顎が小さいから」といわれた方も多いと思います。その先、矯正治療へと進む場合、齟齬があってはいけません。
もう一歩深く、「顎が小さいってどういうことなのか?」「どのような治療を行うのか?」などご納得がいくまで伺ってください。
過蓋咬合(かがいこうごう)
上側の前歯が下側の前歯に過剰に覆いかぶさった状態の不正咬合を指します。噛み合わせが深いと表現されることもあります。
奥歯を噛みしめた際に、鏡で見ると下側の前歯が見えない、下側の前歯が上側の前歯裏側の根元に当たるなどにお心当たりのある方は、過蓋咬合が疑われます。
過蓋咬合は、奥歯に噛む力が過剰にかかる傾向があります。奥歯が欠けたり、むし歯になりやすかったりと奥歯に関するトラブルが多いですね。
最近の矯正相談の傾向では、過蓋咬合のお子様が増えているように感じます。
開咬(かいこう)
奥歯を噛みしめた際に、前歯が噛み合わず、上下の前歯の間に隙間がある状態の不正咬合を指します。
開咬を誘引する原因としては、舌癖(舌を出す癖)や指吸などがいわれています。開咬は外見を気にされる方や発音が不明瞭になる方がより多く、コンプレックスにつながりやすいです。
上顎前突(じょうがくぜんとつ)
一般的には「出っ歯」といわれることが多いですね。上の歯が前に出ていて、上下の前歯が噛み合わない状態を指します。
舌癖や特に指しゃぶりは上顎前突の原因にもなりやすいとされています。おしゃぶりもご注意ください。
歯科の見地からいえばこれらは決して良いものではありませんが、お子様のこのような習慣は心理的な要因による場合も多いものです。バスや電車の中など、ママはおしゃぶりに助けられる場面もあります。
これらをいきなり一切やめてくださいと言われても無理がありますね。もしかしたら歯並びは悪くなってしまうかもしれませんが、まずは育児の中でお子様の欲求を上手に満たしてあげてください。
歯科としてはNGかもしれませんが、そちらの方がより大切なことだと思います。先生に経過を見てもらいながら…がよいですね。
反対咬合(はんたいこうごう)
一般的には「受け口」といわれることが多いです。下の歯が前に出ている、または下の顎が前に出ている、もしくはその両方の状態があります。
反対咬合は気道が狭い状態(口呼吸)に対して身体が無意識的に下顎を前に出し、呼吸を楽にしようとすることから起こることがあります。
反対咬合ではない方は、意識的に受け口にして口呼吸を試してみてください。受け口にした時の気道の拡がりを感じられる方もいらっしゃるでしょうか。気道と受け口の関係性を少し実感いただけるかもしれません。
マラソンなどのテレビ中継で選手が苦しくなった時、解説の方が言う「あごが出てきましたね。」とはこういうことなんですね。空気をより多く体に取り入れたいと身体が無意識的に対応をしています。
お気付きになることは少ないかもしれませんが、日常的に息苦しい状況に置かれるアスリートの方は受け口である方が結構多いです。
お子様ですと、気道が狭く息苦しい状況に対して、先の無意識的に下顎を前に出すか、もしくは顔ごと前に出して、何とか気道を拡げようと身体が対応します。
これはつまり姿勢が悪くなるということになります。
「姿勢を良くしなさい。」といっても、お子様には原因があって難しい場合もあるのです。
その他
他にも交叉咬合・切端咬合・空隙歯列(すきっ歯)など不正咬合には様々な状態があります。
お子様の将来的なQOLを考えた場合、いずれの不正咬合であっても治療は考えられた方がよいかもしれません。しかしそれぞれの矯正治療ごとの考え・特徴により、得手不得手や対象年齢が異なります。
最近では、主に見た目や費用の問題からマウスピース矯正をご希望される親御様が多いですが、重要視しなくてはならないのは、ご希望に対しその治療が適切なのかになります。
歯列の問題は、骨格の問題とも大きく関わることはよく見かけます。「顎が小さい」などはその代表ですね。しかし一部の矯正治療を除き、骨格に対して大きな改善効果が見込める矯正治療はありません。
ランパセラピーでは、中顔面の発達の問題に起因するいずれの不正咬合、また原因を同じくする呼吸器系や耳鼻系の問題に対し、それらの原因となる骨格への直接的なアプローチから、症状の改善を目指しています。
RAMPA(ランパ)セラピーとは歯並びが悪くなる原因の根本的な解消を目指し、歯がきれいに生えるような土台に整え直そうという治療になります。
当サイト内では治療に関する記述では「ランパセラピー」、器具・システムに関する記述では「RAMPA」と表記しております。
ランパセラピーについて、まだ知らない方や先に知っておきたい方は下リンクからどうぞ。
こどもの矯正とRAMPA(ランパ)セラピーの5つのポイント
- 1 舌が正しい位置に付かなくなってくるのは、主に赤ちゃん時代からの様々な生活習慣の積み重ね。特に近年は赤ちゃんの首周りの筋緊張による影響が大きい。
- 2 歯並びの問題も含め、最重要ポイントになるのが「舌が正しい位置(上顎につく位置)にあること」、もしくは「きちんとした鼻呼吸が出来ること」
- 3 ある程度の年齢に達し日常化したこどもの口呼吸を鼻呼吸に変えるには、すでに骨格的なアプローチが必要な段階になっている場合が多い。
- 4 呼吸と歯並びの問題は密接な関係にあることの理解が必要。ランパセラピーの視点から見れば歯列の矯正だけで完結する問題は決して多くはない。
- 5 矯正治療でまず考えるべき目的は「歯並びを整える」なのか?「歯がきれいに生え揃うお口に整える」なのか?
当院では必要のない治療をおすすめすることはありません。
当院・他院に限らず、ホームページ等で記載がされている、「〇〇の原因」や「〇〇を改善するためには?」などは最終的に一つの答えに収束するものではありません。クリニックごとの考えの優先度・重要度などにより記載が異なってまいります。実際には患者様それぞれに答えはいくつもございます。
どの治療、どのクリニックを選ばれるかは矯正治療の入り口であり、最も大切なことです。ご選択にあたり、ご家庭の負担は大きいところと存じますが、お子様の将来に関わることとして今ひと時のリサーチをお願いいたします。その結果による「矯正治療に対するご判断」がご家庭ごとの答えと存じます。当院から精一杯お伝えさせていただくならば「ランパセラピーが必要」と感じられるお子様は少なくございません。
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この記事を監修した人
こどもと女性の歯科クリニック
院長 岡井有子
看護師として京都市内の産婦人科勤務を経て、大阪歯科大学に入学。同大学大学院歯学研究科で小児歯科学を学ぶ。2017年、港区に「こどもと女性の歯科クリニック」開院。プライベートでは2児の母として忙しい毎日を送っている。
こどもと女性の歯科クリニック
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