ランパセラピー
検査項目解説
数十年後の呼吸と歯並びを守る出発点 骨格発達の現在地を知るために必要な検査
矯正相談後、すぐに治療に入るわけではありません。複数の検査を行い、お子様の骨格の現在地を把握します。
これらの治療前検査は、当院でランパセラピーを行うにあたって必要な検査です。そして、治療の進捗確認や治療終了の判断基準にもなります。
これだけの検査は、既存の矯正歯科では不要かもしれませんが、呼吸の改善や根本治療を謳う矯正治療、ましてやランパセラピーならば、余分な検査ではありません。頭蓋骨そのものをリデザインする必要があるので、ここまでの検査をしているのです。
大切なことです。「お任せします」ではなく、親御様も何をどこまで検査されているかを確認されてください。
※本ページ記載の写真は「治療前」と「治療後」の比較写真ではありません。検査項目を理解していただくため、分かりやすい場面で抜粋しています。
※お子様の成長はそれぞれです。何がどれだけ変化するのかは、お子様ごとに異なります。結果のお約束は致しかねますのでご承知おきください。画像や数値は一例としてご理解ください。
資料取り(治療前検査)項目
資料取りでの主な検査項目
- 鼻副鼻腔容積計測=呼吸時の通気性
- 気道容積計測=呼吸時の通気性
- ANSとPNSの距離計測=口蓋のひずみ
- S-Nの距離計測(脳頭蓋底のセラ点とナジオン点の距離)
- ゴニアルアングル計測=下顎のひずみ
- 顔の左右差・頭蓋骨の形状確認
- 頭位・舌位・頚椎の形状確認
- 歯の萌出スペース確認
- 睡眠時無呼吸AHI計測・鼻腔通気度計測
- 3Dによる顔貌と口腔内撮影など
1:鼻副鼻腔容積の計測
※画像は治療前(5歳7カ月女児)〜治療中の変化(約3カ月後)
※容積は7ccから20ccに変化しました。
- 物理的データ:鼻腔の断面積が10%減少すると、気道の抵抗(息のしにくさ)は約20〜30%増大するとされています。
- ランパセラピーの意義:中顔面の骨格を上前方へ牽引することで、鼻腔容積を物理的に拡大します。これは、単なる「鼻の通り」の問題ではなく、脳や身体への酸素供給効率の問題です。
口呼吸にはじまる負の連鎖
鼻腔が狭いことにより口呼吸が常態化すると、以下のような負の連鎖の可能性があります。
- 一酸化窒素(NO)の欠乏:鼻呼吸をすると副鼻腔で生成されたNOが肺に運ばれ、血管を拡張させ、酸素吸収を助けます。口呼吸ではこれが得られず、酸素摂取効率が10〜20%低下する可能性があります。
- 睡眠の質と成長ホルモン:鼻腔が狭い子どもは、睡眠時無呼吸症候群(SAS)予備軍です。深い睡眠が得られないため、成長ホルモンの分泌が阻害され、身長の伸びや知能の発達に悪影響を及ぼす可能性があります。
- 顔貌のネガティブな変化:口呼吸を続けると、舌の位置が下がり(低位舌)、さらに上顎骨が狭窄するという「悪循環」になり、ガミースマイルやアデノイド顔貌に繋がる可能性があります。
ランパセラピーは、歯を並べるスペースを作るための治療ではなく、酸素の通り道を作るために骨格から整え直す治療です。結果的に、歯が並ぶスペースができ、お顔立ちにも変化が起こります。
多くの矯正治療が「歯並び」の改善に留まるなか、ランパセラピーは中顔面の骨格を再構築し、鼻副鼻腔容積を拡大します。お子様の集中力不足や、いつも眠そうな顔立ち。その原因は「酸素の通り道の狭さ」にあるかもしれません。
矯正歯科視点でも重要な「上顎洞」
副鼻腔は以下のように分けられます。
- 上顎洞(じょうがくどう)
- 篩骨洞(しこつどう)
- 蝶形骨洞(ちょうけいこつどう)
- 前頭洞(ぜんとうどう)
| 発生時期 | 発達のピーク | 完成時期 | 特徴 | |
|---|---|---|---|---|
| 上顎洞 | 胎生3カ月頃 | 歯の生え替わり期 | 15歳〜17歳頃 | 最大の副鼻腔・上顎骨の成長に直結 |
| 篩骨洞 | 胎生初期 | 出生〜幼児期 | 12歳頃 | 最も早く完成・眼窩の間にあるハチの巣状の空洞 |
| 蝶形骨洞 | 3歳頃 | 10歳前後 | 15歳頃 | 頭蓋骨のほぼ中央・脳のすぐ下に位置 |
| 前頭洞 | 4歳〜6歳頃 | 思春期 | 20歳前後 | 最も遅く完成・額の部分・個人差が大きい |
ランパセラピーにおいて重要なことの一つに、上顎洞の発達と上顎骨(中顔面)の劣成長の関係があります。
- 出生時の上顎洞は直径1cm程度の小さな溝ですが、混合歯列期には永久歯の萌出に伴い、上顎骨の内部が「気洞化(空気の通り道として拡がる)」していきます。
- 上顎骨の劣成長がある場合、上顎洞の気洞化が不十分であったり、鼻腔の通気障害によって副鼻腔炎を併発し、それがさらに骨格の成長を阻害するという負の連鎖に陥ることがあります。
ランパセラピーは、この「副鼻腔を含む上顎複合体(中顔面)」を上前方へ牽引する矯正治療です。
- 空洞の機能:鼻副鼻腔は、呼吸時の酸素摂取能力を正常に保ち、吸気の加湿・加温やフィルター機能を担います。
- 骨格への影響:中顔面が健全に成長することで、副鼻腔も健全に気洞化します。逆に副鼻腔の発達不全は、中顔面の平坦化やアデノイド顔貌へも繋がります。
- 治療的意義:骨格矯正によって鼻腔・副鼻腔の環境を整えることは、口呼吸を鼻呼吸へと転換させ、全身の酸素供給効率を高めることに繋がります。
2:気道容積の計測
※画像は治療前(5歳7カ月女児)〜治療中の変化(約3カ月後)
※容積は5.1ccから13.9ccに変化しました。
胎生期〜出生:生命維持の基礎
気道の原型は胎生初期に作られ、出生時にはすでに完成していますが、大人とは構造が大きく異なります。
- 喉頭の位置が高い:赤ちゃんの喉頭は非常に高い位置にあります。これにより、母乳を飲みながら鼻で呼吸することが同時に可能になっています。
- 鼻呼吸の絶対性:乳児は基本的に「鼻呼吸」しかできない構造で呼吸をしています。大きくなった子どものように、鼻呼吸がしづらければ口呼吸というようには、簡単に切り替えられません。
幼児期〜学童期:リンパ組織のピークとリスク
2歳から12歳頃にかけて、気道周辺には大きな変化が訪れます。
- アデノイド・扁桃の発達:免疫機能の要であるリンパ組織(アデノイドや口蓋扁桃)が急速に大きくなります。
- 空間の取り合い:この時期、骨格(上顎骨)の成長が遅れていると、大きくなったアデノイドが鼻咽腔を塞いでしまうことがあります。つまり、「アデノイド顔貌」や「口呼吸」のきっかけとなります。
思春期:垂直的な伸長と声の変化
12歳前後以降、第2次性徴に伴い、気道はさらに変化します。
- 喉頭の下降:幼児期に高い位置にあった喉頭が下がり、咽頭腔(のどの空間)が垂直に長くなります。これが「声変わり」の原因です。
- 骨格の固定:15歳前後で顔面の骨格成長がピークを過ぎると、気道の「容積」を骨格レベルで大きく変えることの難度は上がります。
成人期:発達不全がもたらす「負の遺産」
成長期に気道が十分に発達しなかった場合、大人になってから深刻な問題として顕在化します。
- 睡眠時無呼吸症候群(SAS):狭い気道は、睡眠時の筋肉の弛緩によって容易に閉塞します。いびきはその手前の段階です。
- 代償的な姿勢悪化:狭い気道で呼吸を確保しようとして、頭を前方に突き出す「猫背(フォワード・ヘッド・ポスチャー)」が定着します。
気道の成長はリセットしづらいです。大人になってから気道を拡げるには、外科手術を伴う大掛かりな処置が必要になる場合もあります。大人のランパセラピーも負担が大きいです。小児期にランパセラピーで骨格を整えることは、将来の睡眠時無呼吸や循環器疾患のリスクを低減させる「予防医療」ともいえます。
アデノイドと扁桃腺
「アデノイドの肥大」と「扁桃腺の肥大」、どちらも呼吸に関わる重要な要素です。この二つは親戚のようなものですが、場所と役割が違います。どちらも免疫組織(リンパ組織)の集まりで、これらは総称して「ワルダイエル咽頭輪(いんとうりん)」の一部ですが、位置が違うために引き起こすトラブルの性質が変わってきます。
のどの入り口を中心に、これらが「輪」のように取り巻いて、身体を守っています。だから「喉頭輪」です。
アデノイド肥大(鼻のルートに障害)
アデノイドが大きすぎると、鼻から吸った空気がのどへ流れる通路を塞いでしまいます。
- 結果:強制的に「口呼吸」になります。
- 骨格への影響:常に口が開いた状態(低位舌)になり、上顎骨に内側からの圧力がかからず、上顎の狭窄と中顔面の下方成長に繋がります。
扁桃腺肥大(のどのルートの障害)
口蓋扁桃が左右から迫り出してくると、のどの奥が狭くなります。
- 結果:睡眠時に舌が落ち込むと、気道を塞いでしまう「睡眠時無呼吸」を誘発しやすくなります。
- 骨格への影響:呼吸を確保しようとして、下顎を前に出す。あるいは不良姿勢(代償姿勢)の原因となります。
アデノイドと扁桃腺、この2つを混同している親御様は多いですが、どちらが原因であれ、狭くなった気道に合わせて骨格は歪んでしまう可能性があります。そして、骨格の問題は一度起こると勝手には戻らないという点に注意が必要です。
| ワルダイエル咽頭輪 | 咽頭扁桃 | 口蓋扁桃 | 耳管扁桃 | 舌扁桃 |
|---|---|---|---|---|
| 通称 | アデノイド | 扁桃腺 | ー | ー |
| 場所 | 鼻の突き当たり | のどの両脇 | 耳と鼻を繋ぐ管の入り口 | 舌の付け根 |
| 主なトラブル | 鼻づまり・いびき | のどの痛み・発熱 | 中耳炎・聴力低下 | 反対咬合(舌を押し出す) |
重要:鼻副鼻腔と気道の容積
姿勢の悪さ(舌骨の位置)、アデノイドや扁桃腺の肥大、単なる悪癖、きっかけがなんであれ、舌が上顎につかない状態(口呼吸)の呼吸では、身体(脳)は「息苦しい」と判断します。
適切な処置によって、鼻呼吸が取り戻せればいいですが、そう簡単な話ではないのも口呼吸。日常的に続いた口呼吸の行き着く先はどうなるか?そう、骨格自体の変化によって、鼻(鼻副鼻腔)やのど(気道)といった空気の通り道は狭くなり十分な容積が得られなくなります。すると、本来は応急処置であるはずの口呼吸がデフォルト設定になってしまいます。
これらに対抗できた唯一ともいえる力が「舌が上顎についた際に発揮される力」です。この力がうまく発揮できない状態が口呼吸。日常的な口呼吸は、骨格の劣成長を招きます。そして、すでに成長してしまった骨格の劣成長に対して、元に戻すために必要な上前方への力を骨格へかけられるのがRAMPAの仕組みです。
息が吸えてれば十分なわけではないです
そもそも私たちの身体は細胞約60兆個(一説)で成り立っています。その細胞の中にはミトコンドリアという重要な働きをする小器官があります。この膨大な数のミトコンドリアは、呼吸による酸素を取り込むことでエネルギーを生み出します。
ATPエネルギーといわれる生物の生命活動に必要不可欠なエネルギーです。
鼻呼吸による正しい酸素の取り込みには、口蓋の形が重要です。舌がぴったりと口蓋に吸着することによって、ゆったりとした鼻呼吸ができるのです。大切なのは口蓋の形。これをつくることによって、正しい呼吸が導かれるのです。その手段がランパセラピーといえます。
細胞60兆個にエネルギーが満たされるような呼吸の変化とは、人間の身体にどのような変化をもたらすのでしょうか。
3:ANSとPNSの距離計測
ANS(前鼻棘:Anterior Nasal Spine)とPNS(後鼻棘:Posterior Nasal Spine)の距離を、頭部X線規格写真(セファロ)分析において計測します。この距離は、上顎骨の前後的な長さ(上顎骨の長さ)を示す指標です。
口蓋平面(こうがいへいめん)とも表現され、フランクフルト平面(頭蓋骨の水平基準:大まかに目の下と耳の穴を結ぶ線)と、ほぼ平行とされています。
定義:ANS点(鼻の穴の入り口下端)からPNS点(口蓋の最も後ろの部分)までの直線距離。
臨床的意味:上顎骨の成長発育や、口唇裂口蓋裂患者における上顎の成長評価に使用される。
ランパセラピー対象の子どもたちでは、相対的にPNS側が下がっている事例が多いです。ランパセラピーの医学的効果では、この下がったPNS点が上がってきます。
4:S-Nの距離計測
前頭蓋底の長さを示すセラ(S:Sella)とナジオン(N:Nasion)の距離を、頭部X線規格写真(セファロ)分析において計測します。※トルコ鞍の中心点(S)・鼻骨前頭縫合点(N)
S-Nは、顔面の前後的な成長や、上顎・下顎が頭蓋に対してどの位置にあるかを分析するために不可欠です。頭蓋骨の成長や下顎の位置(SNB角、SNA角など)を測定する際の固定基準線として使用されます。
S-N間の距離は一般的な成人で平均72mm程度、ランパセラピーの対象年齢に近い6歳で63mm程度、12歳で68mm程度が一般的な指標です。また女性の方が若干短い傾向があります。
一概に指摘できるものではありませんが、この距離が短いほど受け口傾向にあります。また、一般的ではないかもしれませんが、ランパセラピーの効果として、つまり中顔面の正しい成長の結果として数値を見ることもできます。
一般的にS-Nの成長は年間0.5mm程度。もちろん長ければよいというものではありませんが、RAMPA装着期間の数ヶ月間で数mmレベルの成長も確認されています。RAMPAの正しい効果は、N点から前に出るということです。
5:ゴニアルアングルの計測
ゴニアルアングル(下顎角)を、頭部X線規格写真(セファロ)分析において計測します。この角度は、耳の下にある下顎の骨の角度(いわゆるエラ)で、顔の縦の長さを示す指標です。
平均は約120度で、90度に近いと「短顔」傾向、130〜140度だと「面長」傾向となり、主に歯科矯正や骨格矯正のセファロ分析による、成長パターンや骨格的な特徴の把握に用いられます。
定義:下顎枝後縁平面と下顎下縁平面のなす角度
特徴と骨格タイプ:
- 90度に近い(鈍角が少ない):下顎角が角ばっており、エラが張って見え、短顔傾向になりやすい
- 120度前後:平均的な顔立ち
- 130度~140度(鈍角が大きい):下顎の角が丸く、面長な顔立ちになりやすい
ランパセラピー対象の子どもたちでは、ハイアングル傾向(概ね120度以上)の事例が圧倒的に多いです。理由は‥そうですね。上顎が下がり、下顎も後下方に回転するように下がっているからです。ランパセラピーでは、この角度も変わります。
6:顔の左右差・頭蓋骨の形状確認
※画像は治療前(8歳8カ月男児)〜治療中の変化(約3カ月後と約2年6カ月後)
頭蓋骨全体の撮影から確認していることの一例です。
- 色付きの矢印:赤→青→黄に向かって、横幅が広がっています。これは前歯4本分の幅を示しています。
- 色付きの曲線:赤→青→黄に向かって、曲線の度合いが弱くなっています。これは上顎が上方(実際には上前方)に変化していることを示しています。
つまり、治療の進行に伴い、下がった上顎に対して、RAMPAが与える力のベクトル通りに骨格が変化していることを示しています。
次の「矯正装置で働く力のベクトル」にある「咬合平面」の傾斜角が変化しているということです。
重要:矯正装置で働く力のベクトル
ぜひ知っておいていただきたい大切なことがあります。
頭蓋骨には、「フランクフルト平面」という水平基準があります。フランクフルト平面とは、大まかに目の下の骨と耳の穴を結んだ線で、頭蓋骨を横から見た際の水平基準です。ただ、ここでは深く考えていただかなくても結構です。
画像を見て分かる通り、歯が並んでいる面は水平ではありません。フランクフルト平面を水平とした場合、奥歯(上側)から前歯(下側)に向かって傾斜しています。これは異常ではなく、大体10度〜15度程度傾斜しているのです。
では、ワイヤー矯正やマウスピース矯正で、歯列に力をかけた場合、全体としてはどのような力が働くのか?
咬合平面が前下がりになっているため、歯列に沿って加えられた力は、水平方向だけでなく「下方向(垂直方向)」の成分を少なからず含んでしまいます。歯を動かしているつもりが、その反作用や力の伝達によって、上顎を下方、あるいは後下方へと押し下げるベクトルとして働いてしまう可能性があるのです。
咬合平面が水平面(フランクフルト平面)に対して傾斜している場合、そこにかかる力は必ずベクトル分解されます。物理学の法則上、平面が傾いている限り、この垂直方向のベクトルをゼロにすることはできません。この分力が、「上顎を押し下げる」力の正体です。
この「上顎を押し下げる力」がもたらす結果は、医学的には「顎顔面複合体の時計回り回転(Clockwise Rotation)」として知られています。
- 咬合平面の傾斜と骨格:多くの研究(Sato, Slavicekらによるシス・メカニクス理論など)において、咬合平面の傾斜と上顎骨の位置、そして下顎の適応回転には密接な相関があることが提起されています。
- 矯正の副作用:歯列だけに焦点を当てた従来の矯正では、歯を並べる際の反作用として、意図せず上顎後方が押し出され、顔面が垂直方向に伸びてしまう「垂直的コントロールの喪失」がリスクとして議論され続けてきました。
つまり、ワイヤーやマウスピースで、歯列を後ろに下げようとしたり、並べようとしたりする力(歯列に沿った水平方向の力)を、水平でない歯列にのみに加えると、以下の現象が起きやすくなります。
【時計回りの回転】
※解剖学的には、人の身体を右側から見た図を基準としています。その上で時計回りをイメージしてみてください。
上顎の後方が下がり、顔が垂直方向に伸びる方向への回転が起こりやすくなります。これが時計回りの意味です。要はこれです。

※背景の着色のためにAIを使用しています。
上顎が下がると、それに連動して下顎も後下方へと回転せざるを得なくなり、結果として「気道を狭める」「顔が長く見える(Long Face症候群)」といった、機能的・審美的な悪化へと繋がるのです。
【従来の矯正治療の限界点】
一般的なワイヤー矯正やマウスピース矯正は、基本的に「歯の移動」を主眼としています。
歯の土台である上顎骨そのものの傾斜や位置異常がある場合、歯だけをきれいに並べても、その力のベクトルが「骨格の歪み」を助長してしまう可能性があります。
特に「後方移動」を行う際、この傾斜した平面上を移動させると、構造的に上顎全体を押し下げる力が発生しやすくなります。
【要約】
1. ベクトルの分解と咬合平面傾斜
矯正装置で歯を動かす力は、物理学の法則によって、歯を動かすだけでなく上顎を下げる力にも変換されます。そして、上顎の位置によって下顎自ら最適な位置に移動・調整します。つまり、咬合平面の傾斜が下顎の位置を決定づける物理的なガイドになります。
2. 下顎の適応回転
上顎の垂直的な高さが変化した際、下顎が顎関節を支点に回転して帳尻を合わせるような現象が「時計回り回転」です。つまり、上顎が下がれば、下顎は物理的に後下方へ追いやられ、気道を圧迫します。これらが、口呼吸や睡眠の質の低下に繋がる根拠の一つとして挙げられます。
3. ファンクショナル・マトリックス理論
骨は勝手に育つのではなく、周りの機能(舌、呼吸、筋肉)に反応して形が決まります。低位舌や口呼吸という「機能不全」があれば、支えのない上顎は落ち、鼻腔狭窄や気道閉塞へ繋がります。要は「鼻呼吸ができない(舌が上顎につかない)」という一見些細なエラーが負の連鎖の入り口になります。
歯科において「骨格が正しく育つ(歯が生える土台を構築する)」には舌の支え(鼻呼吸)が大前提です。「卵が先か、鶏が先か」のような話にもなりますが、歯列を整えるために使われている矯正力が、頭蓋骨全体の構造には負の力を与えてしまう可能性があるのです。
【見解】
これらは、既存の矯正装置による歯列への力のかけ方が、上顎を下げる方向にも力をかけてしまう可能性を示唆しています。その結果、下顎が下がり、口呼吸の要因になります。
一方、当院では舌骨の位置による口呼吸の可能性を伝えています。いずれにしても、口呼吸からその先の展開は大きく変わりません。
上顎はさらに落ち、鼻副鼻腔、気道、顔貌(ガミースマイル・アデノイド顔貌)の問題が表出する可能性が高くなります。歯列の問題さえ、完全解決とはいきません。口呼吸が残っているのです。
支えを失い、重力で下がってしまった上顎の位置に適応して下顎の位置は決まります。一方で下顎が下がり、空間ができることで上顎も下がります。相互に関係する共倒れ状態です。
そして、これらの負の連鎖を改善するなら上顎の位置は上げなければなりません。そうしなければ下顎はついてきません。
【結論】
もともと上顎骨を「上前方」へ引き上げたいという治療的ニーズは、決して新しい考え方ではありません。ただ、それが難しかった。
だからといって、仮に歯列だけに力を加えたとしても、全体的なベクトルとして、上顎を下げる方向に力が働く可能性があります。
つまり、歯は並べられたとしても、骨格(呼吸やお顔立ち)は改善しないどころか、悪化するリスクまであります。この「意図しない下方へのベクトル」を懸念し、「上前方へのベクトル」へと変換しつつ、骨格から再構築しようとするのが骨格矯正(ランパセラピー)の根本的な考え方です。だから当院ではRAMPA後のワイヤーやマウスピースによる歯列へのアプローチを極力行わないのです。
RAMPAの装置と人の努力によって、本来の成長方向へ引き戻すのが、ランパセラピーの医学的な目的になります。
7:頭位・舌位・頚椎の形状確認
※画像は治療前(8歳8カ月男児)〜治療中の変化(約3カ月後)
治療経過の一例です。画像の順序は間違えていません。気道容積の視点で見ると、気道容積は小さくなり、一見悪くなっているようにみえます。
なぜこうなっているのか?お顔の輪郭を見ていただければ分かります。
治療前の画像では、少し上を向いた状態の「頭位」になっています。見方を変えれば、下顎を突き出した状態ともいえます。つまり、気道が狭く息苦しいから、「頭位や姿勢を悪くしてでも、身体が気道を開けようとしている状態」です。舌も上顎にベッタリとはついていません。
治療中の画像では、舌が上顎についています。つまり、あえて気道を開けなくても、効率のよい鼻呼吸ができていることを示しています。まっすぐ前を向けるようになり「正しい頭位」になりつつあるということです。
この時点では、まだRAMPA1クール終了時です。治療の進行に伴い、上顎(中顔面)が上がり、下顎も上がってくれば、気道はもっと開きます。
※画像は治療前(7歳8カ月女児)〜治療中の変化(約8カ月後)
治療の進行に伴い、ゆるやかなカーブのより正しい頸椎になり、姿勢も改善しています。頭蓋骨がきちんと首の骨の上にあります。RAMPAの装置は、直接頸椎にアプローチするものではありませんが、上顎骨の成長誘導によって、下顎や頸椎も本来あるべき形へと変化していきます。全体のバランスで骨格はできているということですね。
8:歯の萌出スペースの確認
※画像は治療前(8歳8カ月男児)〜治療中の変化(約3カ月後と約2年6カ月後)
9:睡眠時無呼吸AHI計測・鼻腔通気度計測
以下は一般的な睡眠時無呼吸検査と鼻腔通気度検査に関する概要です。いずれも当院で行うのは検査であって、診断は行いません。あくまで、「現状把握と改善効果」の参考数値として把握します。
睡眠時無呼吸検査
中顔面の成長不全がどれほど気道を狭窄させ、身体の酸素供給に影響を与えているかを数値として客観的に評価するために、睡眠時無呼吸検査を行います。骨格からアプローチすることで「呼吸・睡眠の質」がどう改善されるか。その変化を追うための指標としています。
AHI(睡眠時無呼吸症候群の指標)は、睡眠1時間あたりの無呼吸・低呼吸の合計回数です。正常値は5未満で、5以上で睡眠時無呼吸と診断されます。重症度は、軽症(5〜20回)、中等症(20〜40回)、重症(40回以上)に分類され、20以上の場合はCPAP治療や専門的な生活習慣改善が必要とされる場合があります。※見解により多少前後します。
AHI(無呼吸低呼吸指数)のポイント
- 定義:10秒以上の無呼吸(息が止まる)と低呼吸(呼吸が浅くなる)の合計回数。
- 重症度判定:AHI 5以上で「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」と定義される。
- リスク:重症度が高いほど、心血管疾患などの合併症や日中の眠気・疲労感のリスクが高まる。
重症度と治療の目安
- 軽症 (5〜20):生活習慣改善(ダイエット、禁酒など)の検討を行う。
- 中等症 (20〜40):精密検査(PSG)を行い、明確な治療(マウスピース等)の対象になる。
- 重症 (40以上):CPAP(シーパップ)療法も推奨される。
検査と診断
自宅でできる「簡易検査」と入院して行う「ポリソノグラフィー(PSG)」の2種類があります。当院で行うのは、ポータブルの機材を貸し出し、自宅で行っていただく「簡易検査」です。
鼻腔通気度検査
口呼吸は顎の発達や歯並びに重大な影響を及ぼしますが、「口を閉じなさい」「鼻で息をしなさい」ではなかなか解決には至りません。鼻腔通気度検査では、鼻腔の通りやすさ(抵抗)を数値で測定します。中顔面の成長不全が鼻腔をどう狭めているのかを把握し、治療によって構造的に拡大することで、どれほど鼻呼吸がしやすくなるのか。その変化を追うための指標としています。
鼻腔通気度検査は、鼻にセンサーを装着して安静な鼻呼吸を繰り返し、空気の通り具合(鼻腔抵抗)を数値化する検査です。鼻づまりの程度や、アレルギー性鼻炎・鼻中隔湾曲症などの治療効果を評価するために、通常は耳鼻咽喉科で行われます。
検査の概要
- 目的:鼻の通り具合(鼻腔通気性)を客観的に測定し、鼻づまり(鼻閉)の程度や治療効果を評価する。
- 対象:鼻づまり、アレルギー性鼻炎、鼻中隔湾曲症、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の評価など。
測定結果の目安
鼻腔抵抗の値が低いほど鼻の通りが良く、高いほど鼻がつまっていることを示します。
- 正常:鼻腔通気抵抗値が 0.25 未満
- 軽度鼻閉:0.25 - 0.50
- 中程度鼻閉:0.50 - 0.75
- 高度鼻閉:0.75 以上
お子様の主観的な鼻づまり感覚と実際の空気の通り具合を定量化して比較できます。鼻づまりの実感はないのに数値が高い、鼻づまりの実感があるのに数値が低いと感覚と測定値が必ずしも一致しないお子様が結構いらっしゃいます。
10:3Dによる顔貌と口腔内撮影
※画像は治療前(10歳0カ月男児)〜経過観察中の変化(約7年9カ月後)
重要:舌骨の位置の確認
※舌骨の位置(低位)
舌骨(ぜっこつ)は、全身の骨の中で唯一「他の骨と関節を持たない」という極めて特殊な性質を持っています。頸部(のど)に浮いているような状態で存在し、呼吸や嚥下(飲み込み)、発声において中心的な役割を果たしています。
1. 舌骨の基礎知識
- 形状と位置:U字型をした小さな骨で、下顎骨の下、喉頭(のどぼとけ)のすぐ上に位置しています。
- 浮遊する骨:他の骨と直接繋がらず、多くの筋肉や靭帯(舌骨筋群)によって吊り下げられるように支えられています。これにより、上下・前後に柔軟に動くことが可能です。
- 役割:舌の土台となり、飲み込む際に喉頭を引き上げたり、気道を確保したりする機能を担っています。
2. 頸椎との位置関係
- 高さの指標:標準的な成人では、第3頸椎(C3)の高さ付近に位置しています。
- 相対的な位置:
- 上方:下顎骨のすぐ下にあり、顎二腹筋などを介して繋がっています。
- 後方:舌骨の真後ろには、第3頸椎の本体があります。
- 下方:舌骨の下には喉頭(甲状軟骨)があり、第4〜第5頸椎付近まで続いています。
3. 臨床的な重要性
舌骨の位置は、気道の広さに直結します。
- 低位舌骨(舌骨が低い位置にある):舌骨が本来のC3付近よりも低い位置(C4など)にある場合、気道が狭くなりやすく、睡眠時無呼吸症候群(SAS)のリスクが高まることが知られています。
- 姿勢との関係:頭が前方に突き出た姿勢(ストレートネックや猫背)になると、舌骨周辺の筋肉が引っ張られ、舌骨の位置が変化して呼吸効率が低下する可能性があります。
つまり、姿勢が悪いということは、舌骨を取り巻く筋肉の過緊張を生み、舌骨の位置を引き下げます。その結果は、「口呼吸」です。口呼吸は上顎に舌がつかない状態を生み、上下顎骨の劣成長に繋がります。その結果が、「歯並びが悪い」、そして「気道や鼻腔が狭くなる」です。
他にもこのようなデータを治療に役立てています
※姿勢の確認
※歯突起の形成確認
※頭骸骨の左右差確認
※鼻副鼻腔の確認
2025年学会発表実績
・European Conference on Dentistry and Oral Health パリ
1. クラスIの前方部叢生と喘息および慢性副鼻腔炎を有する患者に対するRAMPA療法の症例研究:CT画像評価
2. RAMPA療法によるアントレー・ビクスラー症候群およびダウン症候群患者の上気道容積の増加
・MENA Congress for Rare Diseases アブダビ
1. RAMPA療法を用いたダウン症候群患者の治療:頭蓋顎顔面成長誘導法
2. RAMPA療法を用いたアーノルド・キアリ奇形患者の治療:頭蓋顎顔面成長誘導法
・日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
1. RAMPA療法を受けたダウン症候群児の呼吸症状の改善
・DownSyndrome ダラス
1. RAMPA療法を用いたダウン症候群患者の非外科的治療:頭蓋顎顔面成長誘導法
2. RAMPA療法による希少疾患患者の呼吸器症状の改善
・CMBBE バルセロナ
1. RAMPA療法を用いたアーノルド・キアリ奇形患者の非外科的治療:頭蓋顎顔面成長誘導法
2. RAMPA療法によるアントレー・ビクスラー症候群の小児の呼吸器症状の改善
・日本鼻科学会
1. 非外科的RAMPA療法による患者の気道容積増加に関する統計分析
2. RAMPA療法による鼻閉患者の気道容積増加に関する統計分析
- RAMPA療法:コーベン分析と統計的評価による頭蓋顔面成長への影響
Yasushi Mitani, Yuko Okai-Kojima, Takahisa Shimazaki, Mohammad Moshfeghi, Morio Tonogi, Shouhei Ogisawa, Bumkyoo Choi and Mitsuru Motoyoshi:J. Clin. Med. 2026, 15(5), 1882 - RAMPA療法が鼻腔および副鼻腔の体積評価に及ぼす影響:副鼻腔の透過性が良好な患者と混濁した患者における比較統計分析
Yasushi Mitani, Yuko Okai-Kojima, Mohammad Moshfeghi, Morio Tonogi, Shouhei Ogisawa, and Bumkyoo Choi:Oral 2026, 6(1), 8 - RAMPA療法が鼻腔拡張と副鼻腔排液に及ぼす影響:流体力学解析、CAEシミュレーション、および症例研究
Mohammad Moshfeghi, Yasushi Mitani, Yuko Okai-Kojima and Bumkyoo Choi:Biomimetics 2026, 11, 5 - RAMPA療法:上顎骨の前上方牽引における縫合剛性の影響:有限要素解析(FEA)による検討
Mohammad Moshfeghi, Yasushi Mitani, Yuko Okai-Kojima, Bumkyoo Choi and Peiman Emamy:Oral 2025, 5, 74 - 症例報告:RAMPAと新規ハイブリッド口腔内装置を併用した顎口蓋複合体の整形外科的治療
Yasushi Mitani, Mohammad Moshfeghi, Noriyuki Kumamoto, Takahisa Shimazaki, Yuko Okai-Kojima, Morio Tonogi, Shouhei Ogisawa, Bumkyoo Choi
注意事項
- RAMPAセラピーでは骨格の構築後に歯列を調整しますが、当院では定期的に経過観察をしながら、お子様の成長に合わせて歯列調整を行なっていきます。そのため表記上の治療期間は長期となっている場合があります。
- 口腔外装置装着期間中は、成長途中のお子様で1日10~12時間以上、成長のほとんど終わった大人の方で1日15時間以上の装着が最低限必要です。
- 装置の調整が必要なため、2週間に1度の来院が難しい場合は、治療計画に遅延が生じたり、治療そのものが困難になる場合があります。
- 自費診療(保険適用外)となります。また、一般的な矯正治療より費用(税込165万~)がかかります。
- RAMPAの効果の最大値を引き出すためには、お子様とご家庭の意志と協力が重要です。矯正治療は、口腔内に物理的な力をくわえることで、その変化を導く治療と今一度ご確認ください。
- アデノイドの肥大等があるお子様では、一時的に睡眠時無呼吸やいびきの症状が出る場合があります。既往歴は必ずお伝えください。
- 装置装着時は、むし歯や歯周病のリスクが高くなったり、口臭が強くなったりする傾向があります。より丁寧な歯磨きや口腔ケアを心掛けてください。
- 装置装着時に痛みや違和感を感じることがあります。痛みがひどい場合には、クリニックへお越しください。
クリニックのご案内
Information
こどもと女性の歯科クリニックは、独自のプログラムで真に患者様のためになる診療を心掛けております。未来を見据えた診療方針にご理解をください。